「ほら、」 『?』 「おめー、誕生日だろ」 小さな小瓶の中は、キラキラと輝くガラスの砂が入っていて。その砂の中に、キレイな星や月が埋まっている。 『…わあ、きれぇ、』 手の中で転がせば、その中はまるで小さな宇宙のようで。 『おほしさまが入ってるみたいに、キラキラしてる』 光に輝くそれの光が、手のひらにオーロラを作るように照らした。ありがとう、ありがとう、と何度も言えば、フィンクスはその度に照れたように頬を掻いた。 たんじょうびにほしいもの あなたをひとつぶ 「まだ見てんのかよ」 『だって、ほんとにキレイなんだもん。ありがとね』 「おう、そろそろ帰っか?」 『あ、まって、すぐに片付けるからっ、』 「慌てなくていい」 『あわわわわっ』 「・・・っと、言わんこっちゃねーな」 バサバサと鞄から落ちる教科書とノート。一つ一つ拾ってくれるフィンクスは、まるでお母さんのようで少し笑えてくる。 「ーーーフィンクス」 『…!』 「あ?」 思わず、肩が跳ねた。フィンクスは声の方向に顔を向けたけれど、私は振り向くことができずに、教科書を入れる手を止める。 「あ、じゃないわよ。アンタ、昨日のこと忘れたの?」 ーーー昨日のこと? 昨日も会ってたの? もやもや、ぐるぐる、お腹の中に嫌な感情がわいてくる。疑っているわけじゃない。フィンクスのことは信じてる。 ただ、フィンクスはいままで、昔っから、女の子と話すことはあんまりなかった。クラスメイトの女の子とも、なにか用事がないと話さないのに。あんなに親しげに話して。 「わりぃ、先帰っててくれ」 『…ぁ、…う、うん』 ーーー誕生日なのに、もらったプレゼントの感想、もっと言いたかったのに。 |