気紛れ アスチルべ 泣いて縋ってそれでもあなたは逝ってしまうの でしょう 『見事に丸コゲ、だね』 焦げた瓦礫だけになった屋敷の前にいた。手入れの行き届いた花壇も、バラの通路も、何もかも面影がなくなっている。不思議な事に未練の欠片もなく私の目は冷ややかに真っ黒の野原を見下ろす。ガシャガシャと地面に転がった炭を蹴り、焼け跡の中心あたりに小さなチェーンを見つけた。 『うんしょっ…‥』 ギギギィ───… 力任せに引っ張ると、重たい音と共に地下への階段が顔を出す。5年振りの地下室はやはり少し埃ッポクて。有無を言わず私は一番に階段を降りた。 「罠は?」 『多分…、ない』 シャツを捲って見せた。腰の辺りに描かれていた刺青タトゥー。蜘蛛の巣を象ったソレの左端に這っている一匹の小さな蜘蛛。推測だけどコレが宝物庫。 |