貴方の 2 | ナノ



マチの言葉に、イチゴミルクを思わず吹き出しそうになってしまった。



「それおかしくない?」

『えっ、』



フィンクスに好きだ、と言われた日の出来事を報告すると、はじめはまるで自分のことのように喜んでくれたマチ。しかし、付き合っているかどうかはわからない、と告げると一気に眉間を歪ませ、強い口調にかわった。



「そういうのはキチンと確認しないと、後々になってからじゃ遅いんだよ?!」

『えっ、でも、』



そんなのこっちから聞けないよ、と言えば、マチはまたぷんぷんと怒りだす。



「……アンナはさあ、もっといろんなことに警戒心もったほうがいい」

『警戒心?』

「変なことされたら、すぐ言うんだよ。あたしがボッコボコにしてやるからね!」

『…う、うん、』



ぐっ、と拳を握るマチに何も言えず、静かにイチゴミルクを飲む。フィンクスは変な事をするわけはない。一体なにを警戒するのか、わからないまま下を向いた。





つかまえられなかったのは とてもざんねん
きちんと確認を取るべきだった、曖昧にしてしまった、私の責任は、






「ーーーーそういうことだから」

「あぁ、」



フィンクスの席の近くに立っていた、スラリとした女の人。上級生だろうか、いや、どこかで見たような気がする。



「もう予鈴が鳴るわ、悪いけど放課後に話せる?」

「仕方ねえだろ、」

「じゃあ、放課後に」



幼児体型な自分とは大違いだ。サラサラと風に揺れるショートカット、整った鼻筋、嫌みのない大人の雰囲気。

彼女が立ち去ってから、少し呼吸を置いて席につく。何事もなかったように。



「悪いけど野暮用だ、今日は先に帰ってくれ」

『あ、うん、』



理由は、言わないんだ。

さっきの女の子は誰なんだろう。どこかで見たはずだが、なかなか思い出せない。



「どした?」

『えっ、』

「さっきから、すげー変な顔してっぞ」

『えっ、うそっ、ちょっと思い出せないことがあって、考えてたの』



もやもやと胸の中が曇っていくのを感じながら、必死に思い出そうと頭を働かす。当の本人であるフィンクスは、いつもとなんらかわりなく、退屈そうに窓の外を眺めていた。

付き合う、ってなんだろう。
彼氏と彼女ってなんだろう。



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