教室から夕日を眺めていた。窓の方に視線を向ければ、否応無しにフィンクスの机が目に入る。 いつも面倒くさそうに肘をついて、つまらない顔をして授業を受けている。よく気持ちよさそうにイネムリしているが、起きている時でも窓の外の景色を眺めてばかりいる。 「―――まだ、いたのか」 誰もいない教室でふいに声を掛けられたら。聞き間違える事のない、彼の声は今の私には辛すぎた。 「元気ねー」 『そんなことないよ』 「なんかあった?」 『なんにもないよ』 「うそつくな」 フィンクスは席に座り、私の顔を覗く。いつから見ていたのだろう。私はよほど情けない顔をしていたのか、フィンクスの顔は心配そうだ。 「うそつくとき、そうやってヘタなつくり笑いする」 『……、』 「なんかあんなら、言えよ。オレとお前の仲だろ」 ―――言えないよ、 フィンクスの事が好き、だなんて。こわくて、こわくて堪んないんだ。きっとフィンクスは優しいから、困った顔をしてごまかして、私の気持ちをはぐらかしてくれるんだろう。 『……フィンクスには、…きっと興味ない話だから…』 ポロポロ、と涙がでてくる。辛くて、気持ちを抑えようとしても溢れてくる。 辛くて、気持ちを抑えようとしても溢れてくる。困ったようにオロオロとするフィンクスが昔みたいに服の袖で涙を拭いてくれる。小学校以来、ひくり、ひくり、としゃくりをあげて泣いてしまった。 「なくな」 『…っ、…ぐす、…』 「あの……」 「このタイミングでこんなこと言うのは、変なんだろうけどよ」 ごしごしと少し荒っぽいけれど涙をふきながらフィンクスが、ふう、と息を吐いた声が聞こえた。 「――スキだ」 涙が急に引いて、ぼやけた視界が晴れてくる。徐々に鮮明になった視界に映った、顔を茹でタコみたいに真っ赤にさせたフィンクス。 『……ふえ?』 「…!」 『いま…、な、んて……?』 ガリガリと後頭を掻いて、もう一度フィンクスは口を開く。 「スキだ、…たぶん」 『たぶん……?』 「お前のこと、ただのオサナナジミって思えなくなったんだよ。気になってしかたねえし、他の奴といるとこ見てっとイラつくし、………たぶん、スキ、なんだと思う」 スキ、 フィンクスが、 わたしを? 「おまえっ、さらに泣くなよ!」 『う、うれしくっ、て』 「…!」 『私もスキだよ、たぶん』 「なんだよ、それ」 驚きと戸惑いに、思わず止んだはずの涙がまた溢れてきた。くしゃくしゃの顔が見られたくなくて隠すと、フィンクスは笑った。白い歯を見せて、太陽みたいな笑顔で。 よろこびは空の下 あなたの下だから きっと私は輝けるんだ あなたがいるから わたしはここにいて、 あなたがいるから いまのわたしがある END |