例えば君は、 例えば私が、 なんの取り柄もなくて この能力がなかったら 貴方はきっと見向きもしなかった? パタリッ───‥ 説明を受けた後、彼が出ていってからどうしても眠れない。体調も回復し、久しぶりの夜空を眺めようと部屋を出た。 「‥やぁ☆」 出たな変態ピエロめ 扉を開けてすぐ、壁にもたれていた彼を見て私の眉間に深く皺がよる。なびくサラサラの髪。整った顔立ち。一瞬誰だか戸惑ったが、強調された語尾に彼≠セと認識する。 『今日はフェイスペイントしてないんですね』 「入団おめでとう、これからヨロシク☆」 『…どうも、』 握手を催促された手に見向きもせず、私は屋上へ向かう階段を探しに歩き出す。コイツとは切実になるべく関わりたくない。しかし横切った所で、彼は私の腕を掴む。ギロリと睨むと逆に嬉しそうに笑われた。 「クモの事、詳しく教えてあげるよ。僕も団長がどうやって眠り姫を目覚めさせたのか、気になってたし‥◇」 顎のラインを指先でなぞられる。いくら顔が良い男だからって気持ち悪い。私は不快感に湧き出る吐き気にうつむく。 |