08

『離せよ』


俺より小さなリヴァイなのに力は俺より強い。
ギリギリと手首をベッドに押さえつけたまま俺を睨み付けて動かない。
何がそんなに不服なのか分からずリヴァイが死ねと言うから俺も死ねと言い返した。
リヴァイの事は昔から気に入らなかった。
理由は酷く単純で俺より強いから、つまり嫉妬や妬みの類いでリヴァイを嫌っていた。
羨ましかったのだ、強い彼が。
本当に酷く下らなく単純。

だから俺はリヴァイをチビと呼んだ。
嫌みのつもりだったがリヴァイは俺を出来損ないと呼んだ。
負けたと思ったが負けられないと諦め悪く長い間リヴァイをチビと呼び続けた。
―…しかし突然リヴァイは俺の名前を呼んだのだ。
酷く驚いた。
だけどこれをきっかけにお互い距離を縮められる気がして俺も彼の名前を呼んだ。
すると彼は酷く驚いた表情をするもんだから、俺からしたらお前から俺の名前を呼んだくせに、である。

さて話しを戻そう。
リヴァイは俺をベッドに縫い付けたまま見下ろし、動かないのは先ほど言ったが今現在もそのままだ。
何が不服なのか理解出来ない、恐らくリヴァイの表情からして リヴァイ自身も理解、もしくは思考が整理出来ていないのだろう。
男2人がスプリングの弱い軍から支給されたベッドにお互いを見つめ合ったまま動かないだなんて誰にも見られたくないし見たくもない光景だ。


「…痕」


『痕?』


リヴァイがやっと口を開いたかと思えば酷く低い声で一言。
痕とは何だと問えばリヴァイはゆっくり俺の手首から手を離した。
自然と安堵の溜息が漏れて無意識に自分の手首を見ればくっきりとリヴァイが掴んだ痕が出来ていた。


『…お前が残したんだろ』


「ああ、俺が残した」


リヴァイはそっと俺の手首の痕を指でなぞると満足した表情で部屋から出て行った。


『…リヴァイってあんなヤツだったか?』


分からない。
避けて来たものだからリヴァイの行動の意味なんて。
俺は目に入った壊されたままの立体機動装置を見てベッドから立ち上がった。
立体機動装置に設置されたままのガスボンベを引き抜く。
リヴァイの立体機動装置にあったガスボンベだ。
小さな穴が開いて使い物にならない。


(俺のガスボンベ返して貰わないと…)


いや、いいか。
俺はエルヴィンに新しいガスボンベを頼みに部屋を出た。
ガスボンベを返して貰うより立体機動装置ごと取り替えてもらう方が早いと思ったから。


君の思考回路が分からない



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