ハッピーバーズデー青峰くん!





「だりーな…」

「だりーね…」

8月31日の朝8時。
夏休みも今日で終わりかというのに、バスケ部エースの青峰大輝とマネージャーの私は中学校で数少ないクーラーがついてる教室のひとつ、応接室で宿題を片付けていた。

先生に怒られるの覚悟で宿題は全部シカトしようと大輝と夏休みの始めに決めたのだが、先生より怖い人に“どうせやってないんだろう”と昨日ひと睨みされ、今に至る。

怖い人ってのは多分名前を言わずともわかるだろうが、今目の前で優雅に座って本を読んでいる赤司征十郎のこと。
彼が先生から許可を得て応接室を借りてきた。
生徒は使用禁止だというのに…相変わらず彼は色々とすごい。

彼は無駄口をたたいていた私たちを見て、天から授かったそのムダな程までに綺麗な顔でにっこりと微笑んだ。

「頭が働かないなら走ってくるか?いつもの5倍ぐらい動けば嫌でも動くだろう?」

「…遠慮します」

この暑い中、ただでさえキツそうなロードワークの5倍…。
考えるだけで背筋が凍りそうなその内容に、私たちは再び手をつけていなかった宿題に向かった。

すると突然ドアがノックされ、赤司くんの声で開かれた先には見知った顔がぞろぞろといた。

「……なんで僕らまでこの時間に呼ばれたんでしょうか」

“なんとなく嫌な予感しかしませんが。”
そう言いながらため息をつくのは黒子テツヤ。
その後ろには緑間真太郎、黄瀬涼太、紫原敦、桃井さつきの姿もあった。

「お前たちは宿題、終わっているか?」

赤司くんの言葉に今来たばかりのメンバーはそれぞれ答える。
黄瀬はあと数学のワーク2ページあると答えたが、その他は皆既に終わらせているようだった。

「実はとあるバカ2人が宿題に一切手をつけていなくてね。悪いが手伝ってやってくれないか。」

「…こいつらはほっとけばいいのだよ」

「そうしたいところだが、昨日突然顧問に“青峰と高塚の問題児組が宿題をしていなかったら、バスケ部は1週間全員勉強会だ”と言われてね。こいつらのせいで練習できなくなるのは嫌だろう?」

「す…すみませーん…」

この際青峰と私で問題児組と言われたことは置いておこう。
手伝ってくれる人がいるのは心強い。
私は青峰の頭をわしづかみすると、それを机に叩きつけながら頭を下げ、ため息をつく彼らに“よろしくお願いします”と言った。
そしてキレる青峰を無視しながら、皆は分担を決めていた。
分担決めの結果、黒子と紫原は青峰、黄瀬と緑間は私を担当することになった。
さつきは用事があるとかでどっかに行ってしまった。

「全くお前は馬鹿なのだよ。これぐらいの宿題なら夏休み中に終わらせるのが当たり前だ。」

「そうっスよ高塚っち!」

「・・・黄瀬に言われるとかなりイラつく」

「なんで!?」

罵倒されながらも彼らのおかげで進んでいく私の宿題。
ほとんど手伝ってくれるのは緑間で、黄瀬はニコニコしているだけだけど。

1時間たったかという時、赤司くんの一言で休憩することになった。
大輝の方は進んでいるのか気になり見てみると、なぜか黒子がぐったりしていた。

「えっと・・・黒子?」

「・・・青峰くんが馬鹿すぎて困りました。これはもうどうしようもないレベルです」

「黒ちんおつかれー」

様子からして紫原はお菓子を食べているだけで何もしていないんだろうな。
紫原はあくびをしながらまいう棒を開けていた。

「大輝は馬鹿だからねー」

「お前に言われたくねーよ」

頭を使いすぎて私と大輝はソファに倒れ込んだ。
そんな私たちをみて、赤司くんはため息をつくと応接室を出て行った。
・・・今なら逃げられる気がする。

「高塚さん、今逃げようとか考えてましたよね?」

「・・・なぜわかった」

「高塚さんは青峰くんと同じぐらい単純思考ですからね。赤司くんがいなくなった今がチャンスだと思ってる顔だなあ、と」

「馬鹿由紀」

「うるせーよ馬鹿大輝」

「どっちも馬鹿なのだよ」

大輝と同じにされるとは侵害な。
そう思っていると赤司くんが帰ってきた。

「これをやる」

「え?」

赤司くんが私に差し出してくれたのは人数分のアイスだった。
私の目は瞬時に輝く。

「やったー!ありがとう赤司くん!」

皆でアイスを選んで食べる。
赤司くんはそんな私たちをみて小さく微笑む。

「食べながらでいいから青峰と高塚以外は着いてこい。お前らは勉強していろ」

その言葉で私と大輝以外は皆行ってしまった。
突然静かになった部屋に、私は少し気まずさを覚えながらクーラーの中とはいえ少し溶け始めたアイスを一口かじった。

「・・・おい由紀」

「なに?」

「逃げっか」

「え?」

逃げる?
逃げたら絶対赤司くんに後で殺される。目線で。
でも逃げたいと思う気持ちも強いわけで。

「・・・よし。行っちゃおっか」

「そう来なくちゃな」

大輝は満面の笑みを浮かべると、私の手を引いて駆け出した。
どこに逃げるのかは聞かなくてもわかってる。
大輝のサボり場といえば屋上だ。
屋上だと絶対見つかるとも思ったが、赤司くんから逃げられるわけないと思ったらどうでも良くなった。

それにしても、さすがというべきか。
普段からあれだけ運動している彼とマネージャーの私の体力差は歴然としているわけで。
応接室のある1階から屋上まで全力ダッシュはさすがにキツイ。
屋上までついた頃には私の息切れはすごかった。

「あいかわらず体力ねーなぁ!」

「体力、馬鹿に・・・言われたく、ない!」

私は屋上で寝っ転がった。
それを見た大輝が私の顔を覗き込むようにして隣にしゃがんだ。
大輝のおかげで眩しかった太陽が隠れる。

「・・・お誕生日、おめでとうございます」

「・・・ありがとうございます」

少し照れながら言うと、彼も照れながら私の頭を撫でる。
彼が撫でてくれるのは好きだ。
少し雑だが手が大きくて気持ちいい。
私が彼の手を堪能していると、彼の顔が近づいてきた。
私は少しドキドキしながら目を閉じた。
その距離、あと数センチ。

・・・の時。

「脱走したくせにいい雰囲気とは。俺が許すと思うかい?」

バァァン!と強い音がして瞬時にそちらを向くと、そこには黒いオーラを出しながらこちらを見る赤司くんとその愉快な仲間たちの姿があった。
私はすぐに起き上がろうと、勢いよく上半身をあげて大輝の頭とぶつかった。

「「〜〜〜ッ!!」」

ふたりとも痛みに堪えながら頭をさすっていると、黒子が私にこっそりとなにかを渡してきた。
なんだろうと思ってそれをみて、今後の展開を読む。

「せーの!」

黄瀬の合図で私たちはクラッカーを大輝に向けて撃ち放った。
大輝は突然のことに呆然とする。

「お誕生日おめでとうッス、青峰っち!」

「はやく応接室に戻ろうよー。ケーキ溶ける」

「大ちゃん、おめでと!!」

「人智を尽くす前に逃げるとは、さすがお前等なのだよ」

「俺から逃げるとはいい度胸だ」

「続きは応接室に行ってからしましょう?」

皆が笑顔で大輝に声をかける。
大輝は照れているのか、頭を掻きながら笑顔を浮かべた。









(そういえばなんで私にも内緒にしてたの!?)
(お前は馬鹿だからバレそうだと考えた結果なのだよ)
(酷っ!!)






……………………………

あ、青峰と夢主は付き合ってます多分(笑)
特に考えないまま急いで打ったので、ミスとかあったらすみません・・・
青峰っち誕生日おめでとおおお!!


(20120831)

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