何時もの悪夢 『あ、──=x 両手一杯に赤と白の薔薇の花束をを抱え、鼻歌混じりに庭を歩く少女が一人。木陰で身体を休めるように座るもう一人の少女を見て、駆け足で近くまで寄った 『──≠烽ヌう?母様と薔薇を摘んだんだ』 「いらない」 明るく話しかける少女を見て、座っていた少女は不服そうに片眉をピクリと動かす。 だが直ぐに無表情になり、綺麗な薔薇どころか少女にも見向きもしないで立ち上がった。一言だけ呟かれ後、薔薇の少女へ首をかしげる仕草を見せ。ほら、と手を差しのべる。 「触るな」 『痛ッ…』 パシンッ───… 手を取ろうとした刹那、乾いた音と共に薔薇の花びらは無残にも芝生の上に散らばる ああ、この子は私 ああ、この子も私 私は驚いた顔をして少女を見た。その子は冷たい目で私を見下し花びらを踏みつける。同じ容姿に同じ瞳の色、同じ声色。目の前の少女も間違いなく幼少時代の私のようだ 「気安く私に触るな」 『え、でも……』 私は私に払われ、ジンジンと赤くなった手を見ながら地面の紅い紅い花びらを見た。同じ私の筈なのに目の前の私の瞳は何処か冷たく重味のあり、私を一点だけ捕らえる 「今度私に触れてみろ、指を切り落としてやる」 吐き捨てるように言った私の言葉に私は自然と涙を溢す。目障りだから泣くなら人目の着かない所で泣け、とでも言わんばかりに睨まれた。蛇に睨まれた哀れな蛙のように私の足も手も口も目も、動かずただ棒立ちしているだけ 「この場面を父様に見られたら私の身はどうなる?」 只一言。ごめん、と言い残して私は私から離れる。薔薇を地面に置き、袖で涙を拭いながら急いで裏庭へとがむしゃらに走った。目の前の私は悪ぶれた素振りを見せる事は無く、私の置いた薔薇を足で蹴りあげる。 「出来損ないめ」 私が私への憎しみを搾り込めたようにポツリ、とそう呟かれる声が頭に響いた。払われた時に薔薇の蕀に指が当たったのだろう。私の一筋の鮮血か指を伝っていた タ イ ヒ シ タ シ ロ ノ バ ラ ×
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