優しい青年 只流れるだけの時間が流れついたら何処に辿り着くかなんて、マリオネットには知りっこないの (全て運命だから失敗なんか存在しないの) 「最近来た少年探してるんだけど、知らない?」 ゴミや瓦礫の上で雨にうたれている少年に傘を差し延べる必要などないだろう。ここの住民に同情なんて必要ない。 「アレ、オレの声聞こえてなかったのかな?」 ゆっくりとこちらを見上げた顔は整ってはいるが、中性的で性別の判断に迷う。くりくりとした大きな目はまるで薄い霧がかかったろうに曇っている。 『…さあ、知らない』 それだけ告げると帽子をより深く被り直し、地面に視線を戻した。透き通ったソプラノ調の第一声はまだ声変わり前の少年を思わせる、汚れない純白のシルクのような柔らかい声だ。 「なら仕方ない、又の機会があれば教えてよ。礼はするからさ」 ガチャッ───… わざとらしい、瓦礫の乱暴な崩れる音で咄嗟に後ろを振り返ると仲間だろうか、一人の少年が立ち落ち着いた素振りで帽子の少年のすぐ隣に腰を降ろした。 『───…ねえ』 帰ろうとしたクロロにふいに帽子の少年が呼び掛け、振り向いた先には未だに微動だにしていない二人、帽子の少年は笑うことのない瞳のまま口元だけ上に向けて口を開く。 『ソイツ見つけて一体なにするつもり?』 ───…異様だ 感情がないと言うよりも本当に彼自身死んでいるようで、良く出来た操り人形が話しかけてくるような不快感と嫌悪感が背筋をゆっくりとなぞった。 「別にどうもしない、興味があるだけだけど」 試しに少し殺気を放ち、彼等の顔色を伺った。やはり微動だにせず、こちらの答えを待って逸らさないでいる霞んだ瞳孔に恐れは感じられない。感情を殺しているのか、やはり人形のようだ(けれどその瞳の奥に何かが隠れてる気がする) |