「ここから飛び降りたら、お前の心臓になれるかな、俺。」
随分前から知ってたことだ、こいつが訳のわからない馬鹿だってことは。どうしようもない幼稚な奴だってことは。
俺は校舎の屋上から、真下の桜並木を眺めて言う。
「ここから飛び降りたら、アレの栄養になって終いだろ。」
アレ、は勿論、桜。
「やだなぁ……いつからお前ロマンチストになったの。」
奴は笑う。
桜よりも俺、この俺の栄養になりたいだとか言いながら。
「あほか。お前がここから飛び降りたら、警察と救急車が来て、明後日には何も無かったことになってるさ。」
「明日は?」
「黄色いテープと野次馬とメディアでごった返す。」
全然ロマンチストじゃないね、と奴はまた笑った。
「、で、さ、俺はお前の心臓になれるかな、な。」
知るかよ。
知りたくもねーよ、糞が。
お前が俺の心臓になったら、瞬時に活動止めやがるだろーがよ。
「えー、なんでわかったの。あ、エスパー?」
そんなきらきらした目すんな、気色悪い。
「もしかして、愛!?」
とりあえず目を合わさないでおこう。馬鹿とお喋りは放置に限る。
「そっかー、俺もお前が好きだから、俺が死んだらきっとお前の心臓に輪廻転生出来るよね!」
奴は満面の笑みで視界から消えた。
真下を見たら、桜のような鮮やかな肢体、醜い死体。
心臓は、止まらなかった。
* * * * * *
BLではない。
某ブログからの移転。
top