26
「ハイネさん!」
夕食を持ってハイネの部屋に向かえば部屋の中からエレンの声が聞こえ足を止めた。
湯気が立ち上る味の薄そうな粥は着々と冷めていく。
「良かった…生きててくれて良かったです」
『泣くことないだろ?』
「泣きますよ!」
この部下が上司を敬うだけの会話に沸々と何かが沸き上がるのを感じた。
なんだ、これは。
『エレン、ほら泣くな』
「餓鬼扱いしないで下さ…っ」
押さえることはできなかった。
ドアを少々乱暴に開けばハイネに頭を撫でられているエレンが目に入った。
エレンは俺を確認するやいなやバッと立ち上がって気を付けの姿勢をとった。
『リヴァイ、』
「エレン、お前はそろそろ寝ろ」
「は、はい失礼しました!」
まだ18時過ぎだぜ?と苦笑するハイネの膝に粥をおいた。
すると眉間に皺が寄る。
コイツのことだ『俺が調理したほうが同じ材料でも遥かに美味いものができる』とでも言いたいのだろう。
ベッドの隣にある席に着いて足と腕を組み見ていれば猫舌は相変わらずでグルグルとスプーンで中をかき回していた。
『リヴァイ、あのさ』
「あ?」
グルグル、鍋の底とスプーンの音。
『助けてくれて、あり、がとな』
お前が俺に礼を言うだなんて。
無意識に腕を掴んでいた。
見開かれた瞳と目線があう。
自覚してしまった感情が湧き上がり手をパッと離す。
駄目だ、やばい。
(前までしていたことが意識しすぎて出来ねえ)
『リヴァイ…?』
なんだよ、その声は。
そんな目を向けるな。
期待させないでくれ。
お前をこれ以上好きにさせないでくれ。
この感情を隠しきれる自信がない。
(お前は俺をどう感じているのだろうか)
『不味い』
「黙って食え」
『なぁ、次の調査に俺は行ける?』
「ただえさえ、人不足だからな行かされるだろう」
そう、と。
ハイネは食べる手を止めた。
目をウロウロとさまよわせ口を何度か開いては閉じを繰り返し何かを言うことをためらっているようだ。
「ー、ハイネよ」
『なに、』
「俺の班に戻らないか」
『ー…』
ハイネは縋りつくような表情を一瞬するが、それを抑えるように唇を噛み締めて堪えているように見えた。
『やめてくれよ、そんな事言われたら、駄目になる』
「ハイネ…?」
『強いままの俺でいさせて、』
泣きそうな顔に手を伸ばすのは、したらいけないことだと自分を押さえて何も裏がないような話し方で「そうか」とただ単調に答えた。
甘えたくなるから
自分の気持ちを抑えるのが必死な2人