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『傷付くところが見たいだなんて悪趣味だな』
「俺は感情が集結して出来たものだからな、お前の気持ちも良く分かる」
調査兵団は負の感情の塊だ。
壁外へ出掛けるということはそれだけ一般よりも死が近いと言うことで。
巨人が人間を(しかも自分の知り合いを)食べるところを見ているわけで。
"コイツ"はその負の感情が形をなしたものであることも頷ける。
『おい、嫉妬』
「それは俺のこと?、まあ構わないけど、何」
『俺にお前に集まった嫉妬の念を消すほどの苦しみをどうやって与えるんだ?』
クツクツ、嗚呼。
耳に障る笑い方だ。
嫉妬という感情は一番醜いと言われるのが分かる。
「お前はリヴァイが好きなのだろう?」
『…認めたくは無いがな』
「強がるな、言っただろうお前の気持ちも良く分かると」
それはプライバシーの侵害である。
まあ人間でないコイツに知られてもなんの意味もないが。
「リヴァイの前で女を抱け」
『!?、は、何言って』
「その表情、たまらないなあ」
もちろん女役は俺がやろう。
安心しなよ、女に姿は変えてやるからさ。
いいや、そんなこと問題ではない。
潔癖症のリヴァイの前で女を抱いたら俺は。
「汚いお前など触れてはくれないだろうな」
"嫉妬"はクツクツ笑いながら俺に近寄る。
はっと顔を上げると妖艶な女になっていた。
胸の膨らみもウエストも普通の男ならよだれを垂らして喜ぶような色気だ。
悪いが俺はリヴァイに惚れたホモだから興奮などしないが。
「もしかして、セックスは初めて?」
『ああ、生憎な』
「やだ、可愛いじゃない」
キモチワルイ。
触るな、リヴァイ以外が俺に触るな。
「あら文句ありげね、良いのよリヴァイを殺したって」
『人類最強を、たかが"嫉妬"がか?』
「生憎私は人類じゃないもの」
そうだったわ、忘れてた。
やべぇ、かなり絶望的だ。
結構傷付いてるんだけど、これじゃ駄目なわけ?
「最愛の人に嫌われるだなんて最高に最悪だと思わない?」
嗚呼、最低なくらい、そう思うよ。
でもよかった、俺でよかった。
リヴァイが好きでコイツの正体に気づいたのが俺でよかった。
もしも好きな奴(リヴァイ)が、コイツを抱いていたら俺はどうしようもなかった。
コイツを抱くのが俺でよかった。
どうしようもないよ、