なんだか優しい空気
※卒業前入試後※
今日は両親が旅行でいない。柚は午前中から征十郎らと出かけている。夕飯もいらないと言われたから今日はもうインスタントで良いかな。
そう思いながらソファに転がっていると携帯が光った。知らせてきたのは黄瀬からの電話で、私は携帯を耳に当てる。
『もしもし?』
≪あ、高塚さん!≫
聞こえてきたのは元気ないつのも黄瀬の声。それと、後ろからはなんだか騒ぎ声。
『どうした?何か用?』
≪高塚さん、今から赤司っちの家来て欲しいッス!≫
『はい?』
何かと思えば突然征十郎の家に来いと言われた。そういえば柚は今日バスケ部の皆、とも言ってた気がする。それはつまり黄瀬も居る訳で。
黄瀬が居る、けど柚と征十郎も居る。
私の中で迷いが生じているときに黄瀬から留めの一言を貰った。
≪俺、高塚さんに来て欲しい≫
『…わかった』
結局折れてしまうのは黄瀬が好きだからなんだろう。私甘すぎるだろ…。
そんなことを考えながら適当に服を着替え、私はお隣の征十郎の家へ向かった。
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「高塚さん!さ、中入ってください!」
『いいの…?』
「大丈夫ッスよ!もう了承貰ってるんで!」
そう言われ、何度も敷居を跨いだことのある征十郎の家に入る。奥に進むにつれなんだか色んなものを焼いている香ばしい匂いがしてきた。
黄瀬がドアを開いた瞬間、一番に気付いた柚が私に手を振ってきた。
「由紀ー!!」
「高塚さんだぁ!」
それに続くように桃井さんも私に向かって手を振ってくる。良く見ると他のメンバーが焼いていたそれ―…つまり、焼肉を食していた。
『…何この状況』
「いや、皆で焼肉しよう!ってなったら柚っちが、高塚さんはどうせちゃんとご飯食べないだろうから呼ぼうって!」
『…あ、そう』
柚をジト目で見ると少し目を逸らして冷や汗をかいた柚が笑っていた。私が少し溜め息を吐くと、黄瀬が私の手を握って笑顔を浮かべた。
「あと、俺も来てほしかったから!」
『……うん』
そう言われたらもう何も言えなくなる。私は大人しく黄瀬の隣に座った。目の前に居るのは、征十郎。
「まさか大人しく来るとはね」
『うっさい』
「まぁ、今日はゆっくりしなよ」
『…ありがと』
良く見ると皆楽しそうだ。やっぱりずっと部活を共にしてきた仲間と過ごすのは楽しいことなんだろう。こんなところに私が居ていいのだろうか。
そんなことを考えていたら目の前に肉と野菜が乗った皿が突き出される。それに目を見開くと、眼鏡を指であげていた緑間が口を開いた。
「早くしないと青峰に全て食べられるぞ」
『え、あ、うん…』
「人聞き悪ぃーな緑間。食わねー奴が悪い」
「峰ちん食べすぎー」
「ムっ君はお菓子食べすぎ!」
なんだか思っていたよりも柔らかい雰囲気の彼らに、思わず笑みが零れてしまう。そんな私を見た黄瀬が、いつも以上の笑っていた。
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雑音の創菜様から70萬打企画でいただいた番外編小説です!
BOOKMARKにリンクしておりますので、気になる方は失礼のないように行ってみてください!
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