21

エレン視点


「あ、あのハイネさん昨日の調査どうでしたか?」


『え?ああ、特に問題はなかった』


今日も紫がかった艶やかな黒髪が綺麗だ。
憧れの調査兵団にいる憧れの存在はリヴァイ兵長とハイネさんとエルヴィン団長。
三人とも大人で強い。
子供の俺には分からない世界。


「あ、あのお食事ご一緒しても宜しいでしょうか?」


『構わないがミカサはいいのか?』


ハイネさんの視線の先には俺を睨んでいるミカサ。
過保護すぎる彼女から視線を逸らし頷いた。
すると隣の席を空けてくれる。
座った瞬間目に入ったのはハイネさんの両手首に貼られた絆創膏であった。


「あの…まだ治らないんですか?」


『別に、』


「あ、すみません…」


聞いてはいけないことだったのかと口を閉じる。
支給されたコッペハンを千切っているとコーヒーを置いたハイネさんがコチラを見た。
心臓がドキリとした。
綺麗な目に俺の顔が映っている。


『パンにはスープが欲しいものだが今日の朝食には付いていないな』


「た、確かに口がパサパサしますよね」


『久し振りに料理がしたいんだが味見役になってくれるか?』


その誘いは、ただ俺が傍にいたというだけな理由だろうがとてつもなく嬉しくて何度も首を上下に振った。
ハイネさんは近寄りがたいイメージがあった。
それはハイネさん以上に近寄りがたい存在であるリヴァイ兵長が必ず傍にいたからだ。
仲が悪いはずなのに傍にいる。
本当はどんな仲なのだろうか。
酷く気になる。


『今日の予定は?』


「あ、訓練と雑用…17時には解散です」


『ならちょうど良いな今日は確か俺も訓練でその後は何もない、 15時からキッチンにいるから雑用が終わり次第来てくれ』


くれぐれもサシャには伝えないようになと軽く冗談を言ってハイネさんはお先にと去っていった。


(やべー嬉しい)


口端がつり上がるのが押さえられずに手で口元を覆う。
今日は訓練も雑用も頑張れそうな気がする。





訓練と雑用を早めに終えて早めに解散となった。
すぐさま私服に着替えて食堂の隣にあるハイネさんがよく使っている小さなキッチンへと向かう。
何度かハイネさんの料理は食べたがあの両手首のケガをしてからと言うもの一度も口にしていないのだ。
いや、それよりも嬉しいのはハイネさんと二人きりでいれることー…。


『おいリヴァイ、キッチンに座るな』


「ここからならお前を見下ろせるな…」


開こうとしたドアから思わず手を離した。
少しだけ開かれているドアの隙間から覗けばキッチンに腰掛けるリヴァイ兵長とその隣で包丁を動かしているハイネさんの姿が見えた。
なんで、リヴァイ兵長が?


『リヴァイ、』


「ああ」


ヒョイとスプーンに救われたスープらしきものをリヴァイ兵長の口元へと運ぶとリヴァイ兵長は何のためらいもなく口を開く。
お互いに意識してやっているわけではなさそうだ。
つまりはお互いに無意識でも通じ合っているというわけで。


(あ、れ)


ツキリと胸に何か細い針のようなものが突き刺さった感覚がして思わず胸に手をやる。
何もない、なんだ?


「少し塩気が足りねーんじゃねーか」


『そうか?』


俺熱いの苦手だから味見できないしリヴァイの味覚を信じるかな、とか言っているハイネさんの胸倉をリヴァイ兵長は掴み引き寄せるとキスをした。
くちゅり、とキスのはずなのに違う音が聞こえる。
唇を離すと何故か二人の間に唾液。
街中でカップルや夫婦がキスをしているのは何度か目撃したことはあるがあんなものだったろうか?



「ほら、足りないだろう?」


『…そうだな』


あんなハイネさんの表情見たことがない。
動揺で見開かれた瞳にはリヴァイ兵長が映っているのだろうか。
そんなあの人の表情にリヴァイ兵長は気付いているのだろうか?
リヴァイ兵長がいなくなってから入れば味見だと渡された小皿に入っているスープは美味しかったけれど何故かチクチクと痛んだ。

小皿とスプーンの差は大きく感じてしまっているのは俺だけだろうか。

早く大人になりたい
エレンの感情は大人と強さに対する憧れの延長線
エレンは絶対鈍い(ミカサちゃん頑張れ!)




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