爪を黒く塗ってみた。

理由は無い。

しいて言うのであれば、




今日が「誕生日」だったからだ。




――
―――

――――



今日は僕が生まれた日だと、人は言うけど。僕は、僕が生まれた日を知らない。僕が生まれた日そのものを知らない。もしかしたら、プラスマイナス1日くらいの誤差のある日付を植え付けられて、それを「誕生日」と言わされているかも、しれない、気がする。そうしたら僕は、昨日の時点で既に19歳だし。逆に、明日ようやく19歳なのかも。単純に、今日19歳になる、ってのも捨てきれないけど。


仄かに甘い香りが階下から漂ってくる。きっと母さんがケーキをつくってるんだ。これはスポンジが焼けた香り。毎年のことだ。

その甘い香りが、僕はどうにも好きになれなくて。母さんは好きだし(マザコンではなくて、単純な家族愛で)、母さんのつくるケーキも美味しいから好きだ。だけど、スポンジの香りだけは、どうにも。



理由はわからない。



僕は黒が入った小さなボトルを手に取った。









* * * * * * *
今日がママンが誕生日なので。




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