この気持ちは何というのだろう。
赤子を遺して死んだ夫婦は、その赤子を俺に託した。
夫婦に創られた俺はせめての恩に報いるために引き受けた。
小さな手で俺の顔を触ってくるその赤子の笑顔をなんと表現するのか、そのときの俺は知らなかった。
何年か経って、赤子は成長した。
俺には無い現象だ。
成長した赤子は、彼女は小さな動物を見て「可愛い」と言った。
あの日の彼女の笑顔は、「可愛い」と表現するのだと分かった。
夏になれば暑い。
冬になれば寒い。
怒られたら悲しい。
笑っているときは楽しい。
彼女は俺にたくさんの感情や感覚を説明してくれた。
そうしてまた何年か経ち、彼女は死んだ。
俺はロボットだ。
壊れない限り死なない。
彼女が居なくなって、途方も無い喪失感が俺を襲った。
動けない。
何も考えられない。
俺はこれからどうすれば。
わからない。
なんなのだろうかこれは。
彼女を失ってから続くこの気持ちは何というのだろう。
それに答えてくれる彼女は、もう、居ない。
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