マチの言葉に、イチゴミルクを思わず吹き出しそうになってしまった。 「それおかしくない?」 『えっ、』 フィンクスに好きだ、と言われた日の出来事を報告すると、はじめはまるで自分のことのように喜んでくれたマチ。しかし、付き合っているかどうかはわからない、と告げると一気に眉間を歪ませ、強い口調にかわった。 「そういうのはキチンと確認しないと、後々になってからじゃ遅いんだよ?!」 『えっ、でも、』 そんなのこっちから聞けないよ、と言えば、マチはまたぷんぷんと怒りだす。 「……アンナはさあ、もっといろんなことに警戒心もったほうがいい」 『警戒心?』 「変なことされたら、すぐ言うんだよ。あたしがボッコボコにしてやるからね!」 『…う、うん、』 ぐっ、と拳を握るマチに何も言えず、静かにイチゴミルクを飲む。フィンクスは変な事をするわけはない。一体なにを警戒するのか、わからないまま下を向いた。 つかまえられなかったのは とてもざんねん きちんと確認を取るべきだった、曖昧にしてしまった、私の責任は、 「ーーーーそういうことだから」 「あぁ、」 フィンクスの席の近くに立っていた、スラリとした女の人。上級生だろうか、いや、どこかで見たような気がする。 「もう予鈴が鳴るわ、悪いけど放課後に話せる?」 「仕方ねえだろ、」 「じゃあ、放課後に」 幼児体型な自分とは大違いだ。サラサラと風に揺れるショートカット、整った鼻筋、嫌みのない大人の雰囲気。 彼女が立ち去ってから、少し呼吸を置いて席につく。何事もなかったように。 「悪いけど野暮用だ、今日は先に帰ってくれ」 『あ、うん、』 理由は、言わないんだ。 さっきの女の子は誰なんだろう。どこかで見たはずだが、なかなか思い出せない。 「どした?」 『えっ、』 「さっきから、すげー変な顔してっぞ」 『えっ、うそっ、ちょっと思い出せないことがあって、考えてたの』 もやもやと胸の中が曇っていくのを感じながら、必死に思い出そうと頭を働かす。当の本人であるフィンクスは、いつもとなんらかわりなく、退屈そうに窓の外を眺めていた。 付き合う、ってなんだろう。 彼氏と彼女ってなんだろう。 NEXT |