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『よし…』
立体起動装置に不備がない事を確認してから取り付ける。
今日は軽めの壁外調査に向かう。
先日、リヴァイ班だけで向かった壁外調査は俺たちの立体起動装置の故障で結局中止されたからだ。
「ハイネ分隊長!!」
『何だ』
ガチッと取り付けた時に俺の隊に配属されたヤツらがバタバタと近付いて来た。
お互いに不安なのだろう。
俺も今日が初めての分隊長としての壁外調査だから。
「い、いえ…体調は、大丈夫かと」
『心配しなくても巨人は俺が削いでやる』
近場の壁外調査とは言え俺のデビューと言ってもいいので今回はエルヴィンとリヴァイ、オルオとミケの隊が着いて来てくれる。
立体起動装置、体調に不備はない。
後は仲間―…
(俺は、仲間を信頼した事があるだろうか)
突然、そんな事を思う。
「ハイネ分隊長、その手首の包帯…怪我しておられるのでは!?」
『…―』
とことん心配しているらしい。(もちろん彼らが心配しているのは自分自身の事だ)
ぐるぐるに巻かれた包帯を指でなぞる。
既に数日前から手首の痕は消えていたのだが、外す気が起きなかったのだ。
(リヴァイ…)
グッと握り拳をつくり、馬に跨る。
『不備はないと言った、早く馬に乗れ』
「はい!!」
門の前に行くと既にリヴァイ班、エルヴィン、オルオ、ミケの隊は集まっていた。
リヴァイは俺をチラリと見るとガスリと俺を蹴った。
何だと睨み付ければ前を向いて、小さく。
「死ねよ、ハイネ」
『…お前がだろ』
門が開く、俺達は初めてバラバラに馬を走らせた。
遠く小さくなっていくリヴァイの背中を横目に見ながら走り出す。
先頭を走るという感覚を初めて、知った。
▽
「ハイネ分隊長!!」
「ハイネ分隊長指示を!!」
「8メートル級と12メートル級それに4メートル級が2体後ろから来ています!」
分かってるよ、そのくらい!
だから俺は分隊長なんか向かないんだ!
こんな建物も木もない場所で立体機動装置は使えない。
そのくらい周りを見たら理解できるだろうが。
なのに何故俺に選択を迫る?
なんだ、その目は、何なんだよ!
(…リヴァイ!!)
おまえはコレにずっと耐えてきたのか。
俺には無理だ。
俺の後ろで馬を走らせている隊員の命が俺の決断で生死が決まるだなんて耐えられない。
『森まで耐えろ!前を向いて森だけを見て走れ、森に入ったら直ぐ立体機動装置を使え!!』
「「「了解!!」」」
遠くに見える森を目指して走りつづける。
人数に惹かれて巨人が向かってくる。
大人数で群がっていたら生き残れない!
『ABCのチームに分かれて森を目指す!俺のチームは真っ正面を突っ切れ!Bは右からCは左から回り込め!!』
BCチームが俺の指示通りに走り出した。
単純な奴らは分かれたからといって他を追いかけずに俺達をそのまま追いかけてくる。
これでいい、これでいいのだ。
森に入った瞬間、立体機動装置を機動させて俺たちは宙を舞った。
俺が全て削いでやるよ。
分隊長として?