色彩 コンチェルト 『……ねぇ』 一週間後 手元に残った空のコップを眺めていた。今まで満たされていた水は彼女が練を行う事で、一滴残らず何処かへ消えてしまった。彼女のオーラが吸収し、まるで砂漠が僅かな水分を欲したように。残ったのは枯れた小さな葉っぱが一枚だけ。 『水の量が変わる、のは強化系って言ったっけ?』 結局散々嫌がった念も、あれからスイッチが切り替わったように訓練をするアンナ。目的は一つ。彼女が相棒を復活させる為だけに、クロロとの訓練時間以外も念の修行をしている事を一部の団員は気付いてる。 「意味が違う」 『これって何系?』 「特質系、だな」 紙に書かれた属性を示す六性図の一番下を指差す。強調するようにペンでコンコンと叩く彼を見て、あからさまに嫌な表情の彼女。クロロの方は「やっぱりな」とでも言わん顔をして空のコップを持ち上げた。 『つまらない』 「そうか?」 『期待外れ』 「お前はレアってことだ、もっと自信もて」 ウボォーがやった時、もの凄い勢いで水が増していく様子を見たからだろうか。何のへんてつもない、只コップ内の水が消えただけの変化が気に食わないようだ。 「残りの三週間までにオリジナルの技を作ってこい」 『……で?』 「実戦で使えるか、団員にテストをしてもらう」 三週間後は確か、調度お宝探索への出発の日だ。実戦で使えるという事は少なくとも、攻撃が出来て尚且つ自分の身を守れる技。念を使う相手には体術だけじゃカバー出来ない事くらい理解出来た。 「他人に守られないとならないようなら、置いていく」 今日は終わりだ、と言い残して建物に戻るクロロ。別に期限以内に会得しなくても私は一人でも実家に向かうつもりなんだけどな。どうせ他に行くところなんてないし。 『特質系、か』 ペタンッ───… クロロが見えなくなってから、疲れきった身体を地面に落とし空を見上げた。手を伸ばせば届きそうな程に大きな月が空に浮き、漆黒に一点だけの輝きを灯す。汚れのない、万人を魅力する月。 『……一番良くわかんない系統だと思うんだけど』 父様は放出系、母様は具現化系だと思ったけど。特質系が天性的な事や育った環境によるモノだって説明されたから納得はいく。よくわからないけど、努力でどうこう出来るって事は具現化系も操作系も会得できる筈。仕組みが難しくて理解し難いだけで。 『……会いたいな、』 汗ばんだ額に張り付いた髪を祓い、ポツリ、と枯れそうな声で呟いた。一人になれば嫌でも思い出す銀色の髪、白い煙、煙草の匂い、自分より大きな背中。 |