「ここから飛び降りたら、お前の心臓になれるかな、俺。」

随分前から知ってたことだ、こいつが訳のわからない馬鹿だってことは。どうしようもない幼稚な奴だってことは。

俺は校舎の屋上から、真下の桜並木を眺めて言う。

「ここから飛び降りたら、アレの栄養になって終いだろ。」

アレ、は勿論、桜。

「やだなぁ……いつからお前ロマンチストになったの。」

奴は笑う。

桜よりも俺、この俺の栄養になりたいだとか言いながら。

「あほか。お前がここから飛び降りたら、警察と救急車が来て、明後日には何も無かったことになってるさ。」
「明日は?」
「黄色いテープと野次馬とメディアでごった返す。」

全然ロマンチストじゃないね、と奴はまた笑った。

「、で、さ、俺はお前の心臓になれるかな、な。」

知るかよ。
知りたくもねーよ、糞が。

お前が俺の心臓になったら、瞬時に活動止めやがるだろーがよ。

「えー、なんでわかったの。あ、エスパー?」

そんなきらきらした目すんな、気色悪い。

「もしかして、愛!?」

とりあえず目を合わさないでおこう。馬鹿とお喋りは放置に限る。

「そっかー、俺もお前が好きだから、俺が死んだらきっとお前の心臓に輪廻転生出来るよね!」

奴は満面の笑みで視界から消えた。

真下を見たら、桜のような鮮やかな肢体、醜い死体。



心臓は、止まらなかった。



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BLではない。
某ブログからの移転。




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