process



高尾夫婦ifです。
バスケ一切してません。





















今日の夕御飯は特製ハンバーグに決めた。
特製…といっても某レシピサイトで見つけた簡単ハンバーグだが。

午前中、掃除洗濯をしてからせっせと書き写し続けているレシピノートもそろそろ3冊目が終わりそうだ。


お昼頃スーパーで買っておいた材料を取り出して、ハンバーグを作り始める。
真剣に作っていたせいか、全く気づかなかった。

「由紀!」

彼、高尾和成の足音に。


「――っ!?」


うしろからぐるりと腕を回されて頭に顎を乗せられたこの状態は、昔こそどきどきが止まらない状態だっただろうが、今はただ邪魔なだけだ。


「かず、重い」

「ひっでー!愛しの和成さんが仕事から帰ってきたのにその言い種かよ!」


彼のいまの顔は見なくてもわかる。
確実にニヤニヤしているだろう。

確認しておくが、決してどきどきなんてしていない。
じゃ、邪魔なだけなのだから!
私の顔が赤いのだってきっと気のせいだ。


「由紀は昔からこの態勢苦手だったよなー」

「…私の背後をとるな」

「だからどこのゴルゴだよ」


この会話も何回繰り返したか今ではわからない。

彼、高尾和成とは5年前から付き合っていた。
きっかけは秀徳高校バスケ部だ。
私がマネージャー、彼がバスケ部キャプテンとなった高3の春、彼が私に告白してくれた。
実は高校にはいってすぐ彼に一目惚れしていたので、答えはもちろんyesだった。

それから彼は美容師の専門大学に、私は小さい会社に就職した。
離れ離れになってしまったが、それでも私たちの関係は崩れなかった。

そして、彼が就職すると同時に籍を入れた。
事前に両親たちには報告していたので籍を入れることはとても呆気なかった。

「今日から、高尾由紀…だな」

いつも笑顔でからかってくる彼からは想像できないぐらい照れている彼をみて、本当に籍を入れたんだなとようやく理解できたことはよく覚えている。






「なあ由紀、いつ結婚式あげようか」

「え?」


頭にのしかかったままのかずがふと思い出したかのようにそう言った。
突然の出来事で理解などできるはずがない。

第一、かずの強い希望で私が専業主婦になったこともあってか、経済的に余裕がないからと結婚式を挙げることは諦めていたのに。


「急にどうしたの?」

「急…じゃねーよ。前から挙げるつもりだった」

「いやいや、だってお金は…」

「それなら問題ねーって。こっそり貯めといたから」


“お前を驚かせたくてな”といたずらが成功したかのような笑みを浮かべる彼に、私は驚きと呆れが同時にきた。


「ばーか」

「はぁ!?そりゃねーよ!」


頭にのしかかったままの彼の脇腹に肘で軽く撃ち、緩んだ隙に洗濯物の乾き具合を見に行く。
私の驚く顔を期待していたのか、かずはいじけながらソファーのクッションを抱き抱えてTVをつけた。


「うそだよ、かなり驚いた。ありがとう」


そのかずの行動が可愛くて、彼の頭を撫でながらそう言うと、彼は一瞬驚いた顔をしてから私の大好きな笑顔をみせた。




















翌日。

私がスーパーで今夜のおかずはどうしようか悩みながら食材をカートに入れていると、突然後ろから声がした。


「高塚さん」

「え?………ぅわ!?」


名前を呼ばれたのに振り向いても誰もいない。
なんだったのだろうと前をみると、そこには黒子くんがいた。


「黒子くん!?」

「おひさしぶりです」


彼とは違う学校だったが部活の関係と、高校時代ライバルなんだとかずから散々聞かされていたので友達関係になっていた。


「あ、すみません。今は高尾さんでしたね」

「っ…」


高尾由紀になった自覚はある。
だが、元から私のことを名字で呼ぶ人があまりいなかったためか人から呼ばれるとくすぐったくて仕方ない。


「高塚で大丈夫だよ」

「そうですか?」

「う、うん…」

「では高塚さん」


高尾くん、昨日うまくいきました?

黒子くんからのその問いの意味がよくわからなかった。
昨日あったことといえば…


「え、え!?」


昨日あったことといえば結婚式を挙げるという話だ。
でもなぜそれを黒子くんが知っているのかがわからない。


「その様子だとうまくいったみたいですね」


私の顔が赤くなっているのか、黒子くんは満足したかのように少し笑った。


「な、なんで知ってるの?」


そう言うと黒子くんはキョトンとした顔をした。
逆になぜ僕が知っていることを知らないのか…そう聞きたそうな顔のあと、なにかを納得したかのように「なんでもありません」と言った。

絶対なにか隠してる、絶対。

こうなったら聞きたくなるのは当たり前で、私はカートを避けて黒子くんとの距離を縮めた。


「なにか知ってるなら教えて!」

「………」


黒子くんは言ってもいいのか悩んでいるのだろう、少し困った笑みを浮かべてから「わかりました」と言った。

それからここではなんだから、ということで買い物を終わらせてから我が家で話すことにした。











「で?なにを隠しているの?」

「刑事ドラマみたいですね」

「そういうことはいいの!」


家についてから私は買ったものを冷蔵庫にしまい、コーヒーを2ついれた。
ソファーに座って礼儀正しくコーヒーを受けとる黒子くんはきっと育ちがいいのだろう。
なんとなくそう思いながら私は自分のコーヒーに口をつけた。


「高尾くんが怒るんじゃないですか?」

「大丈夫だって」


先程から幾度となく聞かれるこの質問。
相手が知らない男ならまだしも、相手は黒子くんだ。
怒る理由が見当たらない。


「で、なにを隠してるのかな?」

「……わかりました。お話しします」


黒子くんが言うに、昨日朝から仕事だと言っていたのは嘘で、結婚式の話を黒子くんや緑間くんたちに相談していたらしい。

それから、資金のことも相談していたそうだ。


「あまり言うと高尾くんが可哀想なので言いませんが、僕が知っているのはこのぐらいです」


なぜ気づかなかったのか。
結婚式とは本来、とてもお金がかかるものだ。
こんな短期間でわたしに気づかれないように貯めるなど不可能に近いのではないか。


そう考えていると、玄関の扉が開く音がした。


「たっだいま…って黒子!?」

「こんにちは、高尾くん」

「……おいおい、まさか」

「ばれてしまいました」


さすが空気を読む男高尾和成とでも言うべきか、この状況を瞬時に理解したようだ。


「かず、無理して結婚式しなくてもよかったのに…」

「………」


彼は口を尖らせて黒子くんの隣に座ってから、小さく話し出した。


「……だってよ、由紀のドレス姿…はやく、見たかったら…」

「っ…!」

「俺の我が儘で会社辞めさせちまったのに、金のせいで結婚式あげられないとか…嫌じゃんか」


かずの顔は真っ赤で、きっと私の顔も真っ赤で。

この雰囲気にかずは耐えきれなくなったのか、平然とコーヒーを飲む黒子くんの頭をグーでぐりぐりとしだした。


「このやろォ…!」

「…痛いです、高尾くん」


この際だから全て白状してもらおう。
そう思い立ち、私はかずの隣に座り直した。


「ねぇかず、お金どうしたの?」

どこからか借りてきたことは既に明白だが、私は彼の口から聞きたい。


「…赤司から借りた」

「赤司くん!?」


赤司くんは今、若くして家を嫁いで立派な社長をやっていると聞いたことがあるが、まさかかずと赤司くんの間にお金を貸し借りできるような交友があったとは…。
かずの相変わらずなコミュ力にもはや驚きすらでない。


「真ちゃんが少し協力してくれたんだよ。借りたっつっても足りない分少しだけで、本当に結婚式の費用は貯めてたんだぜ?」

「そうなん…だ」

「……由紀にお金の事情とか心配させたくなかったんだけど、ごめん。嘘ついたことになるよな」


苦笑いを浮かべるかずの頭を軽く叩くと、私はひとつため息をついてからかずの手を握った。


「そういうことは考えないでよ。…ふ、夫婦なんだか、ら…」

「由紀……」


お互いの目が合う。
その真っ赤な顔が少しずつ近づく。
そして触れ合うかとまで来たとき。


「……すみません、僕お邪魔なら帰りますが」

「「!!」」


完全に黒子くんがいたことを忘れていて、私は思わずかずを突き飛ばしてしまった。


「いってぇ…!!なにすんだよ由紀!!」

「ごごごごごめん黒子くん!!」








赤司くんから借りたお金は絶対に返す。

今は協力してくれた彼らと、私を大切にしてくれているかずへの感謝の気持ちを込めてお礼をしなければ。





これから結婚式まで忙しくなりそうです。





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悠咲様、遅れてしまいすみませんでした…!!

勝手に高尾くんの進路などなど妄想してしまいました…
秀徳好きすぎて辛い気持ち、わかりますっ!!!←

こんなものでよろしければもらっていただければ幸いです。
素敵なお題ありがとうございましたっ!!


(20130506)


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