白翼長編 | ナノ





「これを見ろ」




シルバが取り出した端末から流れる映像。

薄暗い広いホールで二人の人物を移した映像だった。ナイフを握る少女はカンナそっくりだが、少し幼いように見える。手慣れた素早い動きで、すぐにいつか見た、カンナの双子の片割れだということがわかった。

仮面を付けているのがカンナだろう。カンナの指先からうっすらと発光する物体が、少しずつ手の平ほどのキューブになる。映像の中のカンナに、行ってはだめだ、と叫びそうになった。相手は格が違う。



「ミルキに復元させた、カンナが双子の片割れに刺された時の映像だ」

「……」

「奴はかなりの使い手だ。体術、剣術、そして一番オレの興味を誘ったのは消す≠ニいう能力。映像の最後、大きな岩の扉を消している」

「……特質か、」

「この映像を見るまでお前とカンナをどう引き離すか、考えていた。しかし、これを見て少し気が変わった」

「……見方してくれるの?」




仕方がない、とも言うようにシルバはため息をつく。

―――――悪魔の最高傑作は想像よりも艶がかっていた。

今は旅団にいて、そこの頭からの溺愛を受けているという情報もある。旅団は危険だ。あの掴みようのない集団のナカで、今以上に磨かれるのは時間の問題。なにより、奴はカンナのことを相当恨んでる。




「だがお前がカンナに無理強いをすれば話は別だ。カンナがお前に惹かれたのなら、オレに止める権利はない」

「それなら大丈夫、うまくやる」

「くれぐれも、キキョウに知られんようにしろ。あれが知ればただじゃすまん」




カンナが仮面をしていたから、片割れは殺さなかった。次に会った時、カンナを見たら確実に殺される。奴は格が違う、カンナには絶対にかなわない。




「お前がカンナを守れ」

「はいはい、」




言われなくたって、そんなこと百も承知。


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