白翼長編 | ナノ










私は今とある屋敷の屋根にいた。見下ろした部屋に仕組んであった盗聴器の音声が、片耳のコードレスイヤホンから聞こえる。侵入者と思われる女性の一人言が聞こえる。一人で仲間を待っているようだ、殺るなら今しかない。





『…満月、か』





空に浮いた球体。漆黒の闇に光る一点は私を何時になく憂鬱にさせた。殺りたくなくても殺らなきゃならない。まずはこの女性から、次は集まってきた仲間を。仮面を外れないように被り直し、小さな深呼吸。





『…満月嫌いなんだよね』





奴が顔を晒す日は足元が照らされ、夜の仕事には向かない。成功しても失敗しても空を見れば必ず満月は見てる(何処に居ても見透かされてるみたいで)今日の真実も満月だけは全て見てる。

窓に、足を掛けた。






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