ピンポー…ン らしくもなく、インターホンを緊張しながら押す。するとすぐに、はあい、と綺麗な声を響かせてアンナの母親がでてきた。 「アンナ、いる?」 「ごめんなさいね、まだ帰ってきてないのよお」 晩飯の準備の途中だったのか、エプロンをつけたまま、困ったように笑う。もう帰ったと思っていたが、帰っていないのなら、まだ学校だろう。 「ここ最近なんとなく元気がなくて、マチちゃんとは遊んでるみたいだけど」 寂しそうに下を向くアンナの母親が、アンナと一瞬重なり、なぜかこっちまで胸が苦しくなった。 「学校だろーから、オレみてくるわ」 「―――フィンクスくん」 「ん?」 「あのこのこと、よろしくね」 「…おー」 ふんわり、と笑うアンナの母親に手を挙げて答える。学校に向かって歩いていけば、どこかですれ違うかもしれない。そんなことより。 ―――母親の前でまで、アイツ気ィ使ってんのかよ。損な奴だ。 とぼとぼ歩きながら、ガキの頃よく2人で遊んだ公園が目に入った。さっきもよろしく、と言われたが、よくよく考えればアンナの母親は昔から、アンナのことを頼む、とよく言っていた気がする。 ヘラヘラといつも笑ってバカな顔をしているが、引っ込み思案で、内気で、人の顔色を気にしてばかりなアイツが、心配なんだろう。 一人っ子故に、人に対して気を使う性格のアンナだが、本当は繊細で泣き虫で意地っ張りなんだ。 「バカだな、オレ」 いざ、行かん! またアイツのことばっか考えてる。ばかみてー。 |