Thank You For Love






「…高尾?誰ソレ」

「ええ!?知らないの!?隣のクラスの高尾くんだよ!!1年なのにバスケ部のレギュラーで誰とでも仲良くてバク転できてカードゲームが好きでかっこいい!!」

「………知らん」

知らん。知らんよ、私は。
心の中でそう言い聞かす。

知らない筈がない。
なんだって彼は私のお隣さん兼彼氏さんなのだから。

いかんせん彼はよくモテる。
彼自身は無自覚なのだろうが、あの笑顔でなんでもそつなくこなす姿を見てときめかない女子なんているのだろうかという程にかっこいい。

事実私もあの笑顔にヤられたのだから。


まだ中学の頃、片想いかと思っていたこの恋が実った。
彼が告白してくれた時は本当に泣くかと思った。

それから学校でもずっと一緒にいたのだが、彼を好きな女子たちの嫉妬と彼の成績が下がるという結果がついてきた。

ぶっちゃけ嫉妬の件はどうでもよかったのだが、彼が勉強そっちのけになってしまったのはいただけなかった。

バスケ推薦で中学からは遠くて誰も行かない秀徳高校に行くことは決定していたから良かったのだが、高校に入ったらそのようなことがないように他人のフリをしようとムリヤリ話付けた。

ちなみに私も離れたくはなかった為、秀徳に行けるように必死に勉強して今に至る。



「で?その高尾がどうかした?」

「今日誕生日なんだって!!朝から彼の机に誕生日プレゼントがたくさんだよ!出遅れたぁ!!」


流石和成だな。
今日はきっと家でプレゼントの自慢が始まるな。

そう考えて苦笑いを浮かべると、目の前の彼女が不思議そうに見てきたので内心慌てて顔を戻した。

「なんかあげるの?」

「うん!!高尾くんに似合いそうなミサンガ買った!!」

「へー」

「でさ、着いてきてよ!」

「………はい!?」

絶対にだめだ。
会うと話したくなってしまうから学校では会わないように試行錯誤を繰り返しているというのに、その苦労が水の泡になる。
約半年どれだけ頑張ったと思ってるんだ。

そう考えて首を横に振るが、遅かったらしく腕を掴まれて走っていた。
恋する乙女の力は強く、戻りたいのに全く戻れない。

そのまま和成のクラスまで来てしまった。
彼の机らしき場所には確かにたくさんのプレゼントがある。

「高尾ー、隣のクラスからお客さん」

「おー」

誰かが無駄な気を利かせて和成を呼びやがった。
彼がこちらにきて驚いた顔をする。
私だって想定外でびっくりしてるのよ!とも言えずに視線を反らす。

「高尾くん今日誕生日なんでしょ?これ誕プレ!」

「お?あぁ、さんきゅー!!」

あぁ、心がモヤモヤする。
他の女子に笑顔を振り撒く彼を見たくなかった。
私の中で醜い嫉妬心が渦を巻き、彼女に早く戻ろうと急かすが、彼女のテンションは最高潮だ。

「由紀はあげるものないんだから、おめでとうぐらい言いなさいよ!」

「へ?」

「ほーらっ!」

そう言って私の背中を押し、和成の前まで出される。
話したい気持ちと他人のフリをしなきゃという気持ちと抱きついてしまいたい気持ちが一辺に押し寄せて頭が真っ白になっていく。

「どーしたの、高塚さん?」

彼はニヤニヤしながら私を見てくる。
いつもの名前呼びではない彼の対応になぜか傷付きながら彼を見上げた。

「〜〜〜〜〜っ、」

突然和成が口元を抑えたかと思うと、彼は抱きついてきた。
思考が停止する私とクラス。
静まりかえったクラスで彼の声が響く。

「いやー、わり。もう耐えらんねーわ」

「…ッッ!?」

全員が見ている中でキスしてきた彼に私は驚いてふらついた。
その光景を見ていた人たちが一斉に詰め寄って話を聞こうとする。

そうして私の平穏な日々は終わりを告げるのだった。







「で?説明してもらおうか?」

あれから私は後ろで固まっていた彼女と和成の腕を掴んで屋上まで逃げ込んだ。

「じ…実は和成と私はお隣さんで」

「付き合ってるっつー話」

「ちょっ…和成!」

彼は本当にモテていると自覚していないから困る。
今の一言で何人の女の子を振ったことか。

「…ふーん?まぁ高尾くんの話をした時、なーんか由紀の態度が怪しいと思ってたけど、そういうことね」

「ご…ごめん」

彼女は和成のことを好きな女の子の中の1人だ。
傷ついた…かな。

「じゃあ次は1組の佐藤くんにしようかなー…」

「え?」

前言撤回。
この女、かっこよければ誰でもいいらしい。

「まぁいいや。じゃあ私教室に戻るから。あとはごゆっくりー!」

私たちが呆然としている間に彼女の話は進み、いつの間にか去っていった。

「変な奴だなー」

「…そだね」

「で?」

「え?」

突然手を差し出してくる和成に戸惑う。

「由紀は俺に誕プレくれねーの?」

「ッ…た、誕プレは家に、置いてきた」

学校では他人を装っていたのだ、学校に持ってきても意味はないだろうと考えていたのだが、これは想定外だ。

「えー、今くれないなら勝手に貰うぜ?」

「は?何を…」

うつ向いていた顔をあげて和成を見ると、そこにはいつもの笑みはなく、真面目な顔をしていた。
その顔に見惚れていると、少しずつ近づいてきた。
ドキドキしている心臓を抑えたくても抑えきれない。
思わずギュッと目を瞑ると首元にチクリとした痛みが走った。

そっと目を開けるとしたり顔な彼がいて、私はあわてて首元を手鏡で見た。


「なっ…!?」

そこには見えるか見えないかギリギリのところに付いたキスマーク。

私の顔は急激に赤くなった。

「バカ!!体育の時とかどうするのよ!!丸見えになる!!」

「俺のだって見せつけてやれて丁度いいだろ?」

「良くない!!」


全くこのモテ男はなにを考えているのか。
でも好きなのだから仕方ない。

私は苦笑いを浮かべた後、“誕プレは家に帰ってからね”と言って彼の髪にキスをした。
その途端ハグをされてなかなか放してくれなかったのだが、好きになってしまった弱味なのか拒む気にはなれなかった。




Thank You For Love




(で、でも大勢の前でキスをするのはアウトだったよ!!)
(いやぁ…由紀の上目遣い見たら耐えられなくなって)
(ば、馬鹿…!!)




……………………………


くそぉ!大学のせいで昨日中にアップできなかった…orz
ともあれ高尾くん誕生日おめでとう!!!



(20121122)



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