付き合う、ってなんなんだろう。そもそも私たちは付き合っているんだろうか。 特別な存在、だとか。独占したくなる、だとか。触れたくなる、だとか。みんなの答えは様々で。 でも私は、別に、フィンクスをどうこうしたい、だとかは全くない。ただ、他の女の子と仲良くしている様子を見るのは嫌だけど。フィンクスはたいてい、いつも男の子と一緒にいるからあまりその心配はないのかもしれない。 私はフィンクスがすきだ。フィンクスもスキだ、と言ってくれた。これは意志の確認をしただけで、それから先の契約じみた行為。ようは、付き合おう、などの確認行為はまだ行っていない。頭が痛くなりそうだ。 「ーーーアンナ、」 『あ、おはよう』 「お前、今日授業終わったらどうすんだ?」 『今日はすぐ帰るよ』 「あのよぉ…、その…」 『?』 「………朝は、オレいっつもギリギリだけど、帰りはなんも用事がねえ限り、おなじ時間帯に帰ることになるから、」 『うん』 「一緒に、帰ろうぜ」 『………う、うん!』 「よし、じゃあなっ」 にかっ、といつものような太陽の笑顔を向けられ、少し曇っていた気持ちも晴れ、走っていく大きな背中を見つめる。 照れ隠しなのか、ほんのり顔を赤くしていたフィンクスを思い出して、思わず笑ってしまった。きっと、ああいう不器用なところが私は好きなのだ。 ずかんのなかの きえてしまったどうぶつみたいに 見つかるはずのないものを、必死に探して、迷って、途方に暮れて、 「あの公園、昔よく遊んだよな」 懐かしいね、と言えば、久しぶりに行ってみるか、と彼は言う。 片手をポケットに突っ込み、片手で薄いカバンを持って、けだるそうに歩くフィンクスの柔らかい笑顔を横目にみた。小さい時から、身長で勝ったことはない。しかし、ここ何年かで、身長の差は、これほどまでに開いてしまった。 『あれ、自転車は?』 「パンクしちまって、張り替えないといけねんだ」 ついてねえ、とため息をつくフィンクスは、今日の世界史の授業がめんどうだった、とボヤく。ずっと居眠りしていたくせに。そう思ったが、言うのは止めた。 いままで起きていた所をみたことがない。テスト前になったらノートを貸してあげよう、そうならもっとキレイに書かなければ。ぼんやりとしている私を余所に、フィンクスは言葉を続ける。 「まあでも、明日から歩きになるな」 『へ?』 「チャリだと押して歩くようになるだろ。それだとめんどうだし」 こうやって並んで歩くんだから、と照れて鼻の頭をかくフィンクス。ぶっきらぼうな物言いだが、どこか優しさを含んだ言葉は、昔からなにも変わることはない。 『ふふふ、』 「なっ、なに笑ってんだ」 『ありがとう。でも遅刻しないでね』 「………わかった、」 口の先を尖らせて言うフィンクスは、めんどそうな顔をしながらも、実は、歩幅を合わせて歩いてくれている。その優しさに、笑みが零れた。 NEXT |