『‥、ン…‥』 夢を見た。夢の中の私は自分が誰だかわかってなくて、記憶は何一つない。 誰もいない高原で一人ポツン、と座ってる。ずっと遠くの方で誰かが私に手を振った。何も考えずにそのヒトに向かってあるく。その高原はすっごい良い香りがする。綿に包まれてるような浮遊感。あったかいし、気持ちいい。 『‥…ンぁ、?』 ズシリ、────… あの幸せな風景が真っ黒になった。だるい、てか重い。あぁ、あれ夢だったんだ。あれ、なんで布団で寝てんだろ。しかも私のよりフカフカしてるし、懐かしい香りがする。そいえば熱も下がってるみたい。ん、昨日? 『‥…っぬあ!』 「うるさいぞ」 『起きてんじゃん、どいて、苦しい!!』 キノウ、ワタシ、ダンチョウト─────…! 「まだ眠い」 胸板に抱き寄せてくるクロロの鼓動は、トクトクと規則正しくやけに落ち着いていた。 『ちょ、離して』 「なんで?」 太 股 に な ん か 当 た っ て る も ん ! 彼も裸、自分も裸、シーツは一枚。服はわからない。シーツにくるまって彼のクローゼットから服を借りるか、否、果たして彼がそれを許すか。 『‥や…、ることが‥』 「なんだ」 『‥…だ、団員への挨拶も、仕事のやり方の理解も。念の訓練もしたいし、調べたいコトも沢山あるし‥』 彼の顔は笑ってるのだろうか、私の視界はまだ真っ暗なまま。 |