01

巨人を倒すべく自ら壁の外へと向かう調査兵団は人類の翼である。
背中に大きく印されたそれは自由への翼。
何て人間は愚かなのだろうか。

―…人間に空を飛ぶ翼など有りはしないというのに。




ハイネは朝からイライラとしていた。

理由は簡単である。
昨日の晩から仕込んで置いた今日の夕飯の食材がごっそりと跡形もなく消えていたからだ。
ハイネは食堂で食事をしない。
正しくは自分で調理するから要らないのだ。
物資が少なくなりつつある壁の中で調理場から特別許可を貰って少しだけ食材と調理場を借りているというのに昨日貰った食材(しかも下ごしらえ済みだ)を誰が奪ったのだ。
先ずはサシャを疑ったが予想が外れており彼女にはアリバイがあった。
彼女の同期生が言うならば嘘はないだろう。
つまり、犯人は後1人に搾る事が出来たという事だ。


『こんの、チビぃいいいい!!』


訓練中だと言うのにハイネは一般より小さい彼―…リヴァイを見つけるや否や胸ぐらを掴んだ。


『テメェまた俺の材料捨てやがったな!?』


「散らかすなと何度も言 った筈だが?」


調査兵団のメンバーは頭を抱えた。
―…またか 。

リヴァイとハイネの犬猿の仲は調査兵団だけでなく町でも有名である。
人類最強の兵士、リヴァイ。
彼を毛嫌いするのはハイネ、天才と呼ばれるリヴァイと同い年で同期の男。
リヴァイと同じようにハイネも最強と言われていたがリヴァイの桁外れの強さにはかなわず、"最強になり損ねた天才"というレッテルを貼られてしまったのだ。
つまりこの犬猿の仲の原因はハイネの一方的なリヴァイへの嫉妬からだった。(八つ当たりと言ってもいい)


『ゴミと食材の見分けもつかねーのかチビ!』


「削がれたいのかお前は、―…何度言っても片付けを覚えねー野郎が」


『ハッ、細かいんだよ、だから身長伸びないんじゃね?』


あのリヴァイにこんな口を叩けるのはハイネだけである。


「何だかんだ、兵長とハイネって仲良いよな」
「まぁな…」
「ふふ、悪口言い合える仲なんてなかなか出来ないもんね」


調査兵団の団員が喧嘩する2人を見て笑った瞬間―…剣が3人の顔の横を通る。


「『仲良くねーよ』」


2人の剣だった。
3人だけでなく訓練場にいた 人間は皆思った。


(((気合いすぎだろ!!)))


「まぁ あれだな、同族嫌悪って奴だろ」
「同族嫌悪?」
「そ、2人とも色々似てるんだよ」


そう言って笑う団員の目線の先には未だに言い争う2人がいた。
似た者同士は良く喧嘩するとはこの事だろう。


彼らが名前で呼び合うのはまだ少し先の話し

彼らが恋をするのは更に先の話しである


似た者同士の同族嫌悪



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