無 常 感 初対面の人によく聞かれるのは今どんな気持ちなのかって。私の気持ちはどうも掴み難いらしい (私は猫被りらしい) (失礼しちゃうよね?) ザザザァッ───… 三ケ月が経ち、何日も食事を喉に通してない。いつの間にか激しく降り始めた雨に打たれ、長い髪が頬に張り付く 「お嬢ちゃん、風邪を引いてしまうぞ?」 ガレキの上で座っていた私の頭に影が出来る。見上げると小柄な老人が私に傘を差し延べてた。 ダッ────… 直ぐに立上がり逃げ出そうとガレキを蹴る。刹那その老人が私の服の端を掴み静止させた。 「ほら、ただの爺さんに警戒せんでも良い」 『(………!!)』 どんなに力を込めて引っ張ってもビクともしない。老人はソレを見て少し笑い、外されていた傘を再び私の頭に被せた。 「いい目をしておるが、名前は何というんじゃ?」 『……カンナ、』 一向に手を放そうとはしない様子を見て、少し悩みながらも名乗った。やっと手を放されたが逃げようと思わない。指だけであの力だ、逃げても況はむしろ悪くなるだけだろうから。 「家に帰らんと家族が心配するんじゃないか?」 心配、してくれればいいけれど。にこにこと微笑みながら質問を投げてくる。過失は不明だが私は間違いなく自分から家を抜け出して、自分の足でこんな遠くまで来た筈だ(返事もしないでうつ向いた理由はソレ) 「なら、ワシの所に来て働くのはどうかの?」『……働く?』 きょとんとして老人を見ればやはり笑顔だ。人差し指がちょこんと私の目の前に立ち、どうじゃ?と問い掛けた。呑気に長い髭を撫でながら答えを待っている。 「お前さんが鎖から放たれたいのならの話じゃが」 ───…強くなれる ───…自立出来る ピクッとその言葉に私の肩が揺れたのがわかる。その条件が揃う中、私に断る理由なんて無い。 『……貴方は?』 「ネテロ、じゃ」 いつの間にか雨は小雨になり、周りが良く見える。ガレキの上で過ごす私に此から何も出来ない事。ネテロという奴の澄んだ瞳に嘘はないだろう。 『……貴方に着いて行けばうんと強くなれるの?』 「さあな、それはお前さん次第になるのう」 私さえ頑張ればこの爺さんみたいに強くなれるなら、やっぱり私には断る理由なんて一つも無い訳で。差し出された傘を受け取り、改めて会釈した後、頬に張り付いた髪を退けた。重い腰を上げた頃には爺さんはもう進んでいた。 ×
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