07
「凄いね、ドラマとかに出てきそう」
静雄お手製の弁当を目の前に、臨也が感心するように唸って、しげしげと中身を眺め始めた。
臨也が食べようとしている弁当は幽の為に作ったものだ。
比較的好き嫌いのない幽は、静雄の作ったものは基本的に残さず食べてくれる。
今日の弁当の中身は、幽のリクエストに答えて、和食が中心である。
卵焼きに焼き魚、ほうれん草の胡麻和えといったスタンダードなおかずである。
それがこの男の目の前に並ぶとどちらがおかしいのかよく分からなくなるほど違和感万歳だった。
―――いや、その前にあんたが実際にドラマに出てるだろ。
心の中にそんな突っ込みも思わず浮かんだが、そこはぐっと堪える。
先程の言葉はおそらく本心なのだろう。物珍しそうに弁当の中身を見つめた後、臨也は早速、卵焼きを箸で取り、口に運んだ。
「・・・・美味しい」
「あ・・・ありがとうございます・・・」
ぼそりとした言葉に少々戸惑いを感じながらもお礼を言うと、もうひとつ卵焼きを咀嚼しながら、臨也にちらりと見つめられた。
「?何ですか?」
「・・・俺、お世辞言うの苦手なんだよね」
「・・・はい?」
言葉の意図が分からず首を傾けると、なんでもない、と臨也はそれ以上何も言わずにお弁当に専念し始めてしまった。
(・・・どういう意味?)
内心で盛大にクエスチョンマークを発しながら、静雄も箸をとって食事を取ることに決め込んだ。
いただきます、と言うと臨也に少し不思議そうな顔をされる。
当たり前の事をしたつもりだったのだが、何かおかしかっただろうか、不可解な恥ずかしさが残ったが、もう気にせず食べ始める。
少々居心地の悪い沈黙が部屋を満たした。
何とか会話でもしようかとも思ったが、こんな風に沈黙が始まってしまっては、変に話をしだすと更に気まずくなる気がする。
そんなことをぐるぐると考えながら食べ進めていると、臨也のほうが口を開いてきた。
「さっきの話なんだけど」
「?はい・・・」
さっき、とは何のことかを考える。もしかしてお世辞がどうのこうのの話だろうか。
そう静雄は考えたが、臨也のさっき、とはそれより前のさっきだった。
「どっかで会ったことあると思ったんだけど・・・、この間、どっかの公園で絡まれてなかった?」
「公園・・・?」
言われて思いついたのが最初に男に絡まれたあの公園だ。
あの公園に臨也がいたということなのだろうか。そう思うと妙に恥ずかしい。
「も、もしかしてあそこにいたんですか・・・!?」
「あそこ?」
「その・・・公園です。俺が絡まれてた時なんですけど・・・」
「あぁ」
そうだよ、と言われると余計に恥ずかしかった。
まさかあんな女々しすぎる所を見られたのか。加えて、助けてもらった人にも何のお礼も言わず走り去ってしまったのは今でも後悔すべき行動だった。
「・・・?って、折原さん何処で見てたんですか?あの時近くには誰もいなかったはずなんですけど・・・?」
「男、いたでしょ」
「・・・男?」
もしかして、あの絡んできた奴らを言っているのだろうか?と思う。
あの男たちと臨也がどう関係しているのだろうか?
「え、まさかあの絡んできた奴らの内の一人!?」
「違う」
即答された。
まぁそうだよな、と思って残すはあの人物しかいないことに気付く。
(・・・え)
「・・・もしかして助けてくれた人・・・?」
「そう、それ」
「・・・え?」
助けてくれた人、ともう一度呟く。
静雄を颯爽と助けてくれて、ハンカチを渡してくれて、そしてそのハンカチは自分が持ち去ってしまって。
(・・・・・!?)
「・・・ぇえ!?あ、あれ折原さんっ!?」
「だからそうだって言ってるじゃない」
苦笑しながらそう言われて本当なんだ、と静雄は認識した。
会えないだろうと思っていたあの人が目の前にいる。
しかもその人物はもう一度自分を助けてくれて、加えて超有名俳優でその家にまで上がらせてくれている。
この湧き上がってくる気持ちが何なのか、突然すぎて静雄には理解できなかった。
驚きなのか感動なのか、はたまた違うものなのか。
(奇跡って、本当にあるんだ・・・)
(・・・・・・・・・)
・・・・・・・・・・
ハンカチ一枚にここまでする必要ないだろと思うかもしれませんが、これは春麻の思考そのまんまですいや気にしますよやっぱり。
私も世話焼きというか気にしすぎ体質だとよく言われるのでなんとなくこの静雄には同情すべきところがあったりしますね。。。
しかし臨也さんがあんまり喋ってませんな;;
これからバンバン喋ってもらいたいと思います←
中途半端なところで切れてしまったのもちょっとorz
続けるとあまりにも長かったので、すいません;;