・リビング
春(はる)、千尋(ちひろ)、恵(けい)、哲平(てっぺい)
ソファに座ってテレビを見ている
テレビにはエンドロールが流れている
泣いている春と千尋
春 「うぅ……僕ハリーみたいなパパになるっ」
春、千尋を抱きしめる
千尋 「じゃあ僕はグレースになるっ」
哲平 「え……?」
恵 「想像するな」
恵、呆れて立ち上がると隠れて涙を拭いて二階へ行く
哲平 「……」
哲平、抱き合いながら泣いている春と千尋を見るが
ふと時計を見る
哲平 「晩飯作ろ…」
言いながらキッチンへ入っていく哲平
・リビング
千尋 「てっちゃーん」
千尋、キッチンを覗く
キッチンで料理をしている哲平
哲平 「んー?」
千尋 「今日のメニューはなーに?」
哲平 「グラタン」
千尋 「わーい!グラタン♪グラタン♪」
言いながらふと玄関へ続く廊下を見る千尋
千尋 「!」
何かを閃く千尋
千尋 「パパッ!」
ソファに座ってDVDのパッケージを見ている春
春 「?」
・リビング
モニターに映る春
春 「戻るって約束したけど……」
春、少し俯く
千尋 「え…?」
春 「約束は守れない…」
千尋 「…僕も、パパに嘘を吐いてた。『僕とパパは違う』なんて、何も違わないよ」
笑う千尋
それを見て微笑む春
春 「てっちゃんと幸せになるんだよ…」
インターホンのモニターに映る春と受話器を持って話している千尋
そこへ恵が二階から下りてくる
千尋 「パパっ!恵ちゃんが来てくれたよ!」
恵 「?」
千尋の姿とモニターの春を見て呆れる恵
千尋 「恵ちゃん!早く早く!」
手招きをする千尋
傍に行く恵
春 「恵ちゃん……僕」
恵 「インターホンで遊ぶな馬鹿!!」
千尋から受話器を取り上げて叫ぶとガチャンと切る
・リビング
テーブルについて夕食を食べている四人
春、拗ねている
春 「楽しかったのに…アルマゲドンごっこ」
恵 「何がごっこだッ!」
春 「誰でもインターホンで遊びたくなるものだよ…?ねー、ちー」
千尋 「うんっ。楽しかったのにー」
恵 「馬鹿馬鹿しい」
呆れる恵
哲平 「まぁまぁ」
哲平、宥める
春 「恵ちゃんだって小さい頃あぁいうことして遊んでたでしょー?」
恵 「してねぇよ」
春 「嘘だー。してたよ絶対」
恵 「絶対してない!俺はそういうガキみたいな遊びはしなかった!」
春 「えー?ほんとかなー?」
春、哲平を見る
恵 「してねぇよなぁ?哲平」
何も言うなという目で言う恵
哲平 「え…?いや、俺が物心ついたときはもうそんなことは無かったかなー……ははは…」
春 「恵ちゃんの小さい頃はヤンチャで可愛かっただろーね」
春、笑って恵を見る
恵 「おしとやかで超可愛かったに決まってんだろッ」
ぷいっとそっぽを向く恵
春M 「思えばこの時から異変は起こっていたのかもしれません」
・リビング
キッチンのワインセラーの前にいる千尋
ソファに座っている春と恵
哲平、床に座っている
千尋 「ねぇー。これ誰のワインー?」
恵 「どれー?」
千尋 「赤ワインなんだけど白の列に入ってるよー?えーっと…」
哲平 「名前は?」
千尋 「ミスターチャイルド…?」
春 「ミスチル…?」
恵 「いや、それはチルドレンだろ」
千尋、ワインボトルを持って来る
千尋 「これー」
春、手に取る
春 「チャイルドだね。なんだろ?誰のー?」
哲平 「俺違いますよ?」
恵 「俺も違う」
春 「僕も買った覚えないなぁ」
千尋 「見たことない銘柄だね」
恵 「いいじゃん。飲もうぜ」
恵、春からボトルを取るとオープナーで勝手に開けてしまう
恵 「匂いは普通だな」
匂いをかぐとワイングラスに注ぐ恵
哲平 「だ、大丈夫なんですか…?そんな得体の知れないもの…」
恵 「どーせ貰い物かなんかだろー?だいじょぶだって」
飲む恵
恵 「…ん……」
春 「恵ちゃん?」
心配そうにする春
恵 「美味い!」
千尋 「えー?ほんとにー?」
恵 「マジマジ!うまいぞこれ!」
春、千尋、哲平、顔を見合わせる
・リビング
恵 「あー……暑い……」
恵、ソファに座って隣にいる春に寄りかかる
哲平 「…んー……」
哲平、床で眠っている
千尋 「てっちゃーん……もっとぉ…」
床に寝ている哲平に抱きついて眠っている千尋
それを見て呆然とする春
春 「あ、あの…皆…どうしてそんなに酔っ払ってるの…?」
春、なんともない顔をしているが不安そう
恵 「うー……俺も眠い…」
春 「恵ちゃん。だめだよ、こんなとこで寝ちゃ風邪ひいちゃうから」
恵 「歩けなーい……」
春 「えぇ?というか、皆まだボトル一本も空いてないのにどうしてそんな…」
恵 「んー……」
恵、春の膝に寝転んで眠ってしまう
春 「け、恵ちゃん!駄目だってば」
恵、気持ちよさそうに眠っている
春 「はぁ……少しだけだよ?」
春、困りながらも恵の髪を撫でる
・リビング
時計の音が鳴り響いている
テレビが砂嵐になっている
春 「……すー…」
春、眠ってしまう
四人の寝息が聞こえてくる
春M 「僕も眠ってしまった後」
・リビング
朝の日差しがリビングに降り注いでいる
春M 「目を覚ましてみると」
春 「…ん……」
目を覚ます春
春 「恵ちゃん…朝……」
春、膝の上で眠っている恵の肩を揺らす
春 「?」
いつもと違う感触に恵を見る
春 「え?」
恵 「…うーん……」
大きな服に包まれている恵
五歳程に見える
春 「あれ…?」
床を見ると小さな哲平と千尋が手を繋いで眠っている
二人も大きな服に包まれている
哲平は四歳ほど千尋は二歳程に見える
春M 「皆が子供になっていました」
・リビング
春M 「皆が目を覚ましてみても、やっぱり子供みたいで」
恵、ソファの上で飛び跳ねている
哲平、それを見てオロオロしている
春M 「頬を抓っても夢ではありませんでした」
春 (ちーの服置いといてよかった……)
春、額に手を当てる
すると服を引っ張られる
春 「?」
千尋 「パパー」
春 「なぁに?」
千尋、唇を指差す
千尋 「ちゅっちゅどこー?」
春 「へ?」
千尋、唇を指差したまま二回吸う
春 「あ、あぁ!おしゃぶり!」
春、物置へ走って行って戻ってくると千尋におしゃぶりを咥えさせる
満面の笑みをする千尋
春 「ちーはおしゃぶり大好きだったもんね……ほんとにちーなんだ…」
驚く春
恵 「ははははっ!」
ソファで飛び跳ねながら大笑いしている恵
それを見る春
春 「恵ちゃん…そんなことしてると危な──」
止めようと立ち上がったところで下にいた哲平とぶつかる恵
恵 「っ!ってぇ……」
頭を抱える恵
哲平 「い……痛いぃぃぃ……」
泣き出す哲平
春 「あぁ!てっちゃん大丈夫?」
春、哲平を抱きしめて頭を撫でる
恵 「そんなとこでぼーっと突っ立ってんのが悪ぃんだろ!!」
哲平 「ごめんなさーい…」
泣いている哲平
春 「そんな…恵ちゃん。駄目だよ。ちゃんとごめんなさいしなきゃ」
恵 「俺悪くないもん!」
恵、庭へ出て行ってしまう
春 「恵ちゃん……」
恵 『おしとやかで超可愛かったに決まってんだろッ』
春 「分かってはいたけど……」
庭にいる恵を見る春
哲平 「うぅ……」
春 「あぁ、てっちゃん。大丈夫?冷やそうね」
哲平 「ぅっ…うっ…」
涙目で春を見上げる哲平
春 「可哀想に…」
抱きしめるとキッチンへ行く春
・リビング
春 「これでしばらく冷やしてようね」
氷を入れた袋を頭に乗せている哲平
春 「あれ?」
辺りを見回す春
春 「ちーは?」
哲平 「あそこ…」
哲平、ソファの後ろを指差す
春 「あぁ!!」
千尋、ソファの後ろでティッシュを大量に出している
駆け寄る春
春 「ちー!だめだよもー…」
千尋 「ふふっ。パパーあのねー、雲の上にいるのー」
春 「雲の上…?あぁ、ティッシュの雲だねー」
千尋 「へへへぇ」
笑っている千尋
春 「ちー、でもね、駄目だよー。ティッシュの雲は終わりにして、あっちで遊ぼっか」
千尋 「あ!てっちゃんお熱なのー?」
千尋、哲平の方へ走っていく
春 「……」
ティッシュの山を見る春
春 (そういえば何度もこれやられたんだっけ……)
春、片付けだす
・庭
庭で各々遊んでいる
それを見ている春
空を見上げる
春 (あー…今日はいいお天気……それにしてもどうしてこんなことに……)
走り回って遊んでいる恵と哲平
千尋は春の隣で石畳の隙間を見ている
恵 「あっちぃ……」
額の汗を拭う恵
春 「あ、そうだ」
春、何かを思い出し立ち上がる
・庭
春、竹の節に穴を開けた注射器の様な水鉄砲を持っている
それを見ている三人
春 「こうやって水を吸ってー、ピューって」
水を出す
恵 「おぉ!貸して貸して!」
哲平 「俺もやるー!」
千尋 「ぴゅー、ぴゅー」
一人ずつに渡すと石畳のところへ座る春
春 「外にかけちゃだめだよー?」
恵 「わかってるってー」
哲平 「あははっ!」
遊んでいる三人を微笑んでみている春
恵 『あんまり水撒くなよ。芝が傷む!』
春 「あ……」
思い出して不味いと思うが、恵の遊んでいる姿を見る
恵 「ホラホラ!あはははっ!」
春 「まぁいっか。本人が楽しんでるしね…」
微笑む春
・庭
哲平 「水がもうないよー?」
たらいに溜めていた水を見る哲平
恵 「そんなのまた足せばいいんだろ」
哲平 「そっか」
恵、ホースを持ってきて水を入れる
千尋 「てっちゃん。お水もうないの。入れてー?」
千尋、哲平に水鉄砲を差し出す
哲平 「おう」
哲平、千尋の水鉄砲に水を入れてやるためにしゃがむ
恵 「……」
恵、自分の持っているホースを見ると何かを閃く
恵 「こっちのが威力強いじゃん!」
ふと家の中を見ると春が電話をしている
にやっと笑う恵
恵 「巨大水鉄砲ー!!」
言いながらホースを哲平に向けて水をかける
哲平 「うわっ!!やめてよ恵ちゃん!ずるいよ!」
哲平、避けようとするが容赦のない恵
恵 「はははははっ!」
・リビング
電話を終える春
哲平 「恵ちゃんやめてよー!」
春 「?」
ふと庭を見ると哲平が水をかけられている
春 「てっちゃん!」
庭に駆け寄る春
春 「恵ちゃん!そんなことしちゃ──」
恵 「え?」
春の声に気を取られて思わず春の方にホースを向けてしまう
春 「うわっ」
春の顔に水が盛大にかかる
恵 「やべっ……」
春 「……」
春、俯いていて表情が見えない
恵 「ご、ごめん……その」
哲平 「だ、大丈夫……?」
ゆっくりと顔をあげ、濡れた髪をかきあげる春
春 「もう、だめだよ?恵ちゃん」
笑っている春
キラキラしている
恵 「うっ……」
哲平 「ま、眩しいっ…」
その表情にたじろぐ二人
千尋 「パパびしょびしょー」
下で笑っている千尋
・路地
春、恵を左手に、千尋を右手に繋いで千尋の右手を哲平が繋いでいる
春 「てっちゃん、ちーの手離しちゃだめだよー?」
哲平 「はーい」
クラウの店が見えてくる
恵 「あー!」
恵、走っていこうとするが手を離さない春
春 「待って待って」
・クラウの店の前
千尋 「ぽっくりー、ぽっくりー」
千尋、店の前に立っている大きなクマの人形が首を振るのを見ている
春 「あー、ちーこれ好きだったね…」
哲平と恵もそれを見ている
春 「じゃあ、僕おやつ買ってくるから、恵ちゃん。ここで見ててくれる?」
恵 「いいよー」
答えるが春の方は見ていない恵
春 「ここから離れちゃだめだよ?ここにいてね?」
恵 「うん。大丈夫だって」
千尋 「ぽっくりー、ぽっくりー」
春、恵の頭を撫でて店に入って行く
・クラウの店の前
千尋 「ぽっくりー、ぽっくりー」
恵 「……」
恵、飽きてくると辺りを見回す
恵 「……」
店の路地の向こうに砂浜が見える
恵 「おい哲平」
哲平 「なーに?」
恵 「お前ちー見てろよ」
哲平 「え?」
恵、言いながら砂浜の方へ走って行く
哲平 「え!?ちょ、ちょっと恵ちゃんッ!!」
恵 「目離すなよー!」
哲平 「駄目だよ!ここにいなきゃ!」
恵、どんどん遠くへ行ってしまう
哲平 「え、えっと…どうしようっ…」
不安になりながら千尋を見るが、クマを見続けている
哲平 「春さんに言わなきゃ…」
千尋 「ぽっくりー、ぽっくりー」
哲平 「ちー、お店に入ろう?」
千尋 「やだー。もうちょっとー」
哲平、千尋の手を引っ張る
哲平 「駄目だよー!恵ちゃんがいなくなっちゃったんだよ」
千尋 「うーん」
哲平 「ちー!」
哲平、涙目になりながら千尋を引っ張る
・クラウの店
クラウ「ホラ、カップケーキ四つな」
紙袋を受け取る春
春 「ありがとう」
クラウ「それにしてもこの時間帯にくるの久しぶりだな」
春 「おやつが必要になったから。はは…」
クラウ「おやつ?子供でも来てるのか?」
春 「そ、そう…親戚の…」
店の扉が開く
振り返る春
哲平 「うっ…うぅ…」
哲平、泣きながら千尋を引き摺っている
春 「て、てっちゃん!?」
クラウ「?」
哲平 「ごめ…ごめんな…さい…」
春 「どうしたの!?」
春、目線にしゃがむ
哲平 「けいちゃ…んが…」
春 「恵ちゃん?あ!恵ちゃんどこ行ったの!?」
外にもいない恵
哲平 「あっち走って…いっちゃ……」
春 「えぇ!?」
哲平 「ごめんな…さーい…」
泣いている哲平
春 「クラウ!ちょっとこの二人見てて!」
春、二人を抱き上げて店の中に入れると走っていく
クラウ「?あぁ、いいけど…」
哲平 「うぅ……」
・路地
砂浜の方へ走っていく春
春 「恵ちゃーん!」
探しながら走る春
春 「恵ちゃんどこー!?」
ふと視界に恵が映る
砂浜にしゃがみこんでいる恵
春 「恵ちゃん!」
恵 「?あ、春…」
恵、春に気がつく
恵に駆け寄る春
春 「よかった……」
息を切らしている春
恵 「ちーと哲平は?」
春 「あっちにいるよ…もう、駄目じゃない。一人で行っちゃ…」
恵 「大丈夫だよ。危なくないもん」
春 「危ないよ。ホラ、帰ろう?」
春、恵を抱き上げる
恵 「……」
春の顔を見る恵
春 「?」
恵 「ふふふーっ」
恵、嬉しそうに笑う
春 「なーに?」
恵 「ううんっ」
笑っている恵
・風呂
夜になり、四人で風呂に入っている
湯船に浸かっている恵と哲平
春 「はい、ちーも入ってー」
春、千尋を洗い終えて湯船に入れる
春 「よし、僕も…」
春、立ち上がる
恵 「春のでけぇ…」
春 「え?」
恵、哲平、千尋、春の股間を見る
春 「……大人だからね…」
春、若干呆れて湯船に浸かる
お湯が溢れる
千尋 「わー!洪水だー!」
笑っている千尋
・リビング
春、ソファに座って千尋を抱いて寝かしつけている
恵 「ちーばっかずるい」
恵、隣に座っている
春 「え?」
恵 「……」
拗ねている恵
春 「ふふっ。じゃー次は恵ちゃんの番ね」
微笑む春
それを見て照れ隠しでぷいっと顔を背ける恵
腕の中で眠っている千尋
立ち上がる春
哲平 「俺も眠い……」
目を擦る哲平
春 「てっちゃんもおいで」
哲平 「うん……」
哲平、寝ぼけ眼で春と手を繋いで二階へ行く
・リビング
春 「恵ちゃんはまだ眠くないのー?」
階段から下りてくる春
恵 「眠くない」
涙目の恵の隣に座る春
春 「ふふっ。はい。恵ちゃんの番」
春、恵を抱き上げると膝の上に乗せる
向かい合って座る二人
恵 「ふふふーっ」
嬉しそうに笑う恵
恵 「春にプレゼントあげる」
春 「ホント?なにかなー?」
恵 「コレっ」
恵、ポケットから何かを出す
手を広げると貝殻があるが真っ二つに割れている
恵 「あ……」
悲しい顔をする恵
春 「あー、割れちゃったんだね」
恵 「せっかく綺麗だったのに……ごめん…」
しょんぼりする恵
春 「大丈夫だよ。魔法で直してあげる」
春、恵の頭を撫でる
恵 「魔法…?」
春 「そう。ちょっと待っててね」
春、恵を下ろして立ち上がると戸棚から何かを出す
春 「今からこの貝殻に魔法をかけて元通りにするよ?」
恵 「うん…?」
春 「でもこの魔法は一分間見ちゃいけない魔法なんだ」
恵 「一分?」
春 「そう。だから恵ちゃんは見ないでいてくれるかな?」
恵 「うん!いいよ!見ない!」
笑っている恵
春 「よし!じゃあ今から一分ねー。僕がいいよって言うまで見ちゃ駄目だよー?」
恵 「はーい」
目を瞑る恵
それを確認すると接着剤を刷毛で貝殻に塗ってくっつける春
春 「わぁー、どんどん元通りになっていくよー」
恵 「ホントに?まだ見ちゃだめ?」
春 「だめー。まだ一分経ってないよー」
恵 「えー」
・リビング
春 「もういいよ」
ゆっくりと目を開ける恵
春の手のひらに割れたところも分からない綺麗な貝殻がある
恵 「ほんとに直ってる…」
手にとって見る恵
不思議そうにしている
それを見て微笑んでいる春
恵 「春って魔法使いなの?」
春 「うん。知らなかった?」
恵 「知らなかった」
真に受けている恵
春 「はははっ。ほら、おいで」
もう一度恵を膝の上に乗せる
春 「ありがとう。大事にするね」
軽くキスをする
恵 「……」
照れて顔を赤くする恵
春 「……」
それを見て驚く春
恵 「俺、春のこと好きだよ?」
春 「うん。知ってる」
恵 「…春は?」
春 「大好きだよ」
春、微笑むと恵が春の頬に触れる
恵 「じゃあもう一回チューして?」
春 「ふふっ、チューね…」
春、笑いながらキスをする
恵 「…ん……っ…」
春 「ん……っ…」
恵 「んん………んー…」
春 「?」
恵 「んはっ……はぁ…」
恵、離れると息を荒くして春を見上げる
恵 「春のベロ……大っきくて苦しい……」
春 「!!」
春、恵を見て両手で顔を隠す
春 (あぁ…!いくら恵ちゃんでもこんなに小さな子はダメだっ!耐えて…!)
恵 「春…?」
春 「な、なんでもない…はは……そろそろ寝よっか?」
春、何とか笑う
恵 「やだもっと」
恵、春に抱きつく
春 「だ、だめだよ。もう寝る時間だから。ね?また明日ね?」
恵 「?」
恵、春の股間を見る
恵 「春、なんか固いの当たってる…」
言いながら春を見上げる
春 「あ、当たってませんっ!」
春、恵を抱いて立ち上がる
恵 「?」
春 「もう寝ようね!」
・寝室
ベッドに千尋と哲平が手を繋いで眠っている
春 「しー」
人差し指を口元に当てて微笑む春
恵 「しー」
それを真似してクスクス笑う恵
ベッドに入る二人
恵 「春」
春 「ん?」
恵 「明日は何して遊ぶ?」
春 「明日かー、そうだねー。何しようか」
恵 「俺ねー、春のシフォンケーキ食べたい」
春 「そう?じゃあ作ろっか。手伝ってくれる?」
恵 「うんっ」
春 「ふふっ。おやすみなさい」
春、恵の額にキスをする
恵 「おやすみなさい」
微笑むと目を閉じる恵
春M 「久しぶりに感じる心地いい疲れに、小さな三つの寝息が子守唄となって僕はいつの間にか眠りについていました。明日がどうなるかは、分からなかったけど。でも、皆可愛くて、不安は少しも感じませんでした」
・寝室
春M 「が」
春 「い、痛い…」
春の顔に恵の腕が乗っかっている
恵 「うーん……」
哲平 「ん……」
千尋 「……うー…」
春、起き上がる
春 「……」
元に戻っている三人
ベッドの上で狭そうに眠っている
春M 「翌日には皆元に戻っていました…」
・リビング
恵 「あー……だりー…」
哲平 「気持ち悪い……」
千尋 「頭痛い……」
テーブルについてうな垂れている三人
春がおかゆを作ってくる
春 「大丈夫?皆…」
恵 「俺昨日の記憶が無いんだけど……」
哲平 「俺も…」
千尋 「んー?…僕も……」
春 「……」
その光景を見て苦笑いする春
恵 「春はなんでそんな元気なわけー…?」
哲平 「さすがですね…」
春 「いやー…ははは…」
春M 「目覚めた皆は酷い二日酔いに襲われたようで、子供になった記憶も、まったく無いようでした」
・リビング
恵 「あーーーー!!」
恵、庭を見て叫ぶ
恵 「誰だ!庭めちゃくちゃにした奴っ!」
哲平 「知らないよー…」
千尋 「記憶無いって言ってるのに…」
春、キッチンから出てくる
春 「まぁまぁ…」
恵 「春覚えてんなら知ってんだろっ!?誰だよ!」
春 「……」
恵 『巨大水鉄砲ー!!』
春、恵を見ている
恵 「え?俺…?」
春 「まぁ、庭くらいいいじゃない。ね?それよりシフォンケーキ作ったんだ。食べよう?」
微笑んでいる春
恵 「気持ち悪いのに食えるかよ……」
春 「えっ…?」
恵 「もー、二日酔いとか何年ぶりだよ……」
だれながらソファに倒れこむ恵
春 「……」
春M 「皆を二日酔いで苦しめたあのワインは、探してみてもどこにもありませんでした。あの不思議な出来事が、あのワインを飲んだことで起きたのかも分かりません」
春 「じゃー僕一人で食べるもん…」
拗ねる春
恵 「あー!全部食うなよー……治ったら食うから絶対残しといて」
春 「ふふっ。はーい」
笑う春
春M 「皆覚えてないのは寂しいけど、でも恵ちゃんが幼い頃、確かにおしとやかで超可愛かったことが分かったし、大変だったけど凄く楽しかったので、僕にとっては凄くいい思い出です」
春M 「またこんなことがあればいいのになー」
おわり
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