白翼長編 | ナノ





「・・・集中しないと」

『ぁ、・・っ・・・、んっ・・』



キスに集中しろという言うが、一体どう集中すればいいのか。ぬるりと這う舌に指先ひとつ動かすこともできなくなる。歯列をなぞり、逃げる舌を否応無しに捕まえ絡める。こんなのしらない。どこで彼はこんなことをしったのだろう。

逃げても逃げても絡め取られ
、いつの間にかイルミの中に引きずり込まれていく。

いつもいつもズルいと思う。きっと自分の知らない所で覚えたキスを、私に与えるんだ。そして狂わす。



「逃げるなら、いまだ」

『・・・っ・・』

「もう戻られない。オレたちは兄妹の一線を越えて、罪悪感もなにもかも一生抱えて、生きてくんだ」

『・・・罪悪感なんていまさらでしょ、・・・ってイル兄が言ったんだよ・・?』

「・・・そうだね、」



強く奪うように吸われたと思えば、今度はゆっくりと甘いものになる。いつの間にか力の抜けてガクリと落ちた身体を、腰にまわされた腕で支えられていた。



「スキだよ、ずっと」

『・・・っ・・、・・・』

「きっと、カンナが思ってるよりオレはずっとずっと汚い人間だ。こうしたくて……、自分のものにしたくて堪らなかった」



甘い、まるで熱で砂糖を溶かすようなキスかと思えば、獣を思わす情熱的なものになる。初めは足掻いてみるが、すぐに熱にやられて思考がぼんやりとしてくる。

幸せなのに、泣きそうなのはなぜだろうか。もう何も考えたくない。いまはただ、この時間に少しでも没頭できればいい。このまま熱にやられて、溶けてしまえばいいのに。そう思いながら、瞳を閉じた。


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