32

部屋に戻ってお湯の出が悪いシャワーを一気に出した。
汚いから、リヴァイに嫌われたのだ。
短い呼吸を繰り返しながら熱いお湯を頭からかぶり、目の粗いタオルで肌が荒れるくらいまでゴシゴシと擦った。


(リヴァイ、リヴァイっ!)


「お別れの時間よ、ハイネ」


『!』


振り返れば身体が薄くなって透けている彼女が立っていた。


『待て、よ。お前が消えたらどうやってリヴァイに説明したらいい』


「私は貴方に痛みをあげることしかできない。ので、助けてあげられない」


それだけ言うと彼女は消えていった。
擦りすぎた皮膚からは血が流れ、それを熱湯が流していた。
短い呼吸は、さらに短く激しいものとなり酸欠で頭がくらくらした。
視界が真っ暗になって、倒れた。





目が覚めると服を着てベッドの上に寝ていた。
ガンガンする頭を押さえて水をゆっくりと摂取した。
長袖のシャツを捲ると何時もの日焼けしにくい肌はなく、真っ赤になった肌があった。

それを見て俺はホッとしたのだ。

綺麗だと綺麗になったのだと思ったのだ。

これでリヴァイにまた会えると、


そのとき、ガチャリとドアの開く音がしてハッとした。


『リヴァ…』


「あ、気付きましたか!」


『…エレ、ン?』


ドアを開けたのはエレン。
リヴァイじゃない。
来るわけがない。
何を期待したのだ。


「すみません、サシャが今日のハイネさんの様子がおかしかったと言うものだからいけない事とは分かっていたのですが入り、しかもシャワーの時間が長すぎると勝手に…そしたらハイネさんが倒れていて」


『いや、いいんだ、ありがとう』


エレンは俺の言葉にホッとした表情になり、氷の入ったコップを渡した。
砂糖と塩の入った水らしく、俺は脱水症状を起こしていたようだ。(さらに加えればあの短い呼吸は過呼吸だあろう)


「あの、ハイネさん」


『なに?』


「何時もリヴァイ兵長がいて言えなかったのですが…」


エレンは俺の左手をキュッと両手で優しく包み込んだ。


「俺じゃ、駄目…ですか」


不安げに、しかし迷いなく。
エレンは俺にそれを告げて抱き締めた。


「貴方の赤くなった皮膚はリヴァイ兵長絡みで何かしら合ったんだと思います。俺は年下だし新兵だし弱いけれど…ハイネさん、貴方の心の支えになりたい、欲を言えば貴方の居場所になりたいんです」


今の弱った俺の心には、エレンの言葉は酷く美しく優しく。


『やめてよ…今そんなこと言われたらなびいちゃうから』


「なびいて、下さい」


リヴァイとは違う、少し俺よりも小さな胸。
それは酷く優しいもので俺はそれに体重を預けた。

他人の温もり
まさかの三角関係イエエエエエガアアア!



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