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俺とリヴァイの立体起動装置を壊した犯人も分からないままバラバラになるのは危険だと分かっていた。
けれど、エルヴィンの判断を信じたい。
俺を分隊長にしたのはきっと理由があると。
▽
「まぁ、そんな暗いことは今日置いといて飲もうじゃないか!!」
ハンジの言葉に『おう』と適当に相槌を打つ。
今日は数ヶ月に一度の調査兵団内限定の飲み会。
名目は新人歓迎会だがエルヴィンの提案で何時も気を張ったままでは身が持たないという理由からだった。
明日が休日の今日は思い切り羽目を外して呑むだけ呑むのだ。
あのリヴァイでさえ気分転換に出席するほどだ。
何時もならば俺も大好きな料理を振る舞いたいのだが。
チラリと手首を見れば未だに巻かれた包帯。
アイツは巨人ばかり相手しているから人間に対する手加減が出来ないのか。
酒をチビチビ飲んでいると長椅子がガタンと揺れる。
隣にリヴァイが座ってきたようだ。
『…』
「…」
何か喋るのでもなく無言のまま酒を飲んでいく。
ザワザワガヤガヤと周りは酔い始めた奴らでうるさかったが俺達の空間はまるで見えない壁で封鎖されてしまったかのように静かなものだ った。
調査をしに行くのはまだ先でリヴァイ班を正式に抜けるのもその頃になるだろう。
正しい判断がどれかなんて分からないのが人生だ。
下らないジャンケンでも3つしか選択肢がないのに出すまで勝ち負けが分からないのだから。
「…ハイネが、」
『…あ?』
「俺の班を抜けるなんて想像が出来ねぇ」
思いもよらないリヴァイの発言に最近多発している胸のモヤモヤが増した気がした。
何だよ、何だよ。
『酔ってんの?』
リヴァイは勢い良く酒を煽るとガンッと机に空になったコップを置いた。
少し驚いて肩が跳ねてしまった。
―…怒ったのか?
「馬鹿か、俺がいなきゃお前は駄目だろ」
『はぁ!?』
確かに今まで俺はリヴァイの指示がなきゃ動けなかったけど、そんな同い年の野郎に言う言葉としては失礼過ぎではないかと酒を煽る。
「―…駄目になるんだよ、」
リヴァイの何時もと違う声色に顔を向けるとリヴァイはジッと俺を見てから唇を小さく動かして立ち上がった。
『今、なんつったの?』
「?、何がだ」
本当に少し酔っているらしく自分が何かを呟いた事に気づいていないようだ。
ザワザワ、ザワザワ
相変わらず飲み会の会場である調査兵団の食堂はうるさい。
リヴァイはぐるりと見回してから俺の腕を引いた。
「来い」
そうやって無理やり立ち上がらせてリヴァイの部屋に向かう。
もちろん無料(ただ)酒を飲まないほど俺は馬鹿ではないから一升瓶を持って。
騒がしく酔っている人間も多い今では俺たち2人が抜けても気付く人間はいなかった。
…夜はまだ続きそうである。
駄目になるんだよ…俺が
なんて、ね