第一章


・海岸

海を見ながら煙草を吸っている恵(けい)



・実家(回想)

自宅で父と言い争いをしている恵

父  「どういうことだ!?」
恵  「だーかーらー、金貯まったからもういいよっつってんの。俺明日から日本にいないから」
父  「何を馬鹿な…!お前はどれだけ」
恵  「じゃあね」
父  「待て!恵!」

父、恵が振り向きざまに左頬を殴る

恵  「っ…!」



・海岸

左頬を押さえる恵

恵  (あのクソ爺、俺の大事な顔を傷つけやがって…まだ痛ぇ)

恵M 「今俺はイタリアにいる。どうしてイタリアかって言うと、まぁなんとなく。とにかくあの家から遠くに行きたかった。優等生の兄貴とは正反対の俺を家の奴らは疎ましがっていた。それに加えてホモだってバレてもう大騒ぎ。金も貯まってたし、いい機会だと思って家を出た。最後の最後にあの鉄拳。まぁ迷惑料だと思えば安いもんか。どうせもう帰るつもりもないし」

恵  (さて、これからどうしよっかなぁー…)

恵、煙草を捨てて歩き出す



・L'ULTIMO BACIO前

石畳の上を歩いている恵
ハーモニカの音色(かえるの歌)が聞こえてくる

恵  (ん…?かえるの歌…)

店の前で立ち止まる
中を覗くと、銀細工のアクセサリーが並んでいる

恵  (ふーん。アクセサリー屋か…ルルティモ…バーチョ…)

恵、店の中に入る



・L'ULTIMO BACIO

店の奥からハーモニカの音色が聞こえる(かえるの歌)
アクセサリーを眺める恵

恵  (へぇ…手作りか…結構いいじゃん…でもなんだよ、このハーモニカ…)
男  「うまいうまい」
恵  (日本語?)

恵、店の奥を覗く
男の後姿と子供が見える

恵  (ハーモニカの練習か…あ…)

恵、子供と目が合うと笑う
子供、笑う
子供を見て男が振り向く

男  「あ、こんにちは」(イタリア語)

男、微笑みながら出てくる

恵  (うわー…綺麗な顔…日本人…か?)
男  「初めて見る人だね。あ…もしかして、日本人かな?」(イタリア語)
恵  「あ、あぁ」
男  「やっぱりー。観光?日本の人と話すの久しぶりだなー」

男、ニコニコしている

恵  (こいつ…日本語だと急に雰囲気変わるな)

恵、驚く

恵  「いや、観光ってわけじゃねぇんだけど。ここのあんたが作ってんの?」
男  「そうだよー。あんまり売れないけどね。へへへ」
恵  「そんなんで商売になんのかよ?はははっ」
男  「ここにはたまーにお客さんが来る程度でいいんだー」
恵  「へぇ。趣味でやってんのか…。俺これ、貰うよ。いくら?」

恵、シンプルな指輪を取る

男  「気に入ってくれたのなら、あげるよそれ。綺麗なお兄さんにプレゼント」
恵  「はぁ?たまにしか客こねぇんだろ?たまに来た客にタダで売ってどうすんだよ!」

恵、笑う

男  「いいんだよ。君に会えた記念に」

男、恵から指輪を取り、恵の左手薬指に指輪をはめる
軽くキスをする

男  「あれー?君指細いねぇ。ブカブカだ…」

男、困った顔をする

恵  「あんたいっつもこんなことしてんの?」

恵、また笑う

男  「?これ一応男物なんだよー?サイズ直し」

はと時計が鳴る

男  「あー、サイズ直ししてあげたいんだけど、今から出かけなきゃいけないんだー」
恵  「いいよ。ほら、中指だとぴったり。これでいいから」

恵、指輪を中指にはめなおして見せ、微笑む

男  「うーん…」
恵  「ほら、出かけるんだろ?俺はこれで失礼するから。これ、ありがとな!」
男  「また会えるといいね」

恵、店を出る
男、笑って手を振っている



・L'ULTIMO BACIO前

恵、空に手をかざして指輪を眺めながら歩く

恵  (いいもん貰った〜。しかし、あいつ綺麗な顔してたなぁ…俺より綺麗な奴みんの初めて。っつーか、やっぱこっちにいる奴はやることが違うねー。まっ子供もいるし、挨拶みたいなもんだろ。やっぱ日本とは全然違ぇや)

恵、楽しそうに歩く



・街

街中を歩く恵

恵M 「いろんなところを周って見た。それでも何かぱっとするものが無く、イタリアを離れようかと考えたとき、ふと初日に訪れたあの田舎町を思い出した」

恵、指輪を見る

恵  (最後にもう一度行ってみるか…)



・L'ULTIMO BACIO前

恵、店を見つけると走って来る

恵  (ここだここだ!って…閉まってんじゃん…)

扉にclosedの文字
ガラス戸から中を覗くが誰もいない

恵  (まっ、仕方ないか…)

恵、歩き出す



・海岸

煙草を吸う恵

恵  (次はどこへ行こう…)

子供が防波堤の上を歩いてくる

恵  (危なっかしいのー。つかどうやって上ったんだよ…この高さを…誰か)

子供、海に落ちそうになる

恵  「!危ない!」

恵、走って行く
ジッポーが落ちる
子供を抱きとめる

恵  「おいおいおい、大丈夫かよ…危なかったー…」
子供 「ははははっ!」
恵  「笑ってる場合じゃ」(イタリア語)
男  「これ落としたよ」(イタリア語)

声をかけられてそちらを向くと
男、恵のジッポーを差し出す

男  「あ!」
恵  「あ!あんた!」

男、ジッポーを手の中で見せる

男  「壊れちゃったね…」
恵  「いや、そんなもんはどうでもいいんだよ。あんた子供のことちゃんと見とけよ!海に落っこちたらどうすんだ!?」
男  「君が助けてくれたじゃない。ねー?」
子供 「ねー!」

笑う男と子供

恵  (なんだこいつら…まったく危機感がねぇ…)
恵  「はぁ…」
男  「これ、修理してあげるよー。ちょっと時間かかるけど、元通りになるよ」
恵  「……あぁ、じゃあ頼むよ」

呆れている恵

男  「じゃあお店に行こう?ちーおいで」

子供、男と手を繋ぐ
三人、歩き出す

恵  「ちー?」
男  「うん。ちー、自己紹介できるー?」
千尋 「うん!僕ねー、千尋(ちひろ)って言うのー。三さーい!」
恵  「へぇ。千尋か。お前女の子みたいな顔してんな」
千尋 「僕男の子だよー?」
恵  「はははっ!俺は恵。もうすぐ二十五さーい」
千尋 「あははっ!恵ちゃん?」
恵  「うん、恵ちゃん。で?あんたは?」
男  「僕?僕は春(はる)。えーと、もうすぐ?ん?ついこないだ?三十一歳になったよー」
恵  「え?!あんた三十超えてんの!?みえねぇ!同い年位かと思ってた…」
春  「ははははっ、ありがとう」
恵  「あんた吸血鬼かなんか?」
千尋 「え!?パパ吸血鬼なのー!?」
春  「そうだよー、ちーの血も吸っちゃうぞ!」

春、千尋を抱きしめる

千尋 「きゃー!アハハハハ!」



・家(リビング)

恵  「へぇー、裏が家なわけね。いいね、この雰囲気好きだなぁ…」

恵、家の中を見回す

春  「ちー、手洗ってきて」
千尋 「はーい」

千尋、洗面所へ

春  「恵ちゃんはその辺座っててー。コーヒーと紅茶どっちが好きー?」

春、キッチンの中に入っていく
恵、カウンターの前に座る

恵  「紅茶ー。ミルクで」
春  「はーい」
恵  「春さんはさー、こっち生まれ?」
春  「違うよー。生まれは日本。もうこっちに来て十年くらいかなー?あ、僕のことは春でいいよ?」
恵  「あ、そう?十年かぁ…ずっとここに住んでんの?」
春  「ううん。ここに来たのは五年くらい前。はい。どうぞー」

ホットミルクティーを恵の前に出す春

恵  「サンキュ」

飲む

恵  「あ、美味い…」
春  「ふふふ。僕、あっちでこれ直してくるから、ここでゆっくりしててー」
恵  「あっち?」
春  「うん。店の奥の工房」
恵  「え、それ俺も行っちゃだめ?」
春  「いいよ」

春、笑う

春  「ちー?僕工房にいるからー」

階段に向かって言う

千尋 「はーい!」
春  「じゃあこっち」

工房へ



・工房

春  「狭いから気をつけてねー。ここ、座っていいよ」

春、丸椅子を出すとそれに座る恵

恵  「ありがと。すっごいなぁ、なんか職人って感じ」
春  「そう?ふふっ、これ、使い込んでるねぇ。恋人からのプレゼント?」

春、眼鏡をかけ、ジッポーを修理する

恵  「んー、あぁ、昔のな。別に思い入れとかないんだけど使いやすいから使ってるだけ」
春  「これだけ大事に持っていられるとあげた人も喜んでるよきっと」
恵  「もう忘れてんじゃねぇかなぁ?」

恵、工房の中を見る
ガラス細工や銀細工が沢山ある

恵  「あ、なぁ。奥さんは?出かけてるの?」
春  「奥さんはねー、いないの。もう」
恵  「あ…そっか、ごめん」
春  「どうして謝るのー?」
恵  「いや、なんとなく…」

春、恵を見る

春  「お空にいるんだよー。随分前にね、行っちゃった」
恵  「亡くなったのか…」
春  「うん」
恵  「そうか…」
春  「あー、悲しい顔しないで?今は抱きしめてあげられないから、ね?」
恵  「は、はぁ?」
春  「今手が離せないのー」
恵  「あんたさ、この間も言ったけどいつもそんななの?」
春  「そんな?どういうことー?」
恵  「初対面の奴にキスしたりとか」

春、手を止める

春  「あぁ。嫌だったー?」
恵  「いや、別に嫌とかそんなじゃないけどさ、いいの?そんなので」
春  「はははっ。大丈夫、ちゃんと分かってるから。していい人と駄目な人」

また作業を続ける

恵  「…どういう意味」
春  「君は大丈夫な人でしょ?」

春、笑う

恵  「?」
春  「あれ?ちがったー?僕こういうのは外さないんだけどなー」
恵  「分かるって…」
春  「君の恋人は男の人でしょ?」
恵  「え…」
春  「外れてた?」
恵  「あ、いや、当たってるけど…なんでわかんの?」
春  「んー?どうしてだろう?考えたことないなぁ」
恵  「変な奴…」
春  「はははっ。よく言われるよ」



・工房

千尋 「パパー!」

声だけ聞こえる

春  「なーにー?」

工房の入り口から顔を出す千尋

千尋 「おやつはー?」
春  「あ、忘れてた!クラウのとこ行ってこなきゃ」
千尋 「僕行って来るよ?」
春  「一人では駄目。恵ちゃん、頼んでもいい?僕まだ少しかかりそうなんだ」
恵  「ん?いいよ。どこ行くの?」
千尋 「近くのねー、パン屋さん!クラウディオのパン屋さん!」
恵  「いいよー。わかった」
春  「ちー、お財布恵ちゃんに渡して、マフラー巻いてー」
千尋 「はーい。恵ちゃん、行こうー」
恵  「おう」

千尋、恵と手を繋ぐ

千尋 「じゃあね、パパ」
春  「うん。気をつけて」
恵  「いってきまーす」

春、手を振る



・クラウディオのパン屋(全イタリア語)

店に入る千尋と恵

千尋 「こんにちは!」
クラウ「おー、千尋。今日も元気だな!おやつか?っと…そちらは?」
千尋 「僕とパパの友達だよ。恵ちゃんって言うの」
クラウ「ケイ?初めましてケイ。君も日本人かい?」
恵  「初めまして。あぁ、日本人。いい匂い…腹減ってきた…」
クラウ「ハハハッ!なら今日はおまけしてやるよ!いつものケーキでいいのか?」
千尋 「うん!」
クラウ「ちょっと待ってろ」



・クラウディオのパン屋(全イタリア語)

クラウから紙袋を受け取る千尋

クラウ「ほら、これはおまけ。焼きたてだからな、気をつけろよ」

マフィンを受け取る

千尋 「わぁ、いい匂い。ありがとう!」
クラウ「春にもよろしく言っといてくれ」
千尋 「うん!じゃあね」

クラウ手を振る
店を出る二人



・街

石畳を歩いている二人
マフィンを食べる

恵  「うっわ、うめぇ…ふわふわ〜」
千尋 「ほんとだぁ…美味しいね〜」
恵  「お前イタリア語上手いな。こっちで生まれたの?」
千尋 「ううん。日本だよー。でもすぐこっちに来たんだって。覚えてないのー」
恵  「そっか、んじゃこっちで生まれたようなもんだなー」
千尋 「そうだねー。あ、恵ちゃん。ちょっとしゃがんでー?」
恵  「ん?」

恵、しゃがむ

千尋 「ここ、ついてるよ」

千尋、恵の頬についているマフィンのかけらを取って食べる

千尋 「ふふっ」
恵  「…お前…」
千尋 「んー?」
恵  「可愛いっ!」

恵、千尋を抱きしめてくるくる回る

千尋 「キャー!ハハハハッ!」



・家(リビング)

夕方、リビングのソファで眠っている恵
外からハーモニカの音と、笑い声が聞こえてくる

恵  「ん…」

目を覚ます恵

恵  「あれ…いつの間に寝てたんだ…?」

起きて伸びをする

恵  「んー!…ちー?」

声のするほうへ行く



・家(庭)

夕日の中、春と千尋が庭にいる
春、ハーモニカでLeaving on A Jet Planeを吹いている

恵  「I'm leavin' on a jet plane.I don't know when I'll be back again」

恵、ハーモニカに合わせて歌う
春、恵の方を見る

千尋 「あ、恵ちゃんおはよー」
恵  「おはよう。なんか俺の方が遊びつかれて寝ちゃってた。はははっ」

春、微笑む

春  「おいで」
恵  「?」

恵、傍に行く

春  「寝癖がついてる」

春、恵の髪を撫でる

恵  「…」

春、キスをする



・家(リビング)

恵、ソファに座っている
階段から春、降りてくる

恵  「ちー寝たー?」
春  「うん。これ、出来たよー」

恵にジッポーを渡す

恵  「お、サンキュー。ってめちゃくちゃ綺麗になってんじゃん!」
春  「磨いておいたんだけど、前の方がよかったー?」
恵  「いや、超綺麗!新品みたい!」
春  「ふふふ、よかった」

恵、立ち上がる

恵  「……じゃあ、俺そろそろ行くわ」
春  「え?」
恵  「ありがとな、楽しかったよ」
春  「…」
恵  「また会えるといいな」

恵、荷物を取りに行こうとする
春、恵の手を取る

恵  「っ…!な、なに…」
春  「君は素直じゃないね…」

春、腰に手を回して抱き寄せる

恵  「何が!」
春  「こういうのは外さないって言ったでしょー?」

春、笑っている

恵  「ちょちょちょ、ちょっと待てって!だってあんた、おく」

春、キスをする

恵  「…っ…ん…」
春  「…逃げたかったら逃げていいよ」
恵  「なっ!てめぇ…やり方が汚ぇぞ…っ」

二人、キスをする



・家(リビング)

恵  「ちょっと待て!なんで俺が下なんだ!」

恵、ソファに押し倒されている

春  「?恵ちゃん自分で動くのが好きなの?それならそれで僕はいいよ?」

春、体を反転させて恵を腰に乗せる(対面座位の状態)

恵  「これも違う!」
春  「なに、恵ちゃん入れる方なのー?」
恵  「そうだよ!」
春  「今までずっとそうしてきたの?」
恵  「あぁそうだよ」

春、恵の頬を撫でる

春  「一度もない?」
恵  「ない!」
春  「じゃあ僕が初めてだね…優しくするから安心していいよ」
恵  「会話のキャッチボールが出来てねぇぞ!んがっ」

春、恵の口に指を突っ込む

恵  「にゃに…?」
春  「濡らすものが無いから舐めて」
恵  「ん…だから…はなひが…」

言いながらも恵、舐める

春  「ふふっ…恵ちゃん舐めるの好きでしょ?」
恵  「んー?…好きだよ……ん…でもそれとこれは別だろ…」
春  「そんなに嫌ー?」
恵  「だって見た目的にもあんたの方が下でしょうよ」
春  「やってみないとわかんないでしょ?」
恵  「なに、自信満々だな」
春  「後悔させない程度には…」

春、恵のジーパンの前を開けて、恵に手を伸ばす

恵  「んっ…ちょっと…ずるいって…!ぁっ…」
春  「だーめ、指ちゃんと舐めてて」
恵  「…っ…ん……手…だめだって…」
春  「ふふっ」
恵  「なに…笑ってんだよ…っ…」
春  「かわいいなぁと思って」
恵  「てめぇ…絶対俺が入れてやる…!」
春  「また今度ねー」

春、恵のジーパンを半分ずらし、恵の口から指を抜いて後ろに回す

恵  「うわっ…ちょっと!……ぁっ…ん!」
春  「ほら、入ったー」
恵  「入ったじゃねぇ!…こ…の…ッ」

春、そのまま体を入れ替えて恵をうつ伏せに寝かせると後ろから覆いかぶさる

恵  「っ…ちょっと……ぅぁ…くそッ…」
春  「ほら、良くなってきたでしょ?」
恵  「よ、よくなっ…ぃ…っん…ぁあ!」
春  「うそつき。こっちはいいって言ってるよ…ほら、すごい濡れてる…」

春、恵の前を擦りながら笑う

恵  「ぅるさ…い!…なん、で…俺が!…こんな…っ…ぁぁぅ…ぁっ!」

春、耳元で囁く

春  「恵、愛してる」

春、恵の中に入る

恵  「え、あ、ちょっとっ…ん!っ…こら、勝手に…ああ!…入ってくんな!…んぁぁあ」
春  「恵」
恵  「はっ…ん…ッ…や、め…っ!…ぁぁ」
春  「ふふっ、君ホントに可愛いね。今までしたことないなんて、君と出会ってきた男達は皆損してるよ…」
恵  「ばかっ…なんで俺が…!ぅぁっ…こんな…こと…っ!」
春  「もっとその可愛い声を聞いていたいんだけど、ちーが起きちゃうかもしれないから」

春、恵の顎を引いて無理やり後ろからキスをする

恵  「んっ!んんっ!…はぁ…ん…っ…う…んっ!」
春  「…ん…っ…」
恵  「んはぁっ…おねが…い…っ!…もう…おれっ…」
春  「んー?」
恵  「あん…た…っ!…わかって…やってんだろ…っ!…あぁ」
春  「ちゃんと言って?」
恵  「くそっ…さい、あく…っんあ…もうっ、イかせて…お願いっ…あぁ」
春  「ふふっ…良く出来ましたー…ん…」

キスをする

恵  「んっ!ん!んー!…ん、んぁっ…んー!」
春  「っ…」
恵  「んっ…っ…はぁ…はぁっ…はぁ…」

軽くキスをする春

春  「後悔するほど嫌だったー?」

春、笑っている

恵  「今…それを聞くのか…っはぁ…あんた…ほんとに性質悪いって…」
春  「ふふふっ、おいで」

春、恵を抱きしめる

恵  「ん…なぁ…なんでこんな中途半端なままするの」
春  「中途半端?」
恵  「服、なんで脱がさないのよ?」
春  「あぁ、それはただの趣味でー」
恵  「…」
春  「そっちのがいいでしょ?」
恵  「…人って見た目で判断できないね…」
春  「どんなだと思ってたのー?」
恵  「もっと何にも知らない感じで…」

春  『だめだよ恵ちゃん…上でちーが寝てるのに…こんなっ…』
恵  『あんたが静かにしてたら起きないよ…』
春  『ぁっ…だめっ…恵ちゃんっ…』

恵  「こんな感じだと思ってたのに…」
春  「はははっ、でもちゃんとちーが起きないように配慮してたでしょー?」
恵  「なにが配慮だ、このエロ親父め…」
春  「この素直じゃない口、大好きだよ…」

春、恵の唇をなぞる

恵  「なに…」
春  「もっと啼かせたくなる」

キスをする

恵  「馬鹿!シャワー浴びてくる!どこ!?風呂!」

恵、春から逃れて立ち上がる

春  「あはははっ!ちゃんと僕が洗ってあげるよ。おいで」

春、恵を抱き上げる

恵  「うわ!どこにそんな力あるの!?」
春  「ごめん、お風呂までに力尽きるかも…」
恵  「あんたホントに馬鹿だな」

二人、笑う



・家(寝室)

鳥の鳴き声が聞こえる
ベッドで三人が寝ている

千尋 「んー…ん…あ……」

千尋、目を覚まして恵を見る
恵、目を覚ます

恵  「ん…?」
千尋 「よかったぁ…恵ちゃん僕が寝てる間に帰っちゃうかと思って心配してたんだ」
恵  「ん…あー、うん…まだいるよ」
千尋 「パパとうまくいったの?」
恵  「え!?」

春、目を覚ます

春  「ん…なにー?どうしたの…?」
恵  「え?あ、いや…」
千尋 「あれー?違うの?」
春  「何が違うのー?」
千尋 「パパ、恵ちゃんに好きって言ってないの?」
春  「言ったよー?ねぇ、恵ちゃん」
恵  「え!?言った…?」
春  「言ったよー、昨日入れる前─」
恵  「あー!言った!言ったな!言った言った!」
千尋 「?」
恵  「言ったよ、ははは…」
千尋 「恵ちゃんはパパのこと好きじゃないの?」
恵  「え…あの…」

恵、春を見る
春、笑う

恵  (親子そろって同じような顔して笑いやがって…)
恵  「好きだよ…うん」
千尋 「そっかぁ!じゃあ恵ちゃんずっとここにいる?」
恵  「ぁ…」

言葉に詰まる恵を見て、一瞬悲しげに微笑む春

春  「…。ちー、朝ごはん食べよう。顔洗ってきて」
千尋 「?はーい」

千尋、ベッドから出て洗面所へ向かう

恵  「…」
春  「恵ちゃん、好きなだけここに居ていいから」

春、キスをしてベッドから出る

恵  「…あぁ…」

恵M 「春が言いたいことは何となくわかった。好きなだけ居てもいいってことは、いつ出て行ってもいいってことだろ?」


第二章

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