はじめまして、こんにちは。
そして、さようなら。
我ながら普通の人生だったと思う。これといってピークのない、普通の、人生だった。成績、進学した高校も、大学も、就職先も、全部。それでもそれなりに恋はしたし、何かに悩んだこともある。親に対して反抗したことだってあるし、友達と夜通し遊んで寝不足になったこともある。今までそうやって生きてきたのだから、これからもそうなのだろうと思ってた。普通に生きて、普通に老いて、死ぬのだろうと思ってた。
だが意外とそうではなかった。
そうだ、僕の勘とか予想って、昔からよく外れた。テストの山をはれば全部外れ、大事なときに限ってじゃんけんでは負けたし、悩んだ末に傘を持たずに出かけたら大雨が降った。でも、全部笑って済ませることが出来た。
しかし、今回ばかりは無理だ。
もう秋にさしかかっているけれど、まだ暖かい。少し風がひんやりしてるけど、心地が良い。変わりやすいと言われてる秋の空も、今日は潔いくらいに真っ青だ。あ、でも鱗雲が見えるから明日は雨かな。でも、良い色だと思った。
僕の中から溢れ出ていく赤と、突き刺さった銀と、空の青で視界が埋まった。今まで普通としか言えないような人生を送っていたのは、きっとこの景色を見るためだ。この景色は、普通ではないのだから。
こういう状況になると走馬燈でも流れるのかとも思ってたけど、やっぱり僕の勘は外れた。案外何も考えられない。
ただ、分かったのは、世界で一番酷い人間は、推理小説家を名乗る人間だということだ。
探偵さん、俺を殺したのは作者です。
* * * * *
推理小説の作中で殺された人。
最近更新なくてすいません。
top