ここ何日も、アンナの様子がおかしい。 アイツの連れのマチとかいう女が話しかけても、何でもないようにヘタクソなつくり笑いをしている。ヘラヘラ笑ってるけど、バレバレだ。 ―――ガキの頃からみてんだ、わかんだよ。 時折、授業中に聞こえるため息。どうかしたか、と声をかければ、なんでもない、とまたヘラヘラ笑う。 「アンナ」 『あ、フィンクスもう帰るんだ』 「お前は?」 『マチと宿題終わらしてから帰ろうと思ってさ』 そうか、と廊下を歩きながら、やっぱり笑顔に元気のないアンナに、なんて声をかけようか悩んでいると―――、 「アンナちゃん!」 「!!」 「やあ」 『どうも』 「……彼は?」 例のシャルナークとかいう男がアンナに声をかけた。キラキラした笑顔で、並びのいい歯を見せて。シャルナークの笑顔に答えるように笑顔で返すアンナ。無性に苛立った。 『フィンクスだよ』 「フィンクスくんよろしく」 「…………おう」 キラキラの笑顔をこっちにまで向けてくるもんだから、思わず身体が強張る。 「もしかして、ジャマしちゃった?」 「…そんなんじゃねえよ」 いらいらいら。 「もうオレ帰るわ」 『あ、ばいばい』 「さよなら」 少し小走りで玄関まで向かうが、妙に胸の奥がムズムズした。気になる。気になるけれど、この状況下にいるのがイヤだっただけ。 シャルナークにあんな笑顔を向けられて、どういう顔をしていいかわからなかった。悪い所がないんなら、イチャモンをつけようにもつけれない。つけた所で、こっちがカッコワルイ。 無言のままに ぐるぐるぐる、と 頭の中で巡る 昔と今のキミの笑顔 授業中も 休み時間も 朝でも夜でも いまアイツなにしてんだろ、もう寝たのか、まだ起きてんのかな、気付けばアイツのことばっか考えてる。曇った顔をしてれば、どうにか晴らしてやりたいと思う。 隣りの家同士で、こんなに近くにいるのに。昔から一番近い場所にいたのに。実際の所、何も知らない。くやしい、情けないくらいにくやしい。 ――――もう、ただのオサナナジミだなんて思えねえ。好きだ、女として。 |