サプライズプレゼント
彼、水戸部凛之介の1日は兄弟たちの食事作りから始まる。
妹と共に食事を作り、朝練がある為1人急いで食べてから家を出る。
…このタイミングがとても大切だ。
真面目な彼は早く出かけて行く。
その姿を自室の窓から遠目で確認してから、私は彼の家のインターホンを押した。
「私、由紀だよ!」
『由紀さん!』
インターホンから聞こえる声は水戸部家長女で、凛くんに似て真面目な子。
今ドアを開けると言った彼女にここで良いと止めてから話を再開する。
「準備、できてる?」
『後はケーキと飾り付けだけです!』
「じゃあ予定通り私が凛くんを連れ回して時間稼ぐから、その間に頑張ってね」
そう伝えてから私はゆっくり学校へと歩き出した。
今日は幼なじみの凛くんの誕生日なのだ。
まわりのことばっかり気にする優しい彼は、私たちの誕生日はしっかり祝ってくれるのに自分の誕生日は忘れているかのごとく何もしようとしない。
…というか多分忘れてる。
だから日頃の感謝を込めて、今日はバスケ部の日向くん達も呼んで盛大に祝う予定だ。
彼らには既にメールで内密に知らせてある。
私の役目は部活終了後、日向くん達が凛くんの家に着いて準備が終わるまで彼を帰らせないことだった。
そして難なく過ぎていくいつも通りのつまらない授業の後、部活の時間になった。
帰宅部な私は時々見学ついでにドリンク等のお手伝いに行く。
リコちゃんにはよくマネージャーになって欲しいと言われるが、バイトの関係上あまり来られないことは目に見えていたので断っていた。
ストレッチも終わり、本格的に練習が始まる。
いつも一緒にいると癒されるようなオーラを放つ無口な彼とは思えないぐらい、バスケとなると真剣になる。
私はそんな彼の一生懸命な顔を見るのが好きだった。
部活が終わる頃には皆汗だくだくで、私は1人1人にドリンクを手渡しながら“お疲れ様”と声をかけた。
ベンチに座っていた凛くんにドリンクを渡すと、彼はいつもの誰もを受け入れてくれそうな笑顔を浮かべた。
長年一緒にいる私は、小金井くんと同じく彼の感情を読み取ることができる。
“ありがとう”と言っている彼に微笑みで返した後、私は隣に座った。
「ねぇ凛くん。今日ちょっと買い物に付き合ってくれない?」
優しい彼はすぐに頷くが、何かが引っ掛かっているような曖昧な顔だった。
「大丈夫、今日凛くんの変わりにうちのお母さんが夕飯作りに行ってるからさ」
すると彼は少し驚いた顔をしてから、改めて頷いた。
今度はなんの躊躇いもない笑顔で、やっぱり兄弟の夕飯が心配だったんだとどこまでも兄弟想いな彼に微笑んだ。
スーパーに着いた時、お母さんからメールが来た。
その内容はスーパーから家まで少し距離がある私に頼む内容ではなく、ため息をついて携帯を閉じようとすると、また新しくメールが来た。
それは小金井くんから準備完了と言うものだった。
私はメールで母に頼まれた箱入りミカンを気合いで持ち上げようと腕捲りをしたところで、隣から手が伸びてその箱をヒョイと軽々しく持ち上げた。
隣はもちろん凛くんで、部活帰りで疲れているハズなのに“これ1つでいいの?”と言うかのように首を傾げていた。
「ちょ、疲れてるでしょ!私持てるから大丈夫!」
私はそう言って彼から取り上げようとするも、かなり背の高い彼が私に取られないように高くあげてしまった。
大丈夫とでも言うような彼の笑顔に私は申し訳ないながらもお願いして、会計を済ませた。
「ごめんね、凛くん」
そう言うと彼は笑顔で首を横に振った。
昔から本当に凛くんは優しく、人を考えて動いてくれる。
そんな彼の幼なじみであることを誇らしく感じながら、私の家に着いた。
ミカンを玄関まで置いてくれた凛くんに私は“お母さんが凛くん家にまだいるみたいだから迎えに行く”と行って隣の彼の家に一緒に行った。
「凛くん、今日はありがとう」
ドアを開ける直前、私は彼に笑顔で言った。
それに笑顔で返してくれた彼を見てからインターホンを押して帰ってきたと合図をする。
中からドタドタと走ってくる音がして、凛くんは不思議そうな顔をする。
凛くんが最初に入るように配慮しつつ勢いよくドアを開けると、中からクラッカーの音がした。
目を見開いて驚いている彼に満足しながら、私は彼の背中を押した。
さぁ、誕生日会の始まりだ。
サプライズプレゼント
(誕生日おめでとう!!)
(彼は照笑いを浮かべながらペコリと頭を下げて感謝した)
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水戸部先輩が好きすぎて…!
ナンジャタウンの時ももちろん水戸部先輩の缶バッチをゲットしてテンション上がってました(笑)
誕生日おめでとう!!
(20121203)
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