ひんやりとした手は、とても硬い。
「寒いねぇ。」
「俺は寒さを感じない。」
「知ってる。でも私は寒いの。」
父さんと母さんが遺した高性能ロボットは、いつまでも私のお守り役を気取っている。
そのくせして自我が強くて、私を放ってどこかに行ってしまうこともある。
金属で出来ているから、私とは違う。
「エアコンでもつけるか。」
「いい。」
「でも、寒いんだろう。」
「いいったらいいの。」
変に温かくなったら、熱出して倒れるくせに。
夏場なんて、外に出られないくらい暑さに弱いくせに。
私の親でもないのに。
「……すまない。」
「なにが。」
「俺はお前とは違うから、暖めてやることも出来ない…・」
お前とは違うから。
そんなのわかってるわよ。
プログラミングされた存在と、人間なんだから。
「夏は、熱がこもってお前を冷やしてやることも出来ない。」
「ちょっと、どしたの。」
「俺は……お前の両親にお前を託されたのに…っ」
ロボットは泣く術を持たない。
悲しみを表現する手段を持たない。
愛を表現するだけのスペックを持たない。
どこまでも私とは相容れない、違う、存在なのだ。
それでも私は彼を抱きしめ、体温を奪われることを許す。
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