・自宅

浩介(こうすけ)帰ってくる
健二(けんじ)、ゲームをしながら振り返る

健二 「あ、おっかえりー!」

浩介、部屋を見回す

浩介 「なに、掃除したの!?」
健二 「晩飯も作った!」

テーブルを指差す健二
テーブルの上に並べられている夕飯を見る浩介

浩介 「……」

健二、物欲しそうな顔をする
浩介、ため息をついて袋を渡す

健二 「やったー!開けていい?開けていい?」
浩介 「いいけど」
健二 「もう待ち遠しくて」

健二、嬉しそうにゲームのパッケージを眺めて
ビニールを破る

浩介M「この目の前にいる子供みたいにはしゃいでるこいつ、健二は、ひょんな事から俺と仲良くなって今では毎日のように家に来ている。あんなことが無かったらきっと俺達はこんなに仲良くなることなんかなかった」

浩介 「掃除とかしなくていいから…」
健二 「やー、でも結構やばかったぞ?空き缶とかペットボトルとか、もう大量大量」
浩介 「半分はお前の責任でもあるだろ」
健二 「だから片付けたんじゃーん」
浩介 「他のもの触ってない?」
健二 「何?今更隠すことなんかあんのー?お前の性癖ならもう分かってるって!」

健二、笑う

浩介 「そうじゃなくて。どこにあるのかわかんなくなるだろ?」
健二 「あ、そっか。ごめんごめん!その時は俺に聞いてー」

浩介、ため息をつく

浩介M「二ヶ月前」



・店

浩介、レジの前に立っている

浩介M「俺は大学に通いながら夕方からゲーム屋でバイトしてて、その日もいつもと同じに働いていた」

客がレジに来る

浩介 「いらっしゃいませー」

客、予約受け取り伝票を出す
浩介、伝票を見て商品を出す

浩介 「こちらでお間違え…」

浩介、客の顔を見る

浩介 「あ……」
客  「あ…」

浩介M「そこで偶然会ってしまったのが健二だった」

浩介 「……こちらでお間違えないでしょうか?」
健二 「あ、はい……」

浩介M「気まずいのは普通にバイト先で会ったときとは比にならない。こいつが買っていったのは」

浩介 「ありがとうございましたー……」

浩介M「エロゲだった」



・学校

浩介M「俺はこの頃、健二はまったくゲームなんかに興味が無い奴だと思っていた。それは多分俺だけじゃない。この学校で健二のこと知っている奴だったら全員がそう思っているはずだ」

健二、カフェで女の子に囲まれている
遠くから健二を見ている浩介

浩介M「村里(むらさと)健二。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能。しかしこいつが」

健二、女の子と笑い合っている

浩介M「エロゲ」

浩介、少し笑う
健二、それを見つけて走ってくる

健二 「高杉(たかすぎ)…ちょっと顔貸せ…」

健二、苦笑いをする

浩介 「あ、あぁ…」



・学校

人気が無いところにいる二人

健二 「お願いだ!このことは黙っててくれ!」

手を合わせて頼む健二

健二 「何でもするから!」
浩介 「……」
健二 「…」
浩介 「うん。別にいいよ。っつか、最初から言いふらすつもりなんか無かったけど」

健二、浩介の顔を見る

健二 「え…?」
浩介 「人に言えない趣味なんか皆持ってんだろ。それを言いふらすなんかしないよ」
健二 「高杉…」
浩介 「まぁ、村里がって言うのは結構インパクトあったけど」
健二 「ぅ……」
浩介 「はははっ、大丈夫だって。秘密にしとくから」
健二 「お前いい奴だな!」

二人、歩き出す

浩介M「まぁ、こういうきっかけがあって、俺達は仲良くなった。健二は完璧な隠れオタで、そういう話をする友達が出来て嬉しかったのかよく家にも遊びに来るようになって、もう最近では自宅に帰るよりもここにいることが多い」



・自宅

ゲームをしている健二
浩介、食事をしながらそれを見ている

浩介 「あ、なぁ」
健二 「んー?」
浩介 「このまえ予約したDVDの特典さー」
健二 「うん」
浩介 「店長が三つともくれるって」
健二 「うそぉ!?」
浩介 「ほんと」
健二 「マジで?」
浩介 「マジで」
健二 「俺ちょっと嬉しくて泣きそう」
浩介 「はははっ」

浩介M「こいつの子供みたいな笑顔が結構好きだったりする」



・自宅

相変わらずゲーム中の健二
その隣で座ってみている浩介

浩介 「そういえば最近聞かないけど、彼女は?」
健二 「あー、別れたよ」
浩介 「え!?いつ!?」
健二 「んー?最近。先週だったかな?」
浩介 「……なんで?」
健二 「なんかさー、今俺ここ来てるのが一番楽しいんだよね」
浩介 「は?」
健二 「なんにも気にせず、好きな話できてさー。なんか一番楽だし、楽しい」
浩介 「そうなんだ…」
健二 「やっぱ趣味が合うのが一番だなーとか思ったね。顔とか、性格とかより。あー、まぁそれも大切だけど、やっぱ趣味なんだなーって」
浩介 「ふーん…」
健二 「浩介はー?全然そういう話聞かないけど」
浩介 「俺は…いないよ…別に、こんなだし」
健二 「こんな?こんなって?」
浩介 「いや、お前みたいにかっこよくないし、女の子と話すのも得意じゃないし」
健二 「はぁ!?言っとくけどお前のこと好みって言ってる子いるよ?」
浩介 「え!?うそだ!」
健二 「ホントだって!最近健二くんと仲いい子可愛いよねーっつって」
浩介 「か、可愛い…?」
健二 「うん」
浩介 「嬉しくない…」
健二 「どうして?」

健二、笑う

浩介 「男が可愛いとか言われて嬉しいはずないだろ」
健二 「そー?俺も浩介可愛いと思うんだけど」
浩介 「はぁ!?」
健二 「俺最近よく思うんだよなー。お前が女の子だったら即行告ってんのにって」
浩介 「何それ」
健二 「だって、趣味は合うし、浩介の作る飯って美味いし、なんかこう守ってやりたくなる可愛さがある」
浩介 「……」
健二 「あれ?」
浩介 「気持ち悪い……」
健二 「なーんでよ!」

健二、笑う

浩介M「俺も時々思うよ。自分が女だったらなって」



・学校

健二、女子Aと話している
そこに偶然浩介がくる

健二 「あっ浩介!」
浩介 「健二…こんにちは」

浩介、女子Aに頭を下げる

健二 「もう授業終わり?」
浩介 「うん。健二は?」
健二 「俺も終わりー。これからお前んち行っていい?」
浩介 「いいけど」
健二 「よっし!んじゃ、また明日」

健二、女子Aに手を振る

女子A「あ、待って!健二くん、今度のさ、飲み会。浩介くんも誘っていい?」
浩介 「え?」
健二 「浩介も?」
女子A「うん!結構皆興味持ってんだよねー。浩介くんのこと」
健二 「あー…うん、まぁ浩介がいいってんなら…」
浩介 「……」

浩介、健二の顔を見る

健二 「今度のさ、金曜なんだけど、飲み会」
浩介 「あ、えっと、俺は…」
女子A「もう予定ある?」
浩介 「いや、別に無いけど」
女子A「じゃあおいでよ!普通の飲み会だから!」
浩介 「う、うん…じゃあ」
女子A「じゃあ決まりね!詳しくは健二くんから聞いてねー。それじゃ!」

女子A、去っていく



・帰り道

二人、黙って歩いている

浩介 「健二…俺迷惑だったら断るよ…」

健二、はっとする

健二 「え?迷惑って?」
浩介 「俺が行ったらやっぱやだろ?なんか…そのさ…」
健二 「何言ってんだよ!そんなこと誰も思って無いって!」
浩介 「でも」
健二 「金曜、絶対来いよ!な?」
浩介 「あ、あぁ…」
健二 「腹減ったなー。なんか食ってく?」
浩介 「うん」

健二を見るがすぐに逸らす浩介

浩介 「……」



・居酒屋

浩介M「健二はその日からなんだかいつもと違ってて、やっぱり俺なんかが一緒にいたら迷惑なんじゃないかと思った。でも当日になると、突然普通に戻った。それがなんか不自然で、不安なまま飲み会に参加することになった」

浩介、隣に座った女の子と話している

女子B「浩介くんって健二くんと別の学科だよね?高校からの友達?」
浩介 「あ、いや、ちょっとしたきっかけで」
女子B「そーなんだー。趣味が合ったとか?」
浩介 「え!?」
女子B「ん?どうかした?健二くんの趣味ってビリヤードとかー?」
浩介 「あ、あぁ。まぁそんなとこかな。ははは」
浩介 (ビリヤードっぽいけど…)
女子B「でもさ、浩介くん、ほんとに彼女いないの?」
浩介 「い、いないよ」
女子B「年上の彼女とかいそーなのにー」
浩介 「はははっ、いないよー」
浩介 (やっぱ頼りないように見えんの…?)
女子B「ねぇ、よかったらメアド交換しよー」
浩介 「あ、うん。いいよ」

携帯を出す二人
健二、部屋を出て行く
それに気がつく浩介

浩介 (健二…どこ行ったんだろ?トイレかな)
浩介 「俺ちょっとトイレ」
女子B「早く戻って来てね」
浩介 「はははっ。うん」

浩介、部屋を出る



・居酒屋

トイレに着く前に健二と会う浩介

浩介 「健二」
健二 「あ、浩介…」
浩介 「トイレじゃないのか?鞄…」
健二 「俺、抜けるって言っといてー」
浩介 「え!?帰るの!?なんで?」
健二 「んー?なんとなく。んじゃよろしく」

健二、店を出る

浩介 「ちょっと待てよ!」

浩介、部屋に戻って鞄を取る

女子B「浩介くん?」
浩介 「ごめん!俺と健二抜けるから!これ、お金」

金を置いて出る浩介

女子B「え!?浩介くん!」



・街

店を出て駅の方へ走る浩介
健二が前を歩いている

浩介 「健二!」
健二 「浩介…なんでお前まで出てきてんだよ」

笑う健二

浩介 「だって、健二が急に抜けるとかいうから…どうしたんだよ」
健二 「別にー。っつか、お前あの子といい感じだったじゃん。俺なんか気にしないでいればよかったのに」
浩介 「そんな…」
健二 「彼女できるかもしんないじゃん。よかったな。俺の言ったとおりだったろ?」
浩介 「健二…なんかあったのか?お前いつもと違うよ?」
健二 「べっつにー。普通だって」
浩介 「健二」
健二 「…あーあ。なんか醒めた!家で飲みなおさねぇ?」
浩介 「いいけど…」
健二 「じゃーいこーぜ!」
浩介 「…」



・自宅

浩介M「帰ってくるなり健二はつまみも殆ど手をつけずに飲み続けた。やっぱりなんかおかしい。でもそれを聞き出せない。俺達は、ただ趣味を共通してるだけの友達だったんだ…そう思ったとたんに悲しくなる」

健二、ソファに横になって眠っている

健二 『お前が女の子だったら即行告ってんのにって』

浩介 「……」

浩介、健二の寝顔を見ている

健二 「……ん…こうすけ……」
浩介 「っ…」

健二、眠っている

浩介 「……」

浩介、健二にキスをする
離れようとしたとたんに頭を抑えられて
もう一度キスをする

浩介 「ん!?」

健二、舌を入れる

浩介 「んっ…けん…じ!……ぅっ…はな…せ!」
健二 「……」
浩介 「やめろ…よ!」

浩介、健二を突き飛ばす

健二 「浩介…」

浩介、走って家を飛び出す

健二 「浩介!」



・河川敷

浩介、河川敷を走ってくる

浩介 (何だよあれ、何だよあれ、何だよあれ!)
浩介 「っ……」
浩介 「俺……何やってんだ…」

浩介M「自分がやったことも、あいつの気持ちも。何もかもが分からない」

浩介 (なんであんなこと……)
健二 「浩介!」

健二、走ってくる

浩介 「っ!」

浩介、健二を確認したとたん走り出す

健二 「ちょ、ちょっと待って!浩介!」

健二、咽る

浩介 「……」

浩介、止まって振り返る
健二が膝を持って咽ている

浩介 「っ…」
健二 「こう…すけ!…ゴホッ…ゴホ…」
浩介 「……」
健二 「ごめん!…はぁっ…はぁ」
浩介 「……」
健二 「俺、なんかおかしくて…」
浩介 「……」
健二 「嫌だったよな…ごめん…」
浩介 「なんでお前が謝るんだよ……」
健二 「だって」
浩介 「俺だっておかしいよ!」
健二 「浩介…」
浩介 「なんで…キスなんか…」

健二、浩介の傍に行く

健二 「お前酔ってた?」

浩介、首を振る

健二 「じゃあなんでキスしたの?」
浩介 「だからわかんないって…」
健二 「俺のこと好き?」
浩介 「え?」
健二 「俺はお前のこと…好き…なんだ、けど…」

健二、頭を掻く

浩介 「え?」
健二 「なんか前々からそんな気はしてたんだよ。お前のこと見てたら、ぎゅーってしたくなったり、触れたくなったり…でも俺もお前も男だし。そんなことおかしいと思ってたんだけど…」
浩介 「……」
健二 「でも今日、お前が女の子と楽しそうに話してるの見て、なんかもう見てられなくて、そう思いだしたらもう止まらなくって。あー俺ホントに浩介のこと好きなんじゃんって気づいた…」
浩介 「……」
健二 「そしたら、お前が…キスしてきたから……お前もそうなんだと思って…」
浩介 「いつから起きてたの…」
健二 「いや、されて起きた」
浩介 「……」
健二 「やっぱ…気持ち悪いよな…ごめん…」
浩介 「気持ち悪かったらキスなんかしないよ…」
健二 「え?」
浩介 「え?じゃねぇよ!俺からしたんだろ!キス!」
健二 「あ、あぁ…」
浩介 「ばか!もう知らねぇ!」

浩介、踵を返して歩いていく

健二 「おいおい!ちょっと待てって!」
浩介 「待たない!」

追いついて隣を歩く健二

健二 「はははっ、浩介やっぱ可愛いわ」
浩介 「はぁ!?」
健二 「好き」

健二、軽くキスをする

浩介 「っ!おまえっ!」

浩介、顔を真っ赤にしてそっぽを向く

健二 「あははっ!まぁとりあえず帰ろうぜ」

浩介の手を取る

浩介 「な!お前誰かに!」
健二 「いいじゃんいいじゃん。こんな夜中にこんなとこに来てるの俺らくらいだって」
浩介 「でも」
健二 「嫌?」

健二、悲しそうな顔をする

浩介 「…っ!……好きにすれば?」

浩介、また顔を背ける

健二 「あぁ!もう!マジでお前可愛い!」

浩介、照れながら怒る



・河川敷

手を繋いで歩いている二人

健二 「あー、でもさ、俺こういうの好きだわ」
浩介 「こういうのって?」
健二 「女と男が手繋いでてもおかしくないじゃん?」
浩介 「?…うん」
健二 「女と女でもまぁ別に大丈夫じゃん」
浩介 「あぁ…まぁな」
健二 「でも、男同士だったら明らかに変に思われるだろ?」
浩介 「あ、あぁ…」
健二 「なんかいけないことしてる感じがして興奮する」
浩介 「はぁ!?お前何言って!」
健二 「浩介俺の性癖知ってるよね?」
浩介 「っ!……」
健二 「俺もお前の性癖知ってるし、そうなったらなんか楽しみになってきた」
浩介 「や、やだ!俺そういうの興味ないから!」
健二 「えー?俺は全然やってあげるよ?」
浩介 「…ぃ」
健二 「ぶっかけ」
浩介 「っ!だから!あれは二次元での話だろ!現実では」
健二 「あぁ、そっか、女の子にかけてるってことは、相手にするんだから、お前かけたいの?」
浩介 「おい!話を」
健二 「おれは別にいいよ?お前のだったら」
浩介 「聞けよ!」
健二 「ふふふ」

健二、楽しそうに笑う
浩介、青ざめる

浩介M「こいつの趣味は」

二人、河川敷を手を繋いで歩いて消えていく

浩介M「陵辱だ……」






おわり



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