ふたりぼっち | ナノ



アンナの様子がおかしいのに、ここのところお互いに仕事が多く、行動はともにしているものの、このまま世界中を連れまわしていいのかどうかわからなかった。アンナは他の団員と比べても、ホームに閉じこもってばかりいる。だからこそ、こうやって様々な世界を見せてやるのもいいのかも知れない、と思ったりもするのだが。

ーーーーそれは、仕事の帰りに立ち寄った小さな田舎の町でのことだ。その国の季節は冬で、とりわけ寒さの厳しい夜だった。風呂上りに小さな宿の部屋に戻ると、先ほどまでベッドで眠たそうにうつらうつら、と微睡んでいた彼女の姿が見えなかった。名前を呼んでも、返事はない。小さな部屋には小さなベッドと、控えめなストーブしかない。ストーブのうえには熱湯の詰まったヤカンが白い湯気を吐いている。


「アンナ」


もう一度、名前を呼んでみるも、返事はない。窓を開けてみると、一面雪に覆われた、誰もいない道の上に、彼女は立っていた。


「風邪ひくぞ」

『外の空気すいたくて』

「今日は眠れそうだったのに、外に出たら眠気が覚めてしまうだろう」

『・・・うん』


今日のアンナは幾分か調子がよいようだ。顔色も悪くない。寒い空気を吸うと、心が落ち着くのだろう。言葉もたどたどしくない。


『手、繋いでいい?』


冷たい手を絡めて、寄りかかってきたアンナを抱き締める。アンナはパジャマのままで、かなり冷えている。ぎゅう、と背中にまわった力が強くなったのを感じ、髪を撫ででやると微かにアンナが震えているのがわかった。


「・・・どうした?」

『クロロ』

「アンナ?」

『・・・・もう一回、』


アンナの震える身体は、酷く冷たかった。声も、震えている。


『もう一回、呼んで』

「アンナ」

『・・・もう一回、』

「アンナ」


冷えた身体を温めてやりたくて、部屋に戻してやりたかったが言葉を飲み込んだ。いま離してしまえば、いなくなってしまいそうな気がした。


さびしい、
さびしい、
と君が出した言葉は白かった








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