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「体調はどうだ?」
『お陰様で、コーヒー飲むか?』
頼むよ、とエルヴィンは椅子に腰掛けたまま今度の壁外調査の作戦を練っていた。
エルヴィンの部屋は紙が多い。
おそらくは資料なのだろう。
エルヴィンのコーヒーに軽く砂糖を入れてやる。
頭が疲れたときには糖分が一番だろう。
「ハイネとリヴァイの立体機動装置が突然故障したように見えたのだが、心当たりはあるか?」
(やはり、この事で呼び出されたのか)
エルヴィンには知られたくないものがあった。
ただえさえ色々な事を考え込んで頭を痛めているエルヴィンにこれ以上頭を悩ませる種を作らせたくなかったのだ。
しかしもう、見られてしまった。
『俺とリヴァイを殺そうとしている馬鹿がいる、恐らく巨人の味方やら何やらではなく私怨によるものだ』
「ー、逆恨みか、嫉妬か」
『似たようなものだろうな』
巨人の味方やらならば立体機動装置に小細工をする必要性もない。
「分かったが、なぜ言わなかった」
『お前には作戦を考えることを集中して欲しかった』
「その結果が、これじゃないか」
コーヒーを置く手を掴まれた。
ビリッとした痛みに顔を歪ませれば溜息をつかれた。
「捨てる覚悟はある、だが下らない理由で死ぬな」
『分かってる、』
もしもあのまま死んでいたのならリヴァイに思いを伝えることもできないままだろう。
なんて、今伝える勇気も覚悟もないのに言ってしまったり。
ああ、俺は思ったよりも弱い人間なんだ。
でも、だけれども。
このままリヴァイとの関係を壊したくない。
思いを告げて関係が崩壊してしまうと思うと、とても恐ろしい。
変わってしまうのが怖い。
「おい、エルヴィン」
だから
「!、なんだハイネもいたのか」
俺は自分から求めて壊してしまうくらいなら自ら拒絶して崩壊を望む。
スッと入ってきたリヴァイから視線を逸らし部屋から出て行こうと横を過ぎようとすれば手首を捕まれた。
ビクリと反射的に肩が跳ねた。
「今日、お前の部屋に行くからな」
いやだ、
「鍵、開けておけ」
その一言が言えない。
やめてくれ、もう俺は自分の気持ちを理解してしまっているのだ。
もう以前と違うのだと言えない。
そして、俺は鍵をかけないまま。
好きな人を待った