○黒番外 | ナノ






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仕事の帰り道、車中で。助手席に座ったアンナが声を殺して泣き出した。決してアンナが悪いとか、オレや他の団員が叱ったとか、そんなんじゃなくて。オレはそんなに気にしなくても、やはりコイツは酷く傷付いたんだろう。いや、そもそもの原因が何かとかそんなもんどうでも良い。

頼むから泣き止め、そう思っても言い出せなくて。

車に乗り込む前に他の団員から気にするな、なんて声をかけられ、困ったような、泣きそうな顔をしていた。それでも苦笑いして、気丈に振る舞っていた。しかし、ギュッと拳を握りしめ、肩を震わせ、軽く唇を噛み締めて自虐的に笑っていたのはバレバレ。その姿があまりにも痛々しく、アンナの手を掴んで引っ張り、助手席へ押し込んだ。そして、案の定。車に乗った途端このようすだ。



「帰りにどこか寄る?」

『‥…ううん、』



早く帰って手当てしよう、と呟くアンナにまた何も言えなくなる。

そもそも、事の発端はこうだ。

今日の仕事で厄介な能力者と遭遇してしまった。然程手こずるような相手では無かったが、捨て身の策だったのか敵は一番身体の小さいアンナを集中して狙った。アンナは持ち前の体術とナイフで避けていたが、隙を見つけてアンナがとどめを刺そうと大きく振りかぶった時だった。流れ弾がオレの左脚を掠めてしまった。

その時に流れ出た血を見て、アンナは顔を真っ青にして混乱していた。

アンナが自分を責めているのは表情を見てすぐにわかった。自分が全て敵の攻撃を遮っていればオレが怪我をすることは無かったとでも思っているのだろう。アンナに責任はない。アンナに全てを任せて気を抜いていたオレが悪いのに。

どうせホームに戻れば、普段通りに馬鹿みたいな笑顔を野郎共に振る舞って、今晩あたり、一人で隠れて泣くんだろうな。損な性格だよ、お前は。



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