・玄関
恵(けい)と春(はる)、哲平(てっぺい)と千尋(ちひろ)を送り出している
恵 「忘れもんない?」
哲平 「大丈夫ですよ。なんかあったら買いますから」
恵 「そ?あんま無茶すんなよー?」
千尋 「はーい」
春 「気をつけてね」
手を振る春と恵、門を出て行く哲平と千尋
千尋 「ふふふっ。一週間も旅行だなんて楽しみだなー」
哲平 「旅行じゃない。仕事だ仕事」
千尋 「でもてっちゃんと二人っきりー」
哲平 「もう…」
去っていく千尋と哲平
それを見て微笑むと家の中に入っていく恵と春
・リビング
恵 「ほんとに大丈夫かなー…」
春 「大丈夫だよ。二人とももう大人なんだから」
リビングに入ってくる二人
ソファに座る春
恵 「……ふふ」
恵、春を見て微笑むと春に抱きつく
春 「恵ちゃん?」
恵 「一週間も二人だけなんだぞ?」
春 「うん?」
恵 「どうするー?」
恵、春に笑いながらぎゅっと抱きつく
春 「はははっ、嬉しいんだ?」
恵 「うんっ。だって初めてじゃん。こんなの」
春 「そうだねー。何しよっか?」
春、微笑む
恵 「なんかもうダラーっとしてたいっ」
春 「ダラーって?」
恵 「時間とか関係なく好きな時間に寝て、好きな時間に起きて好きなことすんの」
春 「そうだね」
春、恵の頭を撫でる
恵 「それでー、飯とかなんかインスタントとかでさ。家とかもう汚くてもいいやみたいな」
恵、笑う
春 「じゃあ今日から一週間はお父さん放棄だ?」
恵 「うんっ」
春 「じゃあさ」
恵 「え?」
春、恵に顔を近づける
春 「好きなときに好きな場所で恵ちゃんのこと抱きしめてもいいの?」
恵 「……」
恵、きょとんとする
春 「駄目?」
恵 「いっつもしてんじゃん」
恵、呆れる
春 「あれー?じゃあちー達いてもここでこんな風にしてもよかったんだー?」
春、恵をソファに押し倒す
恵 「こら」
春、キスをする
春 「駄目なの?」
恵 「ふふ」
恵、春の頬を両手で触れると微笑む
恵 「今週だけな」
恵、笑うとキスをする
笑い合う二人
・リビング(夜)
ソファに座っている春
春に寄りかかってソファに寝そべっている恵
春 「恵ちゃんのファーストキスっていつだった?」
恵 「何急に」
恵、視線を春の方へ向ける
春 「なんか気になるなぁと思って」
恵 「俺は気になんない」
春 「えー?いいでしょ?教えてよー」
恵 「だってこういう話したらなんか喧嘩しそうだもん」
春 「やきもち妬いて?」
恵 「そう」
春 「大丈夫だよ。僕はそんなに心狭くないから」
春、笑って言う
恵 「何それ。っつーか妬けっ!」
春 「はははっ。じゃあ当ててあげる」
恵 「いいよ」
春 「うーんとねー。幼稚園って言いたいところだけど小学生かなー?」
恵 「はずれー」
春 「ほんと?じゃあやっぱり幼稚園だ」
恵 「はずれー。なんだ春なら当てられるかと思ってた」
笑う恵
春 「あれ?ほんとに?じゃあ中学生?」
恵 「うん」
春 「驚いたな。恵ちゃんもっと早いと思ってたよ」
本当に驚く春
恵 「それって俺怒るところー?」
春 「ううん。ほんとに驚いたの。いつ?何年生?」
恵 「そこまで聞くのかよ。三年」
春 「……」
恵 「ほんとにびっくりしてんだろ」
恵、寝返りを打って春を見る
春 「うん」
恵 「俺って純情少年だったんだよー?」
春 「初恋の人?」
恵 「今の突っ込んで欲しかったんだけど…。うーん。初恋ってさ、初めて好きになった人のこと?」
春 「うん」
恵 「じゃあ違う。初恋は幼稚園の青組で同じクラスだった翔太(しょうた)くん」
春 「はははっ。翔太くんか」
恵 「でも本当に好きだと思えた人だったかもな。初めて」
春 「翔太くんよりも?」
恵 「うん」
恵、少し懐かしげに笑う
春 「ファーストキスの相手は初めての恋人だったんだ?」
恵 「そこまで掘り下げてほんとに怒んない?」
春 「うん。聞きたいな」
恵 「ちょっと悔しいけど仕方ないから話してやるか」
春 「はははっ」
恵、また寝返りを打って天井を見る
恵 「八個年上の人でさ、俺より大人なくせになんかドジで顔はまぁ悪くなかったけど、お世辞にもカッコイイ男とは言えない人だった」
笑いながら話す恵
春 「僕より年上だ」
恵 「あー、ほんとだ」
春 「その人が初めての人?」
恵 「うん。全部初めて。手繋いだのも、キスしたのも、セックスしたのも」
春 「手繋いだのも?」
恵 「だーかーらっ、純情少年だったんだって。ははっ」
春 「なんだか想像できないな…」
恵 「えー?今とそんなに変わんないんだけどっ」
春 「へぇー。じゃあ純情だった十五歳の恵ちゃんは可愛い顔してその人のこと誘ってたんだ?」
恵 「ほーら!妬いてんじゃん!」
恵、起き上がって春を見る
春 「妬いてないってばー。ただその頃の恵ちゃんはすーっごく可愛かっただろうなって思っただけー」
春、恵を抱き寄せるとキスをする
恵 「んだよ。頑なに妬いたって言わないわけー?それもそれでヤダ」
拗ねる恵
春 「だってその頃の恵ちゃんがいたから今があるんでしょ?過去にやきもち妬いたって空しいだけだよ。今の君は僕のものなのに」
恵の頬を撫でる春
恵 「ばか」
春 「未来の君も僕だけのものだけど」
春、笑うとキスをする
恵 「〜〜〜っ」
真っ赤になる恵
・リビング(夜)
春、風呂から出てくる
恵、ソファに座って白ワインを飲んでいる
春 「あーずるい。僕にも頂戴」
タオルで髪を拭きながら恵の隣に座る春
恵 「んー」
恵、ボトルを差し出すが頬がほんのり赤い
春 「恵ちゃんもう酔ってるの?珍しいね」
春、グラスを持つ
恵 「うんー。まだちょっとしか飲んでないんだけど…」
春に寄りかかる恵
春 「ちょっと?」
春 『皆まだボトル一本も空いてないのにどうしてそんな…』
ミスターチャイルドというワインを飲んで
恵と哲平と千尋が酔っ払った時のことを思い出す春
春 「まさか」
春、テーブルの上のボトルを手に取る
春 「ミスターボーイ…?」
恵 「なにー?それ春のー?」
春 「ち、違うけど…恵ちゃんこれ飲んだんだよね?」
恵 「うんー」
春 「も、もうやめといた方がいいよ…?多分酷い二日酔いになっちゃうから…」
恵 「えー?なにそれ」
春 「とにかく」
春、ボトルに栓をして立ち上がる
春 「もう酔っ払ってるし、部屋行こ」
春、恵を手を引いて階段の方へ行く
・リビング(夜)
春、二階から下りてくる
春 「まさかまた子供になっちゃうんじゃあ……」
ふとテーブルの上を見るとグラスはあるがボトルが無い
春 「あ……まただ…」
春M 「見覚えのあるデザインのラベルに、ミスターの名前。どうしてもこの間の出来事を思い出してしまう。皆が子供になっちゃったこと」
・寝室(夜)
隣で眠っている恵
春、恵の寝顔を見て心配そうな顔をする
春M 「消えたボトルにこの時はまだ、ただ不思議な一日がまた訪れることに僕は少しの期待を抱いてた──」
・リビング(朝)
十五歳くらいの恵が朝ごはんを食べている
それを見ている春
恵 「なんだよ?なんか付いてる?」
春 「え?ううん。美味しい?」
恵 「うん。美味いよ」
恵、微笑む
春M 「目が覚めてみるとやっぱり恵ちゃんは子供に戻ってしまっていて、だけどこの間とは違ってた。十五歳くらいの恵ちゃん。昨日の話の頃。だけど僕の想像より遥かに大人びていた恵ちゃんは、少し笑って照れたようにおはようと僕に言った」
・リビング
ソファに座って雑誌を読んでいる春
そこへ恵が二階から下りてくると隣に座る
恵 「なぁ春ー」
春 「なーに?」
春、雑誌をテーブルに置く
恵 「……呼んでみただけ」
恵、笑って視線を逸らす
春 「ふふっ。なーに?どうしたの?」
恵 「だから呼んでみただけだって」
春、照れたようにしている恵の顔をこちらに向かせてキスをする
恵 「んっ……」
ぎこちなくそれを受け入れる恵
春 「恵ちゃん?」
離れて不思議そうに恵を見る春
恵 『俺って純情少年だったんだよー?』
春M 「あれホントだったんだ……」
春、恵を見て笑う
恵 「な、なんだよ!」
そっぽを向く恵
春 「ふふっ、可愛いなーと思って」
春、笑うともう一度キスをする
恵 「…っ……ん……」
一生懸命受け入れ様としている恵
・寝室(夜)
ベッドで恵を抱きしめて眠っている春
春M 「十五歳の頃の恵ちゃんは、あの幼い頃と違って随分と大人で中身はもう僕の知ってる恵ちゃんに近かった。それでも時々見せる幼さが、まだ子供だと感じさせる。そんな恵ちゃんを知れただけで、とても幸せで凄く楽しかった」
恵 「ん……」
春を抱きしめる恵
春M 「目が覚めれば元の恵ちゃんに戻っていると、そう思って眠りについた」
・寝室(朝)
恵 「春」
寝ている春の肩を揺らす恵
恵 「春。朝だぞー」
春 「ん……うん…」
春、目を覚まして恵を見る
恵 「おはよう」
春 「おは……よう…」
春、まだ元に戻っていない恵を見て戸惑う
恵 「ん?どーしたー?飯今日俺の番だよな?さっさと下りて来いよー」
恵、寝室を出て行く
起き上がる春
春 「戻ってない…?」
・庭
庭で洗濯物を干している春
リビングでソファに座ってテレビを見ている恵
春M 「そういえば一日で元に戻るなんて根拠はどこにもなかったんだけど。あの時はどうして次の日には元に戻ってたんだろ?」
恵を見て不思議そうな顔をする春
春M 「不思議なことってあるもんなんだなー」
恵 「なー春ー」
突然恵に声をかけられて驚く春
庭の戸口に立っている恵
春 「どうしたの?」
恵 「それ終わったら外行こーぜ」
春 「そうだね。すぐ終わらせるからちょっと待ってて」
春、微笑む
恵 「はーい」
恵、笑って中に戻って行く
春M 「まぁ恵ちゃんであることには変わりないし、相変わらず可愛いし。深く考えることはないかな」
笑っている春
・海岸
防波堤の上を歩いている恵
手を繋いでその下を歩いている春
恵 「あ、魚がいる!魚!」
春 「どこー?」
春、海を覗く
恵 「ほら、そこ。赤いの」
春 「ほんとだ」
笑い合っている二人
・リビング(夜)
ソファに座ってキスをしている二人
恵 「ン……春…」
春 「なに?」
恵 「俺のこと…好き…?」
春 「うん。好きだよ」
恵 「俺も……」
春 「ふふ」
恵 「あのさ……」
頬を染めて俯く恵
春 「…そろそろ寝ようか」
春、立ち上がる
恵 「え?あ…うん…」
悲しげに春を見る恵
・寝室(夜)
寝ている春
春の寝顔を見る恵
春M 「恵ちゃんが僕を誘っているのは十分分かってた。でもここでその誘いに乗ってしまうのは、いくら僕でも駄目だ…」
・工房
作業台に向かって座っている春
春M 「恵ちゃんだと言っても、自分の息子より年下の子を抱くなんてやっちゃいけないことだと思う…」
頭を抱えている
春 「これでもすっごく我慢してるんだよぅ……」
春M 「それなのに三日経っても、四日経っても恵ちゃんは元の姿には戻らなかった──」
・風呂(夜)
湯船に浸かっている春
春M 「このまま戻らなかったらどうしよう…。ちーとてっちゃんにもどう説明すればいいのか…」
春 「う〜ん……」
恵 『春』
扉越しに声をかけられる
春 「ん?どうしたの?」
恵 『その……俺も入っていい?』
春 「……」
春、湯船から出ると扉を開ける
恵 「…あの…」
春 「もう出るところだったんだ。恵ちゃんもゆっくり浸かっておいで」
春、微笑んで恵の頭を撫でる
恵 「……」
俯く恵
春M 「ごめんね恵ちゃん…」
・リビング(夜)
ソファに座ってホットミルクを飲んでいる春
そこへ恵が来る
春 「恵ちゃんも飲む?」
春、カップをテーブルの上に置く
恵、黙ったまま春にキスをする
春 「恵ちゃん?どうしたの…」
恵 「春…好き…」
春 「恵ちゃん……」
恵 「……」
恵、春を見つめる
春、思わず目を逸らす
すると恵が悲しげな顔をして春のベルトに手を伸ばす
春 「恵ちゃん…!」
恵 「春も俺のこと好きなんだよな…?」
恵、しゃがんで春を見上げる
春 「っ……」
恵 「だったらいいだろ…」
恵、ベルトを外そうとすると電話が鳴る
春 「電話」
恵 「……」
春 「出なきゃ…」
恵 「……」
春、恵の手に触れる
その瞬間に恵、走って二階へ行ってしまう
春M 「危なかった……」
その姿を見送ると電話の方へ行き受話器を取る
春 「もしもし」
千尋 『あ、パパー!』
春 「ちー。いいタイミングで電話してくれた…」
千尋 『ん?パパ元気ないねー?』
春 「うーん…」
千尋 『どうしたのー?恵ちゃんと喧嘩でもしたの?』
春 「ちー…パパがちーよりも年下の子とどうにかなっちゃったらどうする……?」
千尋 『えぇー!?パパ浮気してるの!?最低ッ!!』
千尋の大声に受話器を遠ざける春
春 「いや…違うんだけどね……もうどうすればいいか…」
千尋 『違うの?ないなにー、たとえ話で喧嘩でもしちゃったのー?』
春 「それも違うんだけど……もう僕我慢の限界かもしれない…」
千尋 『えー?もうパパわけわかんないよ〜』
春 「はぁ……」
肩を落とす春
・寝室(夜)
春、部屋に入ってくる
ベッドに俯いて座っている恵
春 「恵ちゃん…」
恵 「……」
恵、鼻水をすする
隣へ座る春
春 「泣かないで」
春、恵の頭を撫でる
恵 「泣いてないっ!」
春 「……嫌だったわけじゃないよ」
恵 「嘘つき…嫌なら嫌ってはっきり言えばいいだろ……俺のことだって好きじゃないんだろ…!」
春 「恵ちゃん」
恵 「……」
春 「僕嘘なんか言ってないよ。君のこと愛してるし、嫌なんかじゃなかった」
恵 「じゃあなんでなんにもしてくれないんだよ…分かんなかったなんてことないだろ…」
春 「……だって恵ちゃん初めてなんでしょ?」
恵 「…それが嫌なの?」
春 「嫌じゃない。でもこんな歳の離れた僕が君を抱いていいのか分からない…」
春、悲しげに俯く
恵 「なんだよ歳って…そんなん関係ないじゃん…好きなんだったら」
春 「でも…」
恵、泣きながら春を見る
恵 「歳の差なんかで誤魔化すなよッ!春は俺のこと好きじゃないんだろ!だったら…そう言えばいいじゃん…」
恵、零れる涙を拭く
春 「……」
春、恵を押し倒す
驚いて春を見上げる恵
恵 「春…」
春 「僕だってずっと我慢してたんだ。でも今の君は恵ちゃんであって恵ちゃんじゃない」
恵 「え…?」
春 「言っても分からないだろうけど、僕にだっていろんな葛藤があるんだよ」
春、真剣な眼で恵を見ている
春 「十四年前の初めてとは訳が違うんだ」
春、恵にキスをする
恵 「っ……ん…ふ……」
春 「ん…っ……」
恵 「ぁっ……ん…ぅ……は、る…」
春 「……」
春、キスをやめると恵のジーパンを下着ごとずり下ろす
恵 「えっ?ちょ、春!」
春 「……」
春、恵の声を無視してそのまま咥える
恵 「あっ!……んっ…はる、ちょっと……待ってっ…あ…」
恵、春の頭に触れるが黙ったまま続ける春
恵 「んっ…や、だ……そんな…あぁっ…」
春 「……ん……っ…」
恵 「はるっ……こん…なの……あっ…」
春 「……んぅ……ん…」
恵 「ちょ、ちょっと……まって……おねがい…っ…」
春 「…ふ……んっ…」
恵 「はる……ほんとに、だめ……っ…もう…っん…あっ…」
春 「っ……ん……ぅ…」
恵 「あっ、ぁっ……でるっ……くち、離し…あぁっ!」
春 「ん……んっ…」
春、飲み干すと恵を見る
恵、涙目で息を切らしながら春を見る
恵 「の…飲んだ……」
春 「嫌だった?」
恵 「そ、そうじゃなくて……」
真っ赤になる恵
春 「……」
春、少し俯く
恵 「俺も……」
春 「え?」
恵を見る春
恵 「俺もする…」
恵、起き上がる
春 「ちょ、ちょっと待って!」
恵 「え?」
春 「はぁ……」
春、ため息を吐いて頭を抱える
恵 「春…?あの……」
恵、不安そうに春を見る
春M 「これで落ち着くと思った僕が馬鹿だった……」
春 「恵ちゃんは恵ちゃんだもんね…」
恵 「どういう…」
春 「分かった。しよう」
春、恵をベッドに押し倒す
恵 「あ、あの…」
春 「出来るだけ優しくするから。嫌だったらすぐ言ってね」
春、恵の髪を撫でる
恵 「う、うん…あの…俺もその、初めてだから…どうすればいいかよくわかんねぇけど…」
春 「そんな心配しなくていいよ」
春、微笑むとキスをする
・寝室(夜)
春、恵に触れながら後ろに触れる
恵 「んっ…春…ちょっと待って…」
春 「やっぱり嫌?」
恵 「違う」
恵、起き上がる
恵 「俺も…春のやってあげたい…」
恵、春を潤んだ目で見る
春 「……」
額を押さえる春
恵 「だめ…?」
春 「いいよ」
微笑んでキスをする春
すると春のズボンに手を掛けて中のものを取り出す恵
恵 「……」
春 「無理しなくていいんだよ」
春、恵の髪を撫でる
恵 「そ、そうじゃないっ!」
恵、真っ赤になって首を振る
それを見て微笑む春
恵 『春の……これ…大好き…』
春M 「いつもはこうなのに、恵ちゃんも最初はこんなだったんだ……ちょっと悔しい…」
春のものを咥えている恵
恵 「んぅ……んっ……気持ち、いい…?」
春 「うん…っ…そこ…もっと舐めて」
恵 「ここ…?……んっ…ぅ……」
春 「そう…上手いよ」
恵 「ん……春の…大っきくて…すごい…はぁっ…」
春 「!!」
春、頭を抱える
春 「恵ちゃんもういいよ」
春、恵の髪を撫でる
恵 「え…?ごめん…良くなかった…?」
涙目で春を見上げる恵
春 「違うよ。おいで」
春、恵をベッドに寝かせると頬を撫でる
春 「恵ちゃんが可愛すぎて我慢できなくなったの」
恵 「へ…?」
春 「だから入れさせて」
キスをする春
恵、真っ赤になる
恵 「う、うん」
・寝室(夜)
恵 「んっ…あぁっ…」
春、恵に触れながら後ろに指を入れている
春 「もう大丈夫かな…辛くない?」
恵 「だい…じょうぶ……」
春 「入れるよ?」
恵 「うん」
恵、頷くと春に手を伸ばしてキスをする
春 「愛してるよ。恵」
春、入れる
恵 「え?あっ…あぁっ!」
春 「っ……大丈夫?痛い…?」
恵 「い…たく…ないっ……んっ…」
恵、辛そうにしている
その表情を見て微笑む春
春 「無理しないで」
春、キスをする
恵 「無理…してな、いからっ……動いて…っ…」
春 「うん…じゃあ動くよ…?」
恵 「うんっ……はる…っ…あっ……んっ……」
春 「…っ…」
恵 「すき…っはる……あいしてる…あっ…」
春 「うん……んっ……僕も愛してるよ…」
恵 「あっ……あぁっ…はぁっ……やっ…ん…」
・寝室(夜)
恵に腕枕をしている春
恵 「なぁ春」
春 「なーに?」
恵 「なんかデジャヴ感じたんだけど…」
春 「デジャヴ?」
恵 「うん。あの…入れるときに『愛してる』って言ったじゃん?」
照れる恵
それを見て微笑む春
春 「うん」
恵 「俺なんかそれ聞いたことある気がするんだよなー…」
春 「えっ?」
春 『恵、愛してる』
春 『愛してるよ。恵』
昔のことと重なる
恵 「なんでだろ?」
春 「あー……ははは」
恵 「不思議」
春 「ねぇそれよりさ。恵ちゃん、自分で入れたいとは思わなかったのー?」
春、意地悪く笑いながら聞く
恵 「え?あぁ…」
春 「?」
恵 「なんか…なんでだろ……無理な気がして…って!」
春 「はははっ」
恵 「そうだよ!なんで俺が入れられてんのッ!?」
春 「もう遅いよ」
春、笑っている
恵 「あー!もう!そう言われるとそうじゃん!くっそー…」
春 「言わない方がよかった?」
恵 「もー……」
春、不意に恵の頬を撫でる
恵 「んっ…なに?」
春 「……」
恵 「春?」
春 「ううん…。なんでもない」
恵 「なんだよー?」
春 「知らない誰かにやきもち妬いてるだけ」
春、キスをする
恵 「誰か…?」
春 「愛してるよ。恵ちゃん」
またキスをする春
春M 「こんなこと今まで思ったこともなかったのに。過去があるからこそ今があるんだってずっと思ってた。だから好きな人の思い出話もいつも平気に聞けてた。だけどこの幼い恵ちゃんが、誰かとこういう経験をしていたんだって思うと、やっぱり寂しくて、悔しくて、どうしてもっと早くに出会えなかったんだろうとか、すべての初めてを僕が貰いたかっただなんて、どうしようもないやきもちを妬いてしまった」
恵 「またする…?」
春 「うん。いいよ」
恵 「でも大丈夫かな…」
春 「何が?」
恵 「明日ちゃんと起きられるかどうか…」
春 「はははっ。大丈夫だよ」
恵の髪を撫でる春
春 「今週は何もしないって決めたんでしょ?」
恵 「え?そうなの?」
春 「恵ちゃんが言ったんだよ?二人きりの間は好きなことするんだって。だから大丈夫」
恵 「そんなこと言ったっけ…?」
春 「うんっ」
春、微笑むとキスをする
笑い合う二人
・寝室(朝)
手を繋いで眠っている二人
春M 「その後散々抱き合って、知らないうちに眠ってしまって──」
・寝室
春 「ん……」
目が覚めると隣には誰もいない
春M 「目が覚めてみるともうお昼前でした」
・リビング
目を擦りながら下りてくる春
キッチンからいい匂いがする
春 「恵ちゃん…おはよう…」
キッチンを覗く春
恵 「おはようって時間じゃねぇけどなっ!」
恵、笑っている
春 「恵ちゃん…」
恵 「なんだよ?まだ寝ぼけてんのか?」
恵、元の姿に戻っている
春 「ううん……」
恵 「なに、熱でもあんの?」
恵、心配して額をあわせる
恵 「ないじゃん。ほら、朝飯兼昼飯出来たぞー?顔洗ったのかよ?」
笑っている恵
春、恵を抱きしめる
恵 「春…?」
春 「元に戻んないのかと思った…」
恵 「はぁ?どういう意味」
春 「でもちょっと悲しい」
恵 「おいおい、わけわかんねぇぞ」
恵、笑う
春 「僕の心は広くなんかなかった。君の初めては僕が奪いたかった」
恵 「え…?」
春 「それに君が年上の好きな人に言ったかもしれない言葉が悔しい」
恵 『なんだよ歳って…そんなん関係ないじゃん…好きなんだったら』
恵 「?俺なんか言ったっけ…」
春 「どうしてもっと早くに出会えなかったんだろう」
恵 「おい、春。なんだよ?」
恵、離れると春を見る
恵 「変な夢でも見たのか?っつーか妬くの遅い!」
春 「だって…」
恵 「というかな、言っとくけど俺のケツは死ぬまで誰にも入れさせないつもりだったんだぞ!それを入れさせてもらっておいてなんだよそれ」
恵、笑っている
恵 「手繋ぐより、初めてキスするより、童貞失うより、俺のバージンは価値あるもんなんだよッ!その価値よーく分かってろ!」
春 「……」
恵 「ちなみにこの先ずーっと春しか入れない場所なんだバーカ」
恵、笑いながらキスをする
春 「恵ちゃん…」
恵 「やっぱりなんか変な夢でもみたんだろ?顔洗って来い」
春 「恵ちゃん!」
春、また抱きつく
春 「愛してるッ!!」
恵 「あーもう飯が冷える!早く顔洗って来い!」
春 「もう離さない〜〜〜!!」
恵 「あ〜〜!うざい〜〜〜!!」
春M 「大人な恵ちゃんは、十五歳の頃よりやっぱりしっかりしてて僕の知ってる恵ちゃんだった」
・リビング
ソファに座って恵に抱きついている春
恵、嫌がっている
春M 「知らない誰かに対するやきもちは、少しまだ残っているけど、恵ちゃんのいう価値ある初体験を僕は大切に思おうと思う」
キスをする二人
春M 「不思議なワインがもたらした、二度目の初体験は歳の差二十九歳の不思議な出来事だった──」
おわり
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