放課後、いつものようにふたりでの下校。先に門で待っていたフィンクスに小走りで駆け寄るも、明日提出の宿題に必要なノートがないことに気づく。 『あ!』 「どした?」 『数学のノート教室だ。ちょっと取ってくるね』 「走んな、こけっぞ」 『大丈夫だよっ』 小走りでまた校舎に向かいながら、今日は土曜の映画のお礼を言って、また感想を言い合おう、と考える。 かけらのなかに まぎれてしまった 見つからない答えは、ごちゃごちゃな思考の中にまぎれていて。そこから取り出そうと手を伸ばしても、みつかることはない。 「あ、アンナちゃん」 『いまから部活?』 「うん。というか、ちょうどいまアンナちゃんの話ししてたんだよ」 『わたし?』 「アンナちゃんってさ、」 机の中に残っていたノートを鞄にいれる。今から部活にいく子達数名、ジャージ姿のクラスメイト。普段あまり話すことのない子達からの問いに、何事なのかと足を止める。 「ーーーフィンクスくんと付き合ってるの?」 ピタリ、と自分の中での空気が止まる。目の前には、興味津々、とでも言うような期待と好奇心に満ちた目をしたクラスメイトたち。 付き合っている? それは私が聞きたいことだ。私だって、わからない。毎晩、その質問に関して自問自答を繰り返しているんだ。 「よく一緒に帰ってるし、土曜もふたりで映画行ってたでしょ。見ちゃったんだ」 『あ…、えっと…』 「最近ウワサになってるよ」 『そうなの?』 「てっきり、隣のクラスのシャルナークくんといい感じなのかと思ってたから。ほら、前に教室に会いにきてたし」 「そうそう。ワイルドでちょい悪なフィンクスくんと、大人しいアンナちゃん。けっこー以外な組み合わせだもんね」 ツキン、 ウワサになってる? ツキン、 以外な組み合わせ? 『あ、フィンクスは元々、昔からの幼なじみで……』 「え、じゃあ付き合ってはないの?」 『えっと、その…、わたしは、』 わからない。 『わたし…、たちは…』 わからない 私とフィンクスは ただのオサナナジミ? ただのオサナナジミだ、と言ってしまえば、私の気持ちを否定することになる。私はフィンクスが好きだ。きっとどうしようもないくらいに、好きだ。 でもフィンクスは? フィンクスはどうなのだろう。好きとは言ってくれたけれど、たぶん、と言っていたし。 「ーーー付き合ってるぜ、」 ぐるぐるぐる、と頭で思考が交錯している中で、教室に放たれた低音。ふりむけば、にっ、といつものように笑うフィンクスの姿。 『……ぁ、』 「こいつ照れ屋だから、秘密にしてんだよ。そんでもって、口下手だし、あんまり責めてやんないでくれ」 「あっ、ごめんねアンナちゃん」 『ううん、』 「ほら、帰っぞ」 手を掴まれ、そのまま引かれ、なすがままに歩く。 いま、私はどんな顔をしているだろうか。頭の中が真っ白になって、頭の中でぐるぐると疑問ばかりが回り続ける。 いつからフィンクスはいたのだろうか、さっきの言葉の意味はなんなのだろうか。 |