「あなたが望むなら、私はいつでも、どれだけでもSEXしてもいいと思ってるけど、でも、子供は嫌よ。」

そう言いながら、女は少し病んだような切れ長の視線を傍の男にやった。髪も衣類も淫らに散っているが、どうしてか美しいと、男は思った。
そして女に語りかける。

「お前が望むなら、俺はいつでも子供が欲しい。」

女の目に自身の目を合わせ、ふっと軽く紫煙を燻らせた。独特の香りをまとった煙は、傷塗れと言うには余りにも言葉がぬるいであろう女の四肢を撫ぜて消えた。
銃創、刺創、爆傷、裂創、その他。女性が背負うには余りにも多い傷痕だった。ただ、一貫して、顔は透き通るような白であった。

「馬鹿ね。こんな女と、あなたみたいな男の間に生まれた子が、少なくともフツウのヒトに育つわけがないの。」

半ば自嘲するかのように、はたまた自傷するように、女は口角を釣り上げた。
彼女の二つの眼球は男のそれとは合わない。

「こうやって、こんな関係を、どちらかが死ぬまで続けるの。子を成さず。どちらかが死んでね、“あぁ、やっぱり、子供をつくっておけばよかったなぁ”なんて後悔するの。きっとね。」

女は、はらはらと、男からは逸らされた瞳から涙を流した。ゆっくりとした動作で、しかしてしなやかに、男はその涙を指で拭った。女は己の涙を拭う指に、がぶり、と、尖った犬歯で噛み付いて、呟いた。

「それが、私たちの犯した罪の重さなのよ。」


* * * * *
殺し屋の女と、愛した男。




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