愛する人へ13の行為 | ナノ


絶対の約束


愛してる、
愛してる、

身勝手に捨てられ、愛を知らない子犬は少しのことにでも怯える。だから愛を与えて馴らしてやらなければならない。

毎朝、目を覚ましたばかりでまだ頭の回らない彼女の頬にキスをする。夜ベットに入り、眠る前にも必ずキスをして言葉を伝える。悪夢から逃れられない彼女が、良く眠れますようにと願い髪を撫で、声に出して「愛してる、おやすみ」と。

余すことなく伝えているはずだった。否、伝えているつもり≠セった。



「なにがそんなに気にくわない?」

『‥…、』



まただんまり、か。今朝から妙に様子がおかしい。いつもなら好物の甘味を笑顔で食すというのに、今日はショコラを一口2、3口飲んだだけだった。



「何があった?」

『‥…っ』

「別に問い詰めてるわけじゃない。・・・言いたいことがあるなら聞いてやるから、ほら」



息を詰まらせたように彼女の開いたままの口からは、何も言われることはない。

だから、ショックだった。こんなにも行動と言葉で現しても彼女の中の不安全てを取り除いてやることができない。たった一人の女を満足させてやることができない不甲斐ない自分。



『…ごめ、ん、なさ、い』



胸を鷲掴まれるようだった。俯いた彼女の顔を覗きこむと、酷く辛そうな顔をして喉の奥からまるで搾り出すように、ただ謝った。責めているつもりではなかった。けれど、彼女の表情を見てつい強い口調になってしまっていたことに気付く。コイツの事になると、どうも感情的になってしまう。なんと言えば良いのか、わからなかったのだろう。彼女は無意識に態度や行動で感情を露わにするが、自ら言葉にして伝えるのも得意じゃない。



「・・・・・」

『あの、ね・・・』

「・・うん」

『クロロからもらった髪飾り、の石、が取れちゃって・・・、なおそうと思ったら、壊しちゃって・・』

「・・・・・は?」

『ごめんね、きっと、高かっただろうに、』

「バカアンナ」

『!』

「ったく、そんなことでイチイチ悩むな、今日一日オレがどんな思いでいたと思ってる・・・。なにか傷付けるようなこと言ったんじゃないかと、一日中考えていたのに」

『ふ、ふろろ、いふぁい』



頬をつまんでやると、アンナは涙目で何度もごめんなさい、を繰り返す。たったそれだけのことで悩んでいたのか、本当に馬鹿なやつだ。



「もう隠し事しないこと」

『ふぁい』

「約束、な?」



こくこくうなずくアンナの頬をやっと解放してやる。少し赤くなった頬を撫でながら、アンナはえへへ、と柔らかく笑った。髪飾りを壊したくらいで怒るとでも思っていたのか、安心したようにアンナは寄り添ってきた。単純な奴、と頭を撫でてやる。こんな小さな子供に振り回されて、自分も相当堕ちてしまったと思わず笑ってしまった。


END






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