ある日、片翼を失った鴉が、木陰で泣いている小さな妖狐に話しかけた。


「ぬしは何故泣いておる。」
「ふぇ………っ、う…ぼく、すてられた、から、っ…」
「何故捨てられた。」
「ははうえが、っ、にんげんだから、…っ」
「ほぅ………?」

鴉は推測した。

父親が人間に化けて、人間の女を抱いたのだろう。生まれた子供が狐の耳と尾を持っていたために、疎まれたか、恐れられたのだろう。

母親は、生きてはいまい。



「からすさん、からすさん、ぼくをたすけて……」
「私を鴉だと分かっていながら請うのか、狐の子童め。半分とはいえど、貴様も妖怪だろう。」
「はんぶんは、にんげんだもん………」

泣きじゃくる狐に、鴉は言い放つ。

「なんならば、喰ってやろう。二度と苦しむことはなかろう?」
「………ほんと、…ほんとに………?」

嬉しそうに瞳を潤ませて、狐は鴉を見上げた。

過去、九尾の狐に自分の片翼を喰らわれた腹いせも込められた提案であることは、鴉は言わなかった。言えなかった。

「ああ、悪くはない話ではないか?」
「うん、からすさん、ぼくをたべてよ………きっと、おいしいよ…………」

何故?

「はんぶんは、にんげん、だから、だよ」






いただきます。








「ふん…………、あの九尾の子だったか…不味くはなかったが、美味くはなかったな……」

同じ、味がした。








* * * * * *
こんな話にしたかったんじゃないのに!




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