桜の木の下には死体が埋まってるんですって。聞き飽きたようなフレーズですけどね、それは素敵なことだと思うんです。ただ火葬されて、骨と灰だけになって誰にも会えなくなるなら、桜の栄養となってその下で宴会をしてもらえた方がきっと幸せです。

「だから、私が死んだら先生の家の桜の木の下に埋めてくださいね。」
「断る。」

彼女はむくれる。しかし、その要望は叶えられるはずがない。俺らが生きるのは恵みを忘れた世界だから。動物は息絶えて、植物は枯れ、太陽は弱々しく燃えるだけの存在。何も生産性のない世界。桜どころか、葉っぱの一つも見られない。 桜の木ならば、辛うじて遺っているかもしれないが花が咲くとは到底思えない。

「なんでですかー?私の栄養吸い取って花咲くかもしれませんよー?」
「咲かないね、賭けてもいい。」
「ちぇー。」

そう言ったっきり、彼女は寝てしまった。俺は知っている。彼女はもう長くない。日に日に弱っていく。彼女が弱るにつれて、俺の家の桜の木が活き活きとしてきていること。もしかしたら彼女が死んだそのとき、桜の花が咲くかもしれないと、不吉な奇跡を予感していた。そうなったら、彼女を埋めるまでもないよなあ、って。

不謹慎だ。

でも、でも、もしも桜が咲いたら君の棺にいっぱいに敷き詰めてあげるよ、なんて。



花層に沈んだ君を火葬





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モデルはある。しかし言わない。




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