ふたりぼっち | ナノ



眠る前、詳しく言うなら、眠れない夜はカーテンを開けて、ベッドに入り、シーツを肩まで上げて、星を眺める。冬に入る手前の季節の星の輝きが一番いい、シーツから出した顔がひんやりとして、乾いた空に輝く星は、他の季節で見るよりも色が強いように思える。

光の強い大きな星は、どこか冷たい色をしている。星を見詰めていると、なぜだか何か祈りたいような気持ちになる。祈りたいことなど、思いつかないのに。

神頼み、という言葉は大嫌いだ。神などいない。いたとするならば、神という奴はよほどに残虐で心無い野郎なのだろうと思う。こんなに明暗を分けて人を分けることのできる存在なんていてはならない。生まれてすぐに死んでしまった人、良いことをしたのに苦しんで死んでしまった人、数えきれない程の人を殺したのにのけのけと生きている自分。神がいるなら、なぜこんな差をつけたのだろう。

星の瞬きは
かぎりなく遠い、
かぎりなく清らか、
かぎりなく静か、

月が好きだ。でもクロロと一緒にいる時間が増えるたびに、星がきれいだと思う夜には、月がないことに気付く。星は何か私に訴えているように感じる。それを聞き取ろうと、私は瞳を閉じて耳を澄ますけれど、何も聞こえない。そして私は寂しくなる。

眠れなかった夜を越えた後の朝は、ほんの少しの頭の重さと、心地よい眩暈が、頭の後ろを引くように現れる。頬にキスされる感覚を感じながら、瞳を開けずに、真っ暗な視界の中で星を描く。


半径
1mの世界



母様も父様もいない。私の居場所はクモだけだと確認をすると、頭の中を支配していた鎖が外れたように楽になった。私の命はクモに捧げたのだと、決意を確認することが出来た。


「起きているんだろう」

『うん』

「ほら、瞳を開けて」


硝子玉みたいだね、と笑うクロロ。彼はいつも私の深緑の瞳のことを褒めてくれる。硝子玉、ビー玉、宝石。いろいろな例えで、褒めてくれる。いつももったいないくらい綺麗な言葉を使って、素敵だよ、綺麗だよ、と褒めてくれる。


『ねえ、クロロ』


でも私は知っていた。例えば、という言葉で例えたそれは、オリジナルを越えることはできない。私の瞳は、硝子玉みたい、なだけであって、硝子玉でない。硝子玉には勝つことができないんだ。


『また・・・、見つけてね』

「見つけるよ、お前がどこに逃げたって見つけて、連れて帰る」


ベッドの中で、クロロの胸に顔を埋めれば優しく髪を撫ででくれた。寝る前にこうやって頭を撫でられるのが、私はとても好きだ。


「オレはお前が思ってるよりも、ろくでもない人間だ」

『そんなことないよ』

「なんにも知らない子供を自分のものにして、都合のいいように洗脳して、離れられないようにしようとしてる」

『洗脳してよ、クロロのことだけ考える頭にしてくてたら、私は幸せだよ』

「バカだな、」


そう言いながらも、クロロは笑っていた。


「お前のこととなると冷静じゃなくなる」


クロロと出会ったあの日から、私は水を与えてもらった。それまで水を知らなかった私は、水を知らないままに生きてきたけれど。溢れるほどの水を与えてもらってからは、私は水なしでは生きていけなくなった。どこに行ったって、クロロは私を見つけてくれる。あの日みたいに、ぼんやりと道を無くした私に声をかけてくれる。


「このままどこかに閉じこめて、オレだけしか見えないように。オレが与えるものしか知らないようにしてやりたくなる。そうすれば、互いに不安も疑心もなく、ふたりだけの世界を造れるのに」

『不安になったら、こうやって抱き締めて』

「簡単だな」

『うん、でも、私にとって、この抱き合った世界が、唯一だよ。こうやってクロロが抱いてくれてる今が、唯一なんだ』


単純だと思うかもしれないけれど、真っ暗な部屋のなかで、ベッドでこうやって向かいあって抱きしめられると安心する。この空間はとても安心できるから。この空間は絶対的に安全だから。どこにいたって、太陽のように、月のように。どこにいたって見つけてくれる存在であるクロロのそばにいれるだけでいい。本当にそう思えるんだ。






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