奇術師 と 小悪魔 『……どうしよ』 落ちたのが河だったから、ある意味助かったのかもしれない。いつの間にか岸の方に流れついていたらしく、意識が戻った時、視力を失っていることに気づいた。 「…おやおや★」 ガサリ、と草の揺れる音がする。熊だったらヤだな。死んだふり死んだふり。 「どうしたのかな、こんなトコに小悪魔さん…◇」 ああ、可笑しな人に捕まっちゃったかもしんない。 『…だれ?』 「ボクは只の通りすがりの奇術師、君の名前は?」 『知らない奴に名前は教えない主義なの』 やっぱり可笑しな人に捕まっちゃった。通りすがりの奇術師、なんて胡散臭いんだ。人に名前を聞く時はまず自分から、なんて言うけれど。自己紹介させておいて敢えて私は名乗りません。 「目が見えないのか…◇」 『……』 「寝ちゃうの?」 『……多分、』 リバウンドだな。瞼がどんどん重くなって、思考にもフィルターが掛かる. 「いいの?ボク君を殺してしまうかも知れないけど★」 ちょっと危ない可笑しい人は恐らく私の翼をまじまじと眺めているだろう。何となくだけど、視線を感じる。別に、死ねるなら是非とも今すぐ殺して欲しい。 「‥…変な人◆」 良く言われるけど、あんたには負ける、───… 「ホントに寝ちゃった☆」 思考が止まると共に背中の翼は灰になり消えていく。クスリ、と意識を飛ばした彼女を見て微笑む。ヒソカはアンナを抱き抱え、森の奥へと消えた。 |