貴方の居ない世界に意味は無いよ | ナノ








めんどくせー

まただ。また頭の中でフィンクスの声が響いた。

ずっと考えちゃうんだよ

こんどはマチの声だ。

恋愛に興味がない、めんどうだ、とフィンクスの口から聞いた時、ものすごく寂しくなった。明確な理由はない。ただ、寂しくなった。



味覚障害
もう何をたべても
おいしくないの




恋の病、とは言うが、本当に病気にかかったみたいだった。マチといつもの喫茶店にいって、いつものケーキを食べたって元気がでない



「アンナ、」

『……』

「アンナってば!」

『…あ、ごめん』

「今日ずっと変だよ」

『そうかな』

「どうかしたの?」



一日中上の空だ、と呆れたようなため息をつくマチに、えへへ、と笑ってみせた。自分でも上の空だということはわかっていたが、声を掛けられても気付かないくらいに、ぼんやりしていたなんて。



『どうしちゃったんだろ、自分でもわからないや』



元気をだそうとしても、どうやっても元気がでない。



「なんかあった?」

『……な――、』

「なんにもないなら、そんな顔しないでしょ」



なんにもない、と言おうとした瞬間に言葉を被せられ、思わず少し笑ってしまった。最近、マチには気持ちを隠せない。



『マチは幸せ?』

「?」

『スキな人がいて、その人の事がスキなこと、幸せ?』

「………、」

『……』

「……ぜんぜん、幸せなんかじゃないよ」



弱々しく笑って、マチは呟いた。何日か前、喫茶店でみせた柔らかい笑顔とは違い、まるで泣いているかのような笑顔で。



「メールこなくて死にそうなくらい不安になったり、話してる時はたのしいけど、話し終わった後は、寂しいばっかりで」

『……マチ、』

「でも仕方ないし」

『……』

「スキなんだから、しかたないよ。気持ちにはウソつけないからさ」



ポンポン、と頭を叩かれてなぜか泣きそうになった。悲しそうなマチの顔をみて、私は作り笑いしたけど、なぜか泣きそうだった。

気持ちにウソはつけない。

マチのその言葉が、何度も何度も頭の中で木霊して。またフィンクスの顔が浮かぶ。頭の中のフィンクスは、笑顔だ。太陽みたいにキラキラ輝いてるあの笑顔を、こっちに向けて欲しい、とどんどん気持ちが大きくなっていく。



「アンナ、気持ちが爆発しちゃう前にちゃんとあたしにいいなよ」

『うん』

「気を使いすぎなんだよ、アンタはさ」



たぶん、きっと、
マチ気づいてる。

でも聞こうとはしない。わたしがマチの好きな人が誰なのか、聞かないように、マチも聞こうとはしない。けれど、それは関心がないわけではなくて。心配しているけれど、あえて様子をみているんだ。

わたしは元々、誰かに頼ったりすることが苦手だ。小さなことでは相談をしたりはするが、心のもっと奥の方の、精神的で不安定な悩みを、誰かに背負わせてしまうのが嫌で、なかなか相談できない。

それに、マチといる時は、たのしい時間を過ごしたい。本当に辛くなって、死にそうになったら頼ればいいから。


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